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[医療崩壊]マスコミが報じない格安医療費 [医療崩壊]

 読売新聞の昨日(1/19)のトップ記事ですが、とりあえずのっけてみます。まぁ、当日は「針きゅう院5400万円不正受給」のニュースが三面にさりげなくのっていたのですが・・・マスコミにとってはこっち(病院)の方がニュースバリューがあるという判断なのでしょうね。

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川鉄千葉病院、重病名で医療費請求

「めまい」を「脳梗塞」「肺炎」は「肺がん」

 疾病ごとに定額の医療費を支払う「診断群分類(DPC)別包括評価」を巡り、JFE健保組合川鉄千葉病院(千葉市中央区、病床数360)が、実態とは異なる病名で市町村などに医療費を請求し、千葉社会保険事務局と千葉県に不適正分の返還を求められていることが18日、わかった。

 医療費返還を伴う事例が明らかになったのは全国で初めて。このほかにも不適正な請求事例は複数報告されており、厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)小委員会は同日、DPCによる請求の透明性を高める見直し案をまとめた。

 DPCは、病名や症状、治療内容別のリスト「診断群分類」(1438項目)ごとに、1日当たりの医療費(定額)が決まる方式で、2003年に導入された。医療費請求の際には、カルテに記載された内容をもとに選択した分類名をレセプト(診療報酬明細書)に記入することになっており、薬や検査など、診療内容ごとに医療費を積み上げていく従来の「出来高方式」で起こりがちだった不要な検査・投薬が抑制されると期待されている。

 DPCを06年6月に採用した川鉄千葉病院では、千葉社会保険事務局と県が昨年8月に健康保険法に基づいて行った個別指導で、不適正な請求が指摘された。不適正が疑われる病名の患者80人を抽出したところ、DPC関連では国保などの23人分で約274万円が不適正だった。県などは文書で指導内容を通知。過去1年間の自主的調査と不適正分の返還を求めた。

 同病院の患者(06年度)は入院が1日当たり約290人、外来は同1100人。1か月当たりの医療収入(06年度)は6億5000万円前後(健診と新生児関係分を除く)。

 病院関係者によると、診断病名のほか医師に検査しただけの病名や併発症も登録させ、DPC分類で高額の医療費が得られる病名などを事務担当者が選んで請求した事例があり、カルテとレセプトの内容が食い違っていたという。

 例えば、「めまい」で入院した患者に脳梗塞(こうそく)の可能性があるかどうかを調べるコンピューター断層撮影法(CT)検査を行った場合、診断群分類に「脳梗塞」を選択したり、胸部CTを撮った「肺炎」の患者について「肺がん」と選択したりしていた。いずれも本来の「めまい」「肺炎」を選択しなければならないケースで、患者も本来の自己負担額より多く支払わされた可能性があるという。

 同病院の山本義一院長は05年10月~昨年7月、中医協の「DPC評価分科会」で委員を務めていた。山本院長は「指導を受けて改善を求められたことは事実だが、指導内容などについてコメントするつもりはない」と話している。

[解説]定額支払制の「穴」露呈

  現行のDPCは、医療費を請求された側が、レセプトからは病名などの分類名しか把握できず、実際の投薬・検査から請求の誤りを見破ることができない。川鉄千葉病院で発覚した不適正請求は、投薬・検査内容がすべて記載される従来の「出来高方式」と比べて矛盾点の発見が難しいという欠点を、露呈する格好となった。

 不適正な請求は医療費抑制に逆行するばかりか、患者が余計な負担を強いられることにもつながり、制度の趣旨が損なわれる。

 不適正な請求をしていたのは、川鉄千葉病院だけではない。中医協のDPC評価分科会が昨年秋に行った病院に対するヒアリングでも、「医師の知識不足で誤った診断群分類を選択した」などの実例が次々と報告されていた。

 国際医療福祉大の高橋泰教授(医療経営管理)は、故意による不正請求が行われる余地を視野に入れ、「DPCは当初、大学病院など公的病院を対象としていたため、性善説を前提に制度設計された。だが、利益を重視する病院も多く入ってきている」と指摘する。

 中医協が18日にまとめた見直し案は、分科会での議論を踏まえて診療内容がわかる情報をレセプトに添付するなど、不適正な請求を見破りやすくする狙いだ。
DPC導入の最大の目的は医療の効率化。厚労省には、制度運用の“穴”を埋めるよう万全の対策を早急に実施するよう望みたい。(千葉支局 針原陽子)

 診断群分類(DPC)別包括評価 アメリカの公的医療保険「メディケア」を参考に導入された。国立病院などで採用された後、民間病院にも広まっている。07年度末には採用したか採用準備に入った病院が全国で1433となる。病床数は約46万床となり、一般病床全体の半数を超える。中医協のDPC分科会は、対象病院の関係者や有識者ら20人弱で構成され、導入の影響などに関する効果の評価などを行っている。

(// date_start //2008年1月19日// date_end //  読売新聞)


重い病名で医療費請求 川鉄千葉病院、県が返還指導

 End of Headline 

朝日新聞 2008年01月19日23時18分

 JFE健康保険組合川鉄千葉病院(千葉市中央区、山本義一院長)が、実際の診断名よりも重い病名で医療費を請求していたことが19日、分かった。入院治療費を病気の種類ごとに定額払いにする「診断群分類別包括評価」(DPC)で過大請求があったといい、千葉社会保険事務局は、自主調査のうえ返還するよう指導している。   

 DPCは03年度に導入され、病気の分類ごとに1日あたりの医療費が決まっている。従来の注射や投薬など診療行為ごとの料金を合計して費用を出す「出来高払い方式」では、過剰診療を招きやすいという指摘があり、医療費抑制などが期待されている。川鉄千葉病院は06年6月に採用した。   

 千葉社会保険事務局と千葉県が07年8月、同病院に立ち入り調査し、80人の入院患者の診療報酬明細書(レセプト)を調べたところ、不適正な請求が見つかった。「めまい」を「脳梗塞(こうそく)」、「肺炎」を「肺がん」とするなど、実際の診断よりも重い病名に分類して請求していたという。   

 このため、千葉社会保険事務局は、過去1年間にさかのぼって自主調査をして過払い分を返還するよう指導した。同病院が、内部調査を行い不適正な請求分を試算したところ、80人のうち23人分で約274万円になったという。   

 同病院の尾上慎一事務部長は「指導を受けたのは事実だが、意図的に行ったつもりはない。医師や事務の知識が不十分だった」としている。今後、さらに入院患者のレセプトとカルテを照合し、過大請求があれば返還するという。   

 川鉄千葉病院は360床で、1日あたりの患者数は入院が約300人、外来は約1000人。 


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一般病院の利益率、過去最悪を更新
06年度WAM調査、実調を裏付け
~医療経済実態調査を裏付け~ (2008/01/17)
Japan Medicine じほう

【2008年1月16日】

福祉医療機構(WAM)がまとめた2006年度の医療機関の「経営分析参考指標」によると、一般病院(民間)の医業利益率は初めて1%を割るなど過去最悪を更新した。7%前後で安定していた療養型病院の医業利益率も2ポイント以上落ち込んだ。看護職員らの増員によって人件費が膨らみ、収支を圧迫した。中医協の医療経済実態調査で明らかになった病院経営の厳しさがあらためて裏付けられた。

06年度の一般病院(全病床に占める一般病床の割合が50%超)の医業利益率は0.8%で、前年度に比べて0.4ポイント落ち込んだ。診療報酬のマイナ  ス3.16(本体1.36)%改定のあおりや、平均在院日数が短縮する一方で病床利用率が低下したことなどを受け、1床当たりの医業収入は前年より約 50 万円の減額となった。

これに加え、7対1入院基本料の導入などの影響で看護師増員を迫られ、患者100人当たりの職員は2.7人増加。支出の人件費割合が50%を超え、経営を悪化させた。

療養型病院(全病床に占める療養病床の割合が50%超)の医業利益率は、診療報酬本体が初めて引き下げられた02年度以降も7%前後で推移していたが、  06年度は5.0%に悪化した。1病床当たりの医業収入が約30万円減となったほか、支出面では患者100人当たりの職員が0.8人増えた。さらに、職員 1人当たりの給与が8万1000円増え、支出増の要因が重なった。

本体0.38%増が決まった08年度診療報酬改定率の判断材料となった中医協の実調(昨年6月時点)では、国公立を除く一般病院(介護保険収入のある医  療機関含む)の医業利益率は0.4%。療養病床60%以上で国公立を除く一般病院(同)の医業利益率は4.7%で、医業収入の中に介護保険収入も含めてい  るWAMの一般病院、療養型病院の経営分析の傾向とほぼ重なる。

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まぁ、日本の医療制度では、提供者側である病院は、利益がもう出ないんですよ。そこそこ繁盛していても「つぶれる」ような医療費抑制政策。いわゆる貧乏に追い込まれたところがやること。それは「故意による不正請求」?。
しかし、病院が窮状にあるのを読売新聞も朝日も知らないか、知ってても書かない(まぁ、厚生労働省は病院を減らしたいから、記者クラブに出入りしている記者にはそんな記事を書かせないのしょう・・・・)。

マスコミにとってみれば、鍼きゅう院よりも、病院の方が「ニュース価値」が高いのであろう。しかし、この病院が「仕組み」を悪用といわれても、最初の受診の段階で、脳梗塞を疑えば、そのために「CT」をとっても良いというのが従来のやり方。

新しいDPCだと、最後が単なる耳鳴りだと「CT」も含めて診察料を下げるような形になる。要は、診察行為にまつわる検査を強制値引きをさせるのだ。

脳腫瘍や脳梗塞が見つからなくても念のために検査をするのが今までの医療側のやり方でしたが、こういう報道によって「病院がズル」しているという風に描写されるわけですね。
いずれにせよ、病院をこういう風に「悪者」にすればするほど、一見、軽症患者さんの検査が減る。医療費は減る。しかし中には検査をしなければわからないような病気も見逃されるようになる可能性は大いにある。

医療費抑制は「両面」あるのだ。医療費が安くなること=良いことばかりではないことを肝に銘じておくべきでしょうね。どっかの掲示板にあったそうだが・・・

某掲示板で見かけた書き込み↓ 
日本の医療費は先進国中、他の追随をゆるさないほど安いんだよ。 
初診料日本2400円に対して、アメリカ平均20000円。 
物価がはるかにやすい中国よりも日本の方が安い。  
これでもまだ高いっていう奴が多いけど、 
水道トラブル5000円トイレのトラブル8000円で、おまえの体のトラブル2400円だぞ。  
便器のトラブル以下って事を知ってるの? 


まさに、安さにかけては便器以下なのが、日本だ。その数百円をめぐって[開業医が儲けすぎだ]とか見苦しい話である。いずれにせよ、過度の「価格抑制」が医療崩壊を招いていること、価格が安いことが医療の安全確保には向かないこと、すでに日本の医療界では認められていると思うが、一般の方もマスコミも不勉強だから仕方ないかな。ぽち

  なかのひと 


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ITシステムは救急病院にトドメになる? [医療崩壊]

 研修が終わって、自分は思い出します。200床くらいで医師が15人くらいしかいない病院で、当直をしていました。
 経営が思わしくなかったせいか、病院としてできるだけ、たくさんの「救急車」を引き受けよと院長先生には言われました。もちろん、今よりも10年前で「当然」だと思いました。
 ところが、当直してみると、医師は一人、看護師は婦長さんだけ。検査技師さんや放射線技師の人は不在でした。
 もちろん、患者さんを引き受ける場所は通常の外来のスペースを転用し、患者さんを引き受け、入院が必要かを判断するために採血をしたら、患者さんの状態を看護師さんにお願いして、医師である自分が検査技師に早変わり、遠心分離機と検査機器に向かう・・・。つまり、病院としては特にお金を出さなくても救急をやっている顔が出来ますが、あとになってみれば、「よくそんなところで救急を・・・」と思いました。もちろん病棟患者さんの急変にも対応しなければなりません。いよいよ何役って感じでしたね。

 そんな自称「救急病院」がどんなに多いか?そういう目でみると・・・次の記事はいかがでしょうか?

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 自民、公明両党は十八日、救急患者が病院に受け入れを拒否され、手当てが遅れて死亡する「たらい回し問題」の深刻化を受け、受け入れ可能な医療機関に関する情報を提供する救急医療情報システムを全国的に整備、強化するための「救急医療情報システム整備法案」(仮称)を、同日召集された通常国会に議員立法で提出する方向で検討を始めた。

 救急医療情報システムは、地域の医療機関と消防機関をオンライン回線で結び、医療機関側が対応可能な診療科目や手術ができるかどうかなどの情報を入力して消防機関に提供するもの。

 救急車や消防本部からその都度、各病院に電話して搬送先を探すより、即座に受け入れ可能な病院を確認できる利点がある。

 すでに四十三都道府県、七百四十五消防本部で導入されている。

 しかし、統一された運用基準がなく、近隣のシステム間の連携が悪かったり、病院側の情報更新が遅かったりなどの理由で53%の本部が利用しておらず、システムを全国的に整備し、積極的に活用する必要があると判断した。

 法案には、システムの整備、運用にかかわる基本方針を定めることを盛り込み、同方針で、集中治療室(ICU)の稼働状況、妊産婦、小児の受け入れができるかどうかなど提供すべき情報の種類や、システム同士の広域連携、協力体制の在り方を定める。

 また、地元の医療事情に精通した医師らが搬送先を調整する「救急患者受け入れコーディネーター」の配置も求める。

 システム未導入の地域での整備を促すため、自治体の努力義務をうたい、国が関係費用の補助を行うことも定める。システムの運用に当たっては、関係機関の連携強化のため、医師や消防職員、学識経験者らが参加する協議会を設置する。


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 東京新聞。朝刊トップでした。個人的には情報システムが完備されたとしても、現場の状況が改善しない限り、あふれるのは産科を見ればよくわかります。

 中には「情報システムさえ良くなれば何とかなる」といった風に書いてありますが、日本の救急医療は貧弱な現場のマンパワーに支えられているというのを直視しない限り、良くなりません。

 自分は、いまだに、救急病院としてがんばっている病院にとって、このシステムで受け入れられる状況は改善しません。患者さんを診る側の都合に関係なく考えられたシステムは、さらに病院側へ「救急からの撤退」を決意させるに十分かもしれません。ぽち

  なかのひと


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救急医療は「物理的限界」なんだからもう無理! [医療崩壊]

 救急車の「たらい回し報道」もそろそろ鎮火?したのでしょうか。

 まぁ、今日は医師ではない知人と会って「今年は医療の再生の元年になって欲しい」といったら、「崩壊二年目の間違いじゃない?」って突っ込まれてしまいました(汗)。

 まぁ、医療者の願いであって、一般の方にそう言われても仕方ないです・・・。自分も含め、現状を知っているくせに、妄言のたぐいになってしまいますね。撤回撤回・・・。

 さて病院が倒産するのも都市部は人件費も高く、また患者の取り合いが生じるような競合が熾烈なほど、東京都23区内には医療施設がふんだんにあります。

 しかし地方は違います。そして、それをギリギリで維持してきた、これまでの日本の医療制度の枠組みはそろそろ限界ですが・・・まだ政府も政治家もギブアップ宣言をしません(責任を取らされるのはいやですよねぇ>みなさん)から、地方自治体レベルでは維持するために躍起です。

 あ、ちなみにイギリスでは「ゆりかごから墓場まで」のNHSの医療制度について、「10年以内に終焉するだろう」なんてニュースもありました(MNJに掲載してあります)。
 日本の厚生労働省も財務省も「そろそろ無理」って言ってくれるといいのですが・・・財源のために増税しても「医療費や社会保障費」に全額行くとも思えないですし、きっとその頃にはまた新幹線つくろーぜ!とか土建屋さんを救おーぜ!とか言ってそうですね。

 まずは、比較的まとも?な県知事さんが「救急医療はマジやばいぜ!」ってお話になさっておられます。ぽち

  なかのひと 



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 救急受け入れもう限界 県内中核病院 県、適正利用呼び掛け

下野新聞 2008/01/18

 県内救急患者の七割が勤務医不足の深刻化する中核病院や大学病院に集中している実態を受け県は十七日、診療時間内の受診や軽症患者に対応する地域の休日夜間急患センターの利用を呼び掛けるリーフレットを作製、新聞折り込みで今月二十一日に県内六十八万七千世帯に配布する、と発表した。救急医療が緊急事態に備える本来の目的から外れ、入院の必要のない「時間外診療」の患者対応に追われており、現場の医師から「もはや限界」との声が上がっている、と指摘している。

 県保健福祉部によると夜間・休日の時間外診療も含めた救急患者のうち二〇〇六年度は約二十六万四千人が中核病院と大学病院に集中。五年前の〇一年度に比べると約六万五千人も増加した。

 一方で県内中核病院の勤務医は、〇四年度の新臨床研修制度導入後、大学派遣医師の引き揚げなどで急速に減少。診療体制に深刻な影響が出ている。

 県北地域の、ある中核病院長は「(他病院の救急で)小児科・産科が駄目になったのは(勤務医が)犠牲的精神で働いて燃え尽きた。今度は私のところが同じ危機にある」と県の会合で訴えた。

 作製したリーフレットは、入院の必要のない軽症患者やコンビニ感覚で中核病院に時間外診療を求める利用者に対する協力を呼び掛けた。

 県は同じ趣旨のリーフレットを〇六年度、県内の医療機関や市町、県の出先などに十万部配布。今回は地域中核病院の窮状も盛り込み、現状打開へ世帯配布に踏み切る。

 十七日の定例記者会見で福田富一知事は「このままでは適切な救急医療を提供するのが困難になる恐れがある」と、医療機関の適正な利用に理解を求めた。


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 もう一報は、「よし少し減ったぞ」でニュースにしちゃううかつなマスコミさん。いや、いいのか?これはこれで。国民が「まだまだイケル!」って勘違いさせられるから?

 個人的には「根性論」はもう無駄なんだけど、がんばって欲しい気持ちがにじみ出ているのかな?
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救急出動件数299件増
    軽症者の搬送はわずかに減少

タウンニュース2008/01/18

小田原市消防本部(中村章消防長)は、このほど昨年(平成19年)1月~12月までに市内で発生した火災・救急出動件数を発表した。火災件数は前年と同数にとどまったが、救急出動件数は前年を229件上回り、2年ぶりに増加した。一方で「一般住宅への住宅用火災警報器設置」や「救急車の適正利用」が呼びかけられるなど、消防署を利用する側の意識も求められている。

 市消防本部によると平成19年の救急出動件数は、9,223件(前年は8,994件)で2年ぶりに増加した。事故種別では『急病』が最も多く5,278人(前年比255人増)、『一般負傷』が1,129人(同6人減)、『交通事故』が1,037人(同105人減)、『火災事故』が11人(同3人増)となっている。ただし病院へ搬送した傷病者8,544人(前年比214人増)のうち、入院を必要としない軽症者の割合が55.7%(前年は55.9%)とわずかに減少していることから、市消防本部では「救急車の適正利用について呼びかけてきた効果が表れたのでは。救える命を救うため、今後も広報活動を続けていきたい」と話している。中等症者は37.7%、重症者は5.1%、死亡者1.5%。
(以下略)

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 適正利用とかそういう問題はもう通り過ぎて、「物理的限界」なんだからもう無理!っていう時期がやってきていると思いますがね。アメリカは比較的まともに?報道していますけどね・・・

アメリカ:救急外来の待ち時間が延びています

救急処置室の待ち時間が長くなっています
ER Wait Times Getting Longer

Forbes 2008/01/15

 アメリカ救急医学会の報道官であるArt Kellerman医師は、アメリカの救急医療の状況を「混雑した空港の管制官が飛行機を滑走路に駐機させようとしているようだ」とたとえて言いました。

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霞ヶ関から聞こえてくる近未来:医療はどうなっていくのか? [医療崩壊]


医療機関の倒産、前年の1.5倍増

キャリアブレイン2007/01/17

2007年1月から12月までに発生した病院・診療所・歯科診療所など医療機関の倒産が計48件に達することが1月17日、帝国データバンクの集計で分かった。前年の30件と比較すると、1.5倍以上増えたことになる。

帝国データによると、同年には、1月に8件の医療機関が倒産するなど当初から高水準で推移。6月までの倒産件数は計31件になり、この時点で前年の30件を早くも追い越していた。その後も倒産は相次ぎ、年間では前年の1.5倍にあたる48件が発生。負債総額は476億6,200万円に達した=表。


集計は、経営難による破産や民事再生などの法的整理が対象で、いわゆる「資金ショート」や自主閉院などは含まれない。これらをカウントすれば、事業継続を断念したケースはさらに増えそうだ。

医療機関の倒産が急増する背景について帝国データは、バブル期の事業外投資などに伴う負債を抱える医療機関を、診療報酬の引き下げや医師不足、選択意識の高まりに伴う患者減などの要因が後押しした結果とみている。
倒産に至った要因や地域ごとの倒産件数を2月にもまとめるという。

06年4月には、診療報酬がトータル3.16%(本体部分は1.36%)ダウン。さらに、看護職員をどれだけ配置しているかで報酬に差をつける仕組みも強化されたため、病院を中心とする看護職員の争奪戦が社会問題化した。関係者の間には「これらの見直しによって経営的に行き詰まる病院が多発しかねない」という懸念が当初から広がっていた。

同年には、千葉県内の医療法人が1月、看護師不足に伴う減収から民事再生に踏み切ったほか、7月には大阪府の医療法人が人件費高騰や他法人の買収失敗などから民再申請している。

更新:2008/01/17   キャリアブレイン 
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これは私立病院の倒産ですが、公的病院については、厚生労働省の方が「まだこれから」と語っています。まさに、この通りになるでしょう。公立病院が「売り」に出される日も近いのでしょう。
 「今はまだ地響きか地鳴り程度で収まっているが、今年は早い段階から相当な問題になってくる」

という発言は「医療機関がまだまだ倒産する」というのが公的な立場でも見ているという証拠でもあります。この方はある意味正直でしょう・・・

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厚労省・指導課長 公立病院運営、社会医療法人への委託増える


日刊薬業2007/01/17

厚生労働省医政局指導課の佐藤敏信課長は14日、大阪市で講演し、通常の法人より公益性の高い医療法人の類型として第5次改正医療法で制度化が決まった社会医療法人について、「よほどのことがない限り4月1日から認定がスタートできるのではないか」と述べた。その上で、公立病院の経営形態の見直しに伴い、指定管理者制度を活用して社会医療法人に病院運営を委ねるケースが増えてくるとの見方を示した。

佐藤課長は公立病院改革の動きについて、「今はまだ地響きか地鳴り程度で収まっているが、今年は早い段階から相当な問題になってくる」と指摘。公立病院の抱える負債によって、多くの自治体が破たんに追い込まれる可能性もあるため、経営赤字の自治体病院に策定が求められる改革プランでの早急な対応が迫られると見通した。その上で佐藤課長は、これまでの経営手法で現状を乗り切るのは難しいとの見解を示し、「指定管理者の1つとして社会医療法人の出番が増える素地が広まってきている」と語った。 
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さて、この次に、過去に厚生労働省の大臣をお勤めされていた政治家の「反省」の弁ですが・・・よくもいえたもんです。

 「津島氏は医師不足問題に触れ、「医師の数は十分だという時代もあったが、今から考えると『よう言ったわなあ』という感じ」

という発言は「反省の色ナシ」と見なされても仕方ありません。自分は、政治家も医療について、認識がまだまだ甘いですし、厚生労働省の役人も政治家もその責任を取る気などさらさらないということです。

これはバブル期に「銀行は1行たりとも潰させない」などと言っていた、金融行政の規制当局であった「大蔵省」の役人が、バブル崩壊で「銀行は自助努力」でと言って長銀や拓銀を、そして山一を見棄てた歴史の転換期にあたると見ています。

いずれ、国民も理解するか、諦める日がくるでしょうが、世界経済でGDPが18位になったのだから、寿命もこれから下がっていくのでしょう。
仕方ありません。「健康」には、そんなにお金をかけないで、行きたいのは政府も国民も同じですから。医師も看護師もの努力もすでに限界いっぱいだと思います。ぽち

  なかのひと 



日本の名目GDP、OECD加盟国中18位に転落

 End of Headline 

朝日新聞 007年12月26日19時16分

  内閣府が26日発表した「06年度国民経済計算確報」によると、06年の国民1人あたり名目国内総生産(GDP)が、経済協力開発機構(OECD)加盟国(30カ国)中18位となった。前年の15位より下がり、比較可能な1980年以降最低となる。



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厚労行政「朝令暮改が多すぎる」 歴代厚労相が相次ぎ"反省"
日刊薬業2007/01/17

自民党の津島雄二税制調査会長や柳澤伯夫前厚生労働相の厚生労働大臣経験者は15日、日本病院会の新年賀詞交歓会であいさつし、相次いでこれまでの厚生労働行政に対する反省を表明した。柳澤氏は、療養病床の再編や7対1入院基本料の導入などを例に、「朝令暮改が多すぎるというのが率直な印象だ」と指摘。津島氏も、旧厚相として医師臨床研修制度の導入にかかわった経緯に触れ、「良かれと思ったが多くの副作用が出てきた。反省することはいっぱいだ」と率直に振り返った。

柳澤氏は、これまでの厚労行政について、「周到な検討の下で結論を出し、実行に移したことは間違いないと思うが、もう1つ周到さが大事だ。これから求められるのではないか」と述べ、社会保障を取り巻く環境変化に対応した、さらに入念な検討が必要になると見通した。

最近の立法作業に対しても、「付則に3年後の見直し規定を入れる変な癖が付いている。見直さなければならない法律だったら、もう少し時間をかけて、しっかりした結論を出すべきだ」と語り、十分な共通認識が得られないまま法案化するべきではないとの考えを示した。

一方、津島氏は医師不足問題に触れ、「医師の数は十分だという時代もあったが、今から考えると『よう言ったわなあ』という感じ」と当時と置かれている状況が一変したことを強調した。また党税調会長の立場からは「医療や福祉を守るために、(これまで)財源を確保することから逃げてきたんじゃないか」との認識を示した。

その上で、「医療、福祉にしても必要なものは国民が理解し、お互いを助け合うため、政治がリーダーシップを発揮することが何よりも大事だ」と指摘し、今回の税制改正に当たっては「消費税を社会福祉税とし、医療や福祉に全面的に充てる方針をはっきりさせて、国民に理解を求めたい」と訴えた。 
 
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病院が「冬の時代」を乗り切るために・・・ [医療崩壊]

 病院、冬の時代 金融機関が経営支援強化

 上記の記事は、金融機関の動きを知る意味でとても参考になりましたが、先日、民間病院の院長先生から「民間病院の経営者サイドからみた医療」についてお話を2時間聞く機会がありました。

 日本の病院の経営状況というのは公立病院は累積損失が地方自治体の財政を圧迫しており、今後のリストラはやむなしの状況となっています。もともと、病院が黒字を出そうとすれば、「無駄な検査」や「処置」が増えます。これが従来の青天井方式の売り上げによる差益確保。

 今後のDPC医療では、「無駄な検査」や「投薬」を控えることが求められています。今後は、必要な検査だけきっちり行い、早期離床、早期退院・転院が正しいあり方だと思っていますが、日本の病院、とくに中小規模の病院の場合、これに乗り換えないでがんばっている病院もみえます(IVHのポートを入れて重症者にしてなるべく、売り上げ単価が上がるようにするなど)。

 タイミングが悪いことに、昭和60年ごろに建てた建物・病棟の更新で、さらに巨額の借金を背負う羽目になっています。
 新しい病院はたいがい、急性期病院にしましたとばかりに、最新型CT&MRIを入れ、医師数はそのままだったりします。一部の病院経営指導の人に言わせると、ロビーに吹き抜けやステンドグラスがあるような病院ほど経営が危ないとまで言われたことがあります。

 さすがに最近の病院ではそうそう見かけないのですが、今度は市町村合併で病院の統廃合、民間移譲が出てきました。もちろんこれまで採算を取れるようなやり方をしてこなかった(小児病棟や長期療養病棟)病院が、真っ先に消えます。

 これは仕方ないことですが、民間病院の経営者の中にも「事業継続」を見直す人もいるようです。仕方ありません。国の財政では、公的医療については税金で支えますが(補助金も含めて相当投入されていますが)、民間病院の赤字は面倒みてくれません。最終的に売却となります。

 ここに病院の譲渡情報が載っています。事業の継続が困難になった病院が病院譲受情報」「病院譲渡情報ここに掲載されているのでしょうが、これはいわゆる「氷山の一角」で、かなり中小規模の病院が「市場から撤退」させられていくと考えています。

 もっとも、売り手が今後増えるので、買い手がどんどん買い叩く状況が見られるかもしれません。売却側としては銀行の赤字を何とかゼロに・・・でしょうが、かなり難しいように思います。

 また、悪徳ブローカーもこういうときに登場されます。こちらのホームページでは警告がなされています。

 
悪徳ブローカーに注意

 自分としては、「急性期+救急医療」、「特定疾患センター化」あるいは「回復期」「ケアミックス」など、リソースに見合った事業絞込み、転換がスムーズに行くには、経営サイドの早期の判断が必要ですが、どうも「まだまだ」と思って、粘っている病院経営者が案外多いようです。

 自分は、病院が閉鎖や売却になってしまうと、やはり患者さんや地域住民にとって困ることになります。早期に説明を行ったり、集約化・業務移管のためにも早めに行うべきだと思います。売却しても「更地」になってマンション・・・では困りますよね。やはり住民や利用者あっての病院です。今後も、医療についてはさまざまな視点から見ていく必要がありそうです。ぽち

  なかのひと 


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「たらい回し」報道に踊らされ過ぎませんように・・・ [医療崩壊]

 産経新聞の1/3の「救急5カ所たらい回し 事故の男性死亡」報道ですが、事件の背景について報道しないと、報道機関として片手落ちだという認識はまったくないようです。見事です。
 他の患者さんのためにがんばった医師たちのせいで拒否が生じているような記事が目立つ中、救急病院の苦境について、検証をする記事を・・・載せたのは朝日でした。残念でしたね。相変わらず、産経新聞の読者は「クオリティの低い」記事に甘んじるしかないようですね。いや、まぁ、中国や北朝鮮ウオッチャーには大切な情報源ですが、どうも医療系については「苦手」なようですね。それを認識してくださいね>イザの方も。

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3次救急病院、各地で苦境 患者急増、搬送拒否も相次ぐ

朝日新聞 2008年01月05日

 救命救急センターなど生命の危機に陥った患者の治療にあたる各地の「3次救急病院」で、搬送患者の受け入れ件数が急増していることが、朝日新聞の調査でわかった。入院の必要な患者を担う2次救急病院の受け入れ態勢が、医師不足などで弱体化したことが主な要因に挙げられる。都市部の大阪でも、救命救急センターが本来は2次救急対応の患者の処置に追われて、重篤患者を受け入れられない例が相次いでおり、人命を守る救急医療態勢の立て直しが急務となっている。

表 

 大阪府では05年、11の救命救急センターが救急搬送患者を受け入れた数(1万1575人)が01年比で31%の増。京都府内の3センターでも06年には1万4491人に達し、03年に比べ4割伸びた。東京都も02年の1万8127人から06年は2万3066人に上った。 

 2次救急病院の減少が背景にある。大阪府内では05年10月からの2年間で272病院が260病院に。京都府では111から1カ所減り、東京都でも341から326になった。このため、急患の受け入れ拒否が常態化。大阪府医師会の昨年の調査では、2次救急医療機関の拒否件数は05年度から06年度にかけて19%増え、1施設当たり年250件に上った。 

 04年度に始まった新臨床研修制度で研修先が自由に選べるようになった結果、人手不足に陥った大学の医局が主に2次救急病院に派遣していた医師を相次いで引き揚げた影響が深刻化している。 

 2次救急対応の患者が救命救急センターに運び込まれ、重篤な患者の受け入れが間に合わない例は少なくない。大阪府東大阪市の男性が2日、センターから相次いで受け入れを拒まれた末、死亡した問題で、要請に応じられなかった関西医科大付属滝井病院では昨年11月にも、集中治療室が満床になり、受け入れ困難な状態になった。空床を作るには治療を終えた患者を引き受ける施設が必要だが、どのセンターも転院先探しに苦心する。 

 昨年末、一部患者に転院を勧めてベッドを空けたが、今度は2次救急病院など約40カ所に断られた軽症の薬物中毒患者らを受け入れた。中谷寿男教授は「2次、3次とも勤務医が疲弊し、患者を受け入れる力が低下している」と訴える。 

 救命救急センターについて、救急の専門医や他科の医師が何人必要かといった具体的な国の基準はない。厚生労働省の充実度評価では、全国の201カ所(06年末現在)すべてが最高のAランクだが、患者の受け入れ実態は反映されていない。 

 昨年12月、17病院に受け入れを拒否されて男性が死亡した兵庫県姫路市。市内唯一の救命救急センター、県立姫路循環器病センターが救急対応しているのは心臓疾患だけ。医師や看護師の退職が相次いだためだ。東京都西部のある救命救急センターは07年、前年は2%だった搬送拒否率が6%に増加。担当医は「麻酔科医が確保できず、月の3分の1は時間外の手術ができなくなった」。 

 日本救急医学会の05年調査では、専門医が1~2人だけのセンターが全体の3分の1に及んだ。調査に携わった島崎修次・杏林大教授は「搬送拒否問題は、診療報酬の低さや過重労働に加え、2次救急の減少で3次救急に負荷がかかりすぎるシステムの問題」とみる。 
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 報道機関が「何に重点」をおいて報道するのは自由です。ただ、現場の医師が努力しているのを「無視」しないでくださいね。あくまで、事件が生じていることで「誰も怠けて」いません。
 今日も日本の国民のために寝ずに働いてみえる先生がたについてはちゃんと評価してください。

 むしろ、こういう状況になった現実をきちんと分析することがジャーナリストに求められているのではないでしょうか?それとも単に三流ゴシップ紙みたいに騒ぐだけ騒げばいいのでしょうかね?ならば、あまり立派な口をたたかないでください。

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2007年産経新聞 捏造社説&問題報道シリーズ

産経新聞は「社会保険庁OB」を許すのが仕事らしい 
日本医師会も苦言を呈する産経新聞の報道姿勢 
産経新聞は医療を潰したいのか?記事の捏造や情報操作はいつもの手? 
嗤うしかない:産経新聞社の論説室のクオリティw 
[受難と萎縮]新聞コラムを読む 
[産経新聞は魔女狩りが大好き?] 
産経新聞に励ましのメールを出そう☆ 

捏造・歪曲は当たり前、抗議があろうと訂正もしない・・・「常軌逸した産経新聞」

今年も、きちんと私以外からも、しっかり医学記事は監視されるべきでしょうね>産経新聞の捏造記事。疑問がある人は新聞社にお問い合わせください。ぽち

  なかのひと 


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大阪の救急医療崩壊は未来の日本の救急医療の姿 [医療崩壊]

 残念ながら「また」しても『たらい回し報道』に始終するおろかなマスコミ、それに同調するブログが目立ちます。特に、産経新聞などは、【主張】妊婦たらい回し また義務忘れた医師たち以来、営々として「医者叩き」をして、正義派ぶっている新聞、テレビにあおられて、現場への理解が不足しています。去年の奈良県の報道も含め、おおよそ理性的、建設的じゃありません>マスコミ各社。

 読者の気持ちとしては「断るなんて、ひどい」というのは簡単ですが、以下の事情について理解していないと、この事態を招いていることを理解できないのでしょう。

 一言。「グラフを見ればいい」、この救急車の出動件数の増加に伴って、「病院数」が増えたと思うのか?それとも医師が増えているのか?否。




救急救命士の仕事
みんな人殺し~救急隊員の出場状況~


↓これは大阪市の救急隊の出動件数の推移である。これを見てどう思う?病院の医師が10年で1.5倍以上に増えた?そんなわけはないのである。

 【1】 出場件数・搬送人員
救急件数~昨年20万件を超えて、なお上昇傾向続く、 救急車は約2.6分に1回出場
平成17年中の救急出場件数は、20万5,036件(対前年比2,568件、1.3%増)、搬送人員は17万9,661人(同1,014人、0.6%増)で、前年と比較すると共にやや増加し過去最多となりました。
なお、1日あたりにすると、出場件数は約562件で、時間に換算すると約2.6分に1回救急車が出場したことになります。
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 世の中に、「重病」となるような急病人が増えたように思わないこと。安易に利用する人が増えて、現場が「悲鳴」をあげているのである。マスコミの表面上、救急が大変とか言うが、「受け入れを拒否」しないと、目の前にいる患者さんの命も危うくするような事態になってしまう現状を知らないままに報道するおろかなマスコミに踊らされている皮肉な現象だ。

 昨今は、「何でも救急車」だが、恐ろしく件数が増えているのを認識できないのだろうか?それを「病院が断るなんてひどい!」んじゃない。ひどいのは、利用者のモラルだ。だから救急医療が崩壊しているのだ。こういうのは、自分たちの胸に手を当ててみるがいい。

 昼間からの子供に熱があるのに、夜中になってあわてて受診する・・・。急性アルコール中毒だと言って、忘年会や新年会の飲みすぎで救急車でよびつける・・・こういった状況で、医師が過酷な状況なのを無視してきたのは、政府であり国民です。

 残念なことに大都市近郊ほど、救急医療体制は崩壊している。それは住民の意識が「(無料なんだから)救急車は呼べばいい」という意識になっているからではないのか?よく考えてほしいものである。
ぽち

  なかのひと 


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「受け入れ困難な現場の悲鳴」繰り返される悲劇 [医療崩壊]

大阪で、また気の毒な事件がありました。お亡くなりになられた患者さん、そしてご遺族には本当に年末に悲しいお別れとなってしまいました。ご冥福をお祈りします。

 ただ、今回も、医療機関や医師たちが、怠けたい一心で「たらいまわし」をしたかのようにいうマスコミの報道が目立ちます。

 時代錯誤の「【主張】妊婦たらい回し また義務忘れた医師たち 」といった「救急病院が救急車を断るなんて許せない!」みたいな「時代遅れの根性論」を展開するのではなく、断らざるおえない状況を、放置してきた行政の怠慢を現場からの声としてあげておきましょう。

 「今回の事件」の情報は詳細が不明ですが、念のために。救急病院は患者さんを全部断っているわけではありません。出来る限り引き受けたいというのがありますが・・・難しくなっているのは、 あるブログにこんな医療関係者のコメントがありそのとおりだなって思っています。

「  酔っぱらい、インフルエンザ、ノロのトリプルコンボ喰らっている最中。どうにもならんね。
えぇ、もうこのシーズンは急性アルコール中毒(救急車&病院にとって困るんです)、インフルエンザとノロウィルス(昼間からある熱発や下痢で夜中に薬がないのか?と押しかけられても・・・汗)がはやっており、救急病院の外来は夜でも軽症患者さんを中心とする「自称・急患」の患者さんで大繁盛です(もちろん中には、「重症」な方が混じっているので大変です。そういう症例のことを落とし穴に感じるので、アメリカだとpitfallといいます。ちなみに、トリプルコンボってわからなければ三重奏です。


それから、
「救急車も必ずしもその患者さんにふさわしい病院を選んでいる」
とは思わないことです。福島県でも、交通事故で頭の外傷がある患者さんを脳外科医が一人もいない病院におしつけちゃったし、今回もまた、救急車が軽症と判断して、「重症」の患者さんを、軽い病気しか見られない普通の病院に紹介しようとしていた気がします。

この患者さんを診ていないのでわかりませんが、出血性ショックだったのなら、もう即「大学病院」やら「集中治療センター」に送るべきです。そこまでひどくないと救急隊が判断したので、とりあえず手当たり次第に「どこでもいいから引き取って・・・」では助からないということです。

もちろん、現場の救急隊員の大変さもわからんでもないのですが、「高齢者や小児は急変しやすい」ということを念頭に考えれば、送り先を適切な施設にお願いできないギリギリの綱渡りを奈良県や兵庫県と同様にやっているということです。

さて、現場の医師たちの悲鳴も聞いてください。えぇ、これを読んでから「医者は24時間寝ないで働くのが当たり前」というか、それとも「とっくに定年をすぎている開業医の先生も夜中まで働け」というか?どうぞ。

医者のくせに・・・!とかは自由ですが、日本はそれで戦争に負けたんですよ。「根性があれば竹やりでB29は落とせる」とか、「大和魂があれば必ず神風が吹いて・・・」妄言にそそのかされちゃって、アメリカに卑怯な爆撃をくらい、さらに原爆落とされて日本中が焼け野原になったのをお忘れか?。

だから、マスコミが報道するままに信用して、現場(今頃、救急病院の外来の待合を見てみなさい・・・小児科の救急なんて3時間待ちですよ)を見ないで「お前らの働きが悪いじゃ!」とか言っていると、焼け野原になりますよ。それはどういうことか?簡単ですよ。救急病院がどんどん減る。救急隊の受け入れ先が「もっともっと減る」でしょうね。

それが今の産科医療です。東京の真ん中の病院へ福島の病院から「妊婦さんの受け入れお願いします」というのが日常です。それがもっと遠くに運ばれることになるのです。奈良県の「受け入れ困難」の事件を「たらいまわし」という非常識な言葉で攻撃をしたマスコミ各社。その結果、奈良県のお産難民はゼロになりましたか?

厚生労働省のお役人は、「医師の偏在」を言いますが、来年の春から、一気に改善しますか?教えてください。国のやろうとしている「医療費削減」は、そのまま「イギリス型医療崩壊」を招く可能性があります。それを実行しているのは政府です。弱者である患者さんを切り捨てる羽目にならないか?そういう視点が必要です。ぽち

  なかのひと 




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<外科系学会社会保険委員会連合>の「日本の医療費について」より

勤務医の我慢は限界まできている  ―労働基準法は医師には適用されない―

しかし、医師や看護師などの医療従事者や病院にとって、今の医療環境は大変に苛酷なものです。それでもこれまで何とかやって来られたのは、病院の医療従事者の医療に対する情熱と犠牲があったからです。

大 衆迎合主義に流されているわが国のマスコミは医師を攻撃することには熱心ですが、医療現場の実情をあまり報道しようとしません。平均すると週70時間をこ える病院医師の労働時間、当直で徹夜をしても代休も交替要員もなく翌朝からまた外来や手術などの通常勤務をこなさなければならないなど、労働基準法を全く 無視した過酷な医師勤務体制、一人で病棟の深夜夜勤をして翌朝には二人の患者を時間通りに手術室に運ばなければならないような看護師の勤務体制によって、 今の病院医療は何とか持ちこたえてきたのです。

前米国大統領クリントンの夫人のヒラリー・クリントン氏は、日本の医師を評して「聖職者のごとき献身」と絶賛しています。

患者さんやマスコミからは「3時間待ち、3分間診療」とお叱りを受けていますが、病床100当りの医師の数や、看護師の数が米国のたった1/5というわが国の現状では、もうこれが限界なのです(図10)



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<救急搬送>受け入れ先2時間決まらず高齢女性死亡 大阪

毎日新聞 2007/12/28

救急搬送 30病院に断られ死亡 
大阪府富田林市で25日、体調不良を訴え救急搬送された女性(89)の受け入れ先が約2時間決まらず、隣接する河内長野市内の病院で死亡していたことが  分かった。この間、府内の30病院に要請したが、「ベッドが満床」などの理由で断られ、そのうち同市内の病院が再度の要請で受け入れたという。病院に収容  される直前に容体が急変した。救急搬送をめぐっては、昨年8月、奈良県の妊婦の転送先がすぐに見つからず、死亡するなど各地で問題が生じており、体制の不 備が改めて浮き彫りになった。

富田林市消防本部などによると、25日午前4時49分、女性の家族から「嘔吐(おうと)や食欲不振を訴えている」と119番通報があった。8分後に救急車が自宅に到着し収容した。女性は意識があり、救急救命士が酸素投与の応急処置を行った。

救急隊員と通信指令室は、市内や近隣市、堺市、大阪市などの30病院に計35回にわたって受け入れを要請。しかし、「ベッドが満床」「当直医が手術中」などと相次いで断られた。この間、救急車は自宅近くの国道付近で待機していた。

いったん断った河内長野市内の病院が受け入れを了承。女性は午前6時40分に搬入される直前、救急車内で意識がなくなり、病院で死亡した。【中本泰代】

▽溝川秀敏・富田林市消防署長のコメント 医師不足や診療科目が限られているなどの条件が重なった。救急隊は精いっぱい努力したが、結果的に命を救えず残念に思っている。今後は病院や医師会に協力をお願いし、こういうことがないよう最大限努力したい。 
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医師数抑制策の影響をかぶる地方・・・ [医療崩壊]

 個人的には、中国新聞の分析は「部分的」には正しいように思います、しかし「格差」を認めないで論を展開しているため、都市部が医師余りとなっているように描写していますが、違います。
 ほとんど、首都圏でも山手線の内側ならいざしらず、外側となると医師不足は深刻化しています。東京の郊外は埼玉、千葉といい、人口当たりの医師数が全国でトップクラスの医師不足のため、都市部に流入した患者さんを東京で診察しているのが実態です。

 開業医の医療の現場については、勤務医の経験しかないので、良く存じ上げません。しかし、過疎地の医療が今まで何とかギリギリ支えられていた、医局制度による病院への人材派遣制度を否定しちゃったのは、国です。研修医が大学に入らないでも自由に選べるようにしたら、こうなったのです。責めるべきは、このシステムが「地域医療」の集約化が進む方向に加速していることです。

 逆に、良い点としては、若手医師が研修する施設を選べるようになったこと。それは時代の要請だったと思います。地方で「びっくり」するような時代遅れな診療は患者さんはもはや求めていません。
 そして、医療は日進月歩。それを埋めるためにはある程度若い医師が都市部に集中してしまうのはやむをえないと思っていますが。
 結局、足りないのは「現場の臨床医」であるのは、アメリカでも同じです。こちらでは、人口10万人あたり355人も医師がいる(日本じゃいまだに230人くらいです)のですが、専門医をはじめとして病院の勤務医はいちじるしく不足しています。病床数が多すぎるから減らそうという国の政策は「国民の理解」されていませんし、都市部ではなく、地方で今後、病院がなくなる事態が広がりそうです。

↓アメリカの医師不足
アメリカ:全米2位の医師数のメリーランド州を襲う医師不足

 解決の処方箋として報告書は、「医療訴訟の賠償金に上限を設けること、農村部の新人医師向けにスチューデントローンを貸与すること、農村部に医師をローテートさせること、メディカルスクールの医学生の数を増やすこと、メリーランド州で削減されているという、医療費の保険還付率の軽減を与える法律を制定することを勧告しています。」

 …とありますように、アメリカでは医療訴訟、学費、人材交流、募集数、診療報酬などさまざまな点から検討されています。さて、日本の新聞社(中国新聞と毎日新聞)
の分析はいかがでしょうか?
ぽち

  なかのひと 


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格差生む「医」の自由化 過疎地域の深刻な医師不足
中国新聞 '07/12/23

 ▽新臨床研修制度で流出加速 新たな調整枠組みを

 医師減少が病院再編を引き起こしている中国地方の過疎地域。統合予定先の中核病院さえも深刻な医師不足にあえぐ実態がある。二〇〇四年度導入の新臨床研修制度で、過疎地域にも医師を派遣してきた大学医局の人事権が弱まり、多くの研修医は都市に流出した。歯止めなき「医」の自由化が、医療格差の拡大を招いたと言える。地域医療の崩壊を食い止めるためには、医師の育成と配置に関する新たな枠組みづくりが急務である。

 三原市立くい市民病院の移管が検討されている、広島県世羅町(一万九千人)の公立世羅中央病院。取材中にも末広真一院長(51)の携帯電話が頻繁に鳴る。「看護師が入院患者の変化を逐一、教えてくれるんです。とても自分だけでは目が届かないから」

 百十床のベッドはフル稼働しているが、常勤医は定数の半分の六人。五年前は十二人いた。広島大医局への引き揚げや病気退職などで減った。医師派遣の要請を続けるが、医局の返事は「出したいが、人がいない」。

 当直 月8日も

 医師が疲弊しないよう末広院長は気を配る。自ら月に七~八回は当直し、日曜は朝から翌夕まで勤務。「完全休日は年に一日か二日。いろんな患者を診るのが好きでやっている面もある」。周囲は「院長に倒れられたら、病院が倒れる」と気をもみながら見守る。

 程度の差こそあれ過疎地域の多くの中小病院に共通する医師の定数割れ。勤務医の疲弊を招くだけでなく、患者減少で収益も悪化する。経費を補てんする自治体財政も厳しさを増す中、「病院経営が成り立つのは人口一万人程度まで。それ以下は診療所移行もやむなし」との見方も医療関係者の間で出始めた。

 「どの病院も医師不足で、放置すれば共倒れ」と県立広島病院の地域医療支援センター専門員の竹内啓祐医師(54)。「住民には苦しい選択だが、集約化や機能分担は避けられない」とみる。

 だが、再編には痛みが伴う。入院受け入れを停止した戸河内病院の診療所化を計画する安芸太田町(八千二百人)では、旧戸河内町住民の不満が噴出。三年前の三町村合併時には十年以内としていた病院再編が医師不足で早まったことに加え、合併での得失をめぐる住民感情も尾をひく。

 二病院のうち一つを診療所にした島根県津和野町(人口九千三百人)では、再編後も正念場が続く。二病院を経営していたJA石西厚生連は収益悪化で職員賞与も支払えず、自主再建を断念。町は計四億四千万円の融資で資金ショートを食い止め、公設民営で運営を継続することにした。

 町にとり、医療施設などの買収費約十二億円は重荷だ。「将来の運営補てんはどの程度必要か」。町幹部が協議を重ねるが、鍵を握るのは医師確保の成否である。昨年から続いた看護師流出の防止にも気を使う。

 医局入り減少

 新臨床研修制度の導入前、医局の力は絶大だった。医学部卒業生の多くが大学病院で研修して医局の各科に入り、教授の指示で過疎地域を含む各地の病院に赴任した。

 「行けと言われればハイしかない。教授は人生の決定権を握っているようなもの」(広島県内の勤務医)。家族的で閉鎖的でもあった医局の求心力は、一変した。

 新制度では、卒業生は研修先を自分で選べる。「二カ月単位で各科を回る研修医は『お客さま』。誰も将来を束縛しないし、保障もしない」(同)。研修生は多くの症例を診られる都市部の大病院に集中した。

 広島大医学部では導入前、二年の研修を経て大学病院に入局する医師数は約百三十人だった。それが導入後は九十人余りに減り、毎年三十人を超える医師が消えている。

 過疎地域の病院医師の急減は、医局から人事権を引きはがし、勤務医の病院選びを市場原理に委ねた結果である。専門化が進むなどで増員が必要なのに医師はそれほど増えず、人口当たりの数は先進国で最低水準という実態も背景にある。こうした構造的な医療危機から抜け出すには、医師の育成や調整の新たな枠組みをつくるしかない。

 厚労省は昨年初め、病院長や開業を目指す医師にへき地や救急医療現場で一定期間の実務を義務づけようと検討したものの、職業選択の自由を奪いかねないとする反対に遭い断念した。だが、過疎地医療の現実を前にすれば、義務規定か特別な優遇措置を検討すべき時期に来ている。

 地域医療を、末広院長は「臓器のみ治すのでなく、退院後のケアも含めてトータルに治す」と表現する。過疎地域の医療機関を支援する竹内医師も「地域密着の医療を体験し、面白さに目覚める人も少なくない」と言う。大学や行政などが連携し、研修医が地域医療の重要性を認識し、深めていけるような仕組みづくりも課題である。(編集委員室長・山城滋)

 ■「困窮ぶり国策の貧困だ」 中島厳・津和野町長

 石西厚生連の資金がショートしかけた八月、病院撤去か公設民営化かの選択を迫られた。町財政も大変苦しいが、地域から医療の灯を消すわけにいかないと決断した。

 全国的な医師不足がやっとクローズアップされているが、遅きに失した。大学病院の医局支配は改善すべき古い体質だとしても、過疎地域の医療を支えてきたことは間違いない。研修を自由化するなら、へき地勤務を義務づけるなど特例措置を考えるべきだ。

 津和野病院は救急指定の看板を下ろさざるを得なかった。今、一番の不安は、圏域中核の益田市の病院も当直体制の維持が厳しくなっていることだ。医療の格差が極まろうとしているが、便利な所にいる人は私たちの心痛は分からないだろう。過疎地域を守る人間がいるから、国土も保全されているのに、不便な所に人は住むなと言わんばかり。国策の貧困だ。

 ■「地域貢献の制度が必要」 弓削孟文・広島大理事(医療・施設担当)

 新臨床研修制度の導入前は、大学が地域医療を回転させ、過疎地域にも交代で医師を送り出していた。医師の配置を調整する組織や法律もないまま新制度を導入した結果、大学での研修医が減り、医師不足を招いた。

 広島大でも入局する医師が三年間で百人以上減り、各地の病院の要請に応えるのは難しい。勤務医が疲弊して開業し、病院の現場はより苦しくなる悪循環だ。現状を乗り切るには、拠点的な病院が周辺をカバーするような再編もやむを得ない。

 今やっと、政府や与党が動き始めたが、医師の絶対数を増やすには年数がかかる。過疎地域の医師不足対策として、国立大医学部の卒業生は数年間は地域医療に貢献するような制度が必要ではないか。地域ぐるみの取り組みも重要で、地域医療に関する寄付講座を行政や民間の支援を得て大学に開設することも意義深いと思う。

【写真説明】
<上>11月から診療所と老人保健施設に再編された元日原共存病院(島根県津和野町)
<下>7月から閉鎖された戸河内病院の病棟内部(広島県安芸太田町)


クローズアップ2007:医師確保、悩む自治体 類似策で奪い合い

毎日新聞 2007/12/25

 国の08年度予算案でも重点項目の一つとなった医師不足対策。毎日新聞が先月実施した都道府県調査からは、自治体も医師確保対策に力を入れている現状が浮かぶ。日本における医師の絶対数不足は深刻だ。ドクターバンク、給与優遇、再就業支援……。あの手この手の対策で医師不足は解消できるのか。問題解決のための抜本策はあるのか。現状と課題を追った。【河内敏康、五味香織、鯨岡秀紀】

 ◇好条件に“応募ゼロ”も--研究費100万円補助、月給20万円上乗せ…

 「研究費助成!」「国内外での研修が可能!」。医師向け新聞のホームページに掲載された岩手県の「ドクターバンク」の求人広告には、こんな勧誘文句が並んでいる。

 岩手県のドクターバンク事業は、06年12月にスタートした。医師不足に悩む県内の病院や診療所に勤務できる医師を登録する。任期は3年で、うち1年間は有給のまま国内外の大学などで研修できる。3年間で最大100万円の研究費も補助し、かなりの好条件だ。

 さらに県内の医師にダイレクトメールも送ったが、この1年間、応募実績はゼロ。

 県医師確保対策室は「利用しやすいよう制度の見直しを検討中だが、医師の絶対数が少なすぎる」と頭を抱える。

 山梨県も同様の制度を実施しているが、採用はいまだない。昨年9月にドクターバンクを始めた愛知県では、今年10月までに13人を医療機関に紹介したが、医師不足の解消には程遠いのが実情だ。

 埼玉県は、医師確保のため給与面で優遇する策をとる。臨床研修病院が、産婦人科と小児科の後期研修医を医師不足地域に派遣する場合、医師1人当たり月に最大で20万円を給与に上乗せできる支援制度を実施。2病院で6人の産科医を確保することに成功した。

 埼玉県医療整備課は「産科や小児科の勤務医が少ない中、後期研修医は即戦力になる。しかし、各都道府県が同じような医師確保策を実施しているため、限られたパイの奪い合いをしているような状況だ」と嘆く。

 ◇少な過ぎる絶対数--各国平均に「14万人不足」

 毎日新聞の調査では、各自治体の医師確保対策予算は急増している。回答のあった46都道府県の合計額は、03年の約22億4000万円と比べ、07年は3倍以上の約74億6000万円になった。各都道府県はこのほか、地方で勤務する医師を養成する自治医大の負担金を年に1億2700万円ずつ支出している。

 だが、医師不足解消の見通しは立っていない。島根県は「専任スタッフ7人で取り組み、02年度以降で29人の医師を招いたが、地方の取り組みには限界がある」と回答した。

 背景には、日本の医師数の少なさがある。経済協力開発機構(OECD)によると、日本の医師数は04年、人口1000人当たり2・0人。加盟30カ国でワースト4だ。各国平均の3・0人に追いつくには約14万人も足りないとの試算もある。国は「地域や診療科によって医師数に偏りがあるのが医師不足の原因」との姿勢だが、医師の絶対数そのものが少ないのが実情だ。

 医療法の医師配置基準は、一般病院では入院患者16人に1人以上、外来患者40人に1人以上。厚生労働省によると、常勤医だけでこの基準を満たす病院は04年度でわずか35・5%。最も医師数が多い東京都でも45・8%にとどまる。非常勤医を含めると83・5%の病院が基準を満たすが、フルタイムで働くわけではない医師もカウントした上での数字だ。

 しかも、この基準は1948年に定められたものだ。

 済生会栗橋病院(埼玉県)の本田宏副院長は「基準は実情に合っていない。例えば、抗がん剤の外来治療が行われるようになるなど、患者一人一人の治療の質と密度は、以前とは全然違う」と指摘。その上で「うちの病院は常勤医だけで配置基準を満たしているが、当直明けの医師が手術をしなければならないなど、過酷な勤務を強いられている。医師を大幅に増員しない限り、問題は解決しない」と警鐘を鳴らす。

 ◇女性医師復帰、常勤の壁高く

 女性医師が増える中、医師不足対策の柱の一つとして、出産などで退職した女性医師を対象にする再就業支援が注目されている。毎日新聞の調査では、33道府県が実施中だ。

 群馬県は06年度から支援事業を始めた。07年度は約3000万円の予算を組み、退職前の技能を取り戻すために再教育を実施する病院への委託料と、研修中の保育料の補助に充てている。

 この事業で、30代の内科医が2月から再教育を受け、8月に前橋市内の民間病院に採用された。別の30代の外科医も「負担が軽い診療科を」と内科の再教育を受けており、08年1月にも現場に復帰する予定だ。

 いずれも非常勤での勤務を希望しているが、県医務課は「昼間だけの勤務でも、常勤医の負担を軽減できる。家庭の事情で退職した女性医師がフルタイムで復帰するにはハードルが高い。医師としての能力を活用しないのはもったいない」と話す。

 一方、常勤医確保を目指す県は苦労している。山口県は06年度から小児科、産科、麻酔科への女性医師の復帰に対して支援を行う。予算は年800万円で、復帰に必要な研修費に充てる。研修後は公的医療機関の常勤医として勤務してもらうが、応募者はいない。県医務保険課は「パート勤務として復帰した医師はいるが、常勤での復帰を望む女性医師がどこにいるかも把握できない」と悩む。

 三重県も07年度から同様の支援制度を開始した。県内にある高校の同窓会に協力を求め、県外在住者にも呼びかけているが、非常勤を希望する人が多いという。県医療政策室は「非常勤でも補助の対象にするなど、新たな対策の検討が必要かもしれない」と話している。

毎日新聞 2007年12月25日 東京朝刊


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[医療崩壊]自民党の地盤でおきていること・・・ [医療崩壊]

医師不足で公的病院再編の波 
中国新聞2007/12/23 

広島、島根、山口県内で、医師不足が引き金となり、公的病院の再編計画が相次いでいる。2004年度からの新臨床研修制度の影響で、医師確保がさらに困難になり、病院収支も悪化した。過疎地域では統合予定先の中核病院も医師不足が深刻で、医療崩壊の危機にある。 

 計画のある4カ所のうち広島県安芸太田町、島根県津和野町、山陽小野田市の3カ所は、市町村合併に伴う病院統合の色彩が強い。三原市立くい市民病院と公立世羅中央病院(広島県世羅町)は、市町境をまたいでの再編を模索する。 

 縮小再編の対象となる4病院とも、大学医局が医師を引き揚げたり、退職者の後任が派遣されなかったりして医師不足に陥った。新臨床研修制度の導入で医師の医局離れが進み、医師配置の調整がひっ迫したためだ。 


【写真説明】<左>11月から診療所と老人保健施設に再編された元日原共存病院(島根県津和野町)<右>7月から閉鎖された戸河内病院の病棟内部(広島県戸河内町) 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 
 島根:竹下、青木 
 山口;安倍 
 広島:中川、(亀井) 

 これも地域医療について、大手の新聞が報じない断面のひとつです。

 産経新聞「診療報酬 実質的には0.8%分アップ?
産経イザ2007/12/18
」のように「開業医の診療報酬を下げればいいのだ・・・」と単調に言い続けるが、不採算にあえぎながら、地域医療の最前線にある公立病院の統廃合、僻地の開業医の撤退、医療がどんどん崩壊するのを、どういう風にみているのだろうか?

 道路の予算は確かに必要な部分もあるけれども、地域の産業振興とまったく関係ない無駄遣いも存在していると思います。将来、立派な道路が日本中にくまなくいきわたっても、そこに人が住んでいなければ意味がありませんが。

 いずれにせよ、そろそろ、地域にとって「医療」が必要なのか?それとも「道路」(公共事業)が大切か?そういう視点も必要に思います。

ぽち

  なかのひと 



まちの病院がなくなる!? 地域医療の崩壊と再生 
伊関友伸 著 
定価:1,995円 

四六判/302ページ 
ISBN978-4-7887-0769-6 


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