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医師数抑制策の影響をかぶる地方・・・ [医療崩壊]

 個人的には、中国新聞の分析は「部分的」には正しいように思います、しかし「格差」を認めないで論を展開しているため、都市部が医師余りとなっているように描写していますが、違います。
 ほとんど、首都圏でも山手線の内側ならいざしらず、外側となると医師不足は深刻化しています。東京の郊外は埼玉、千葉といい、人口当たりの医師数が全国でトップクラスの医師不足のため、都市部に流入した患者さんを東京で診察しているのが実態です。

 開業医の医療の現場については、勤務医の経験しかないので、良く存じ上げません。しかし、過疎地の医療が今まで何とかギリギリ支えられていた、医局制度による病院への人材派遣制度を否定しちゃったのは、国です。研修医が大学に入らないでも自由に選べるようにしたら、こうなったのです。責めるべきは、このシステムが「地域医療」の集約化が進む方向に加速していることです。

 逆に、良い点としては、若手医師が研修する施設を選べるようになったこと。それは時代の要請だったと思います。地方で「びっくり」するような時代遅れな診療は患者さんはもはや求めていません。
 そして、医療は日進月歩。それを埋めるためにはある程度若い医師が都市部に集中してしまうのはやむをえないと思っていますが。
 結局、足りないのは「現場の臨床医」であるのは、アメリカでも同じです。こちらでは、人口10万人あたり355人も医師がいる(日本じゃいまだに230人くらいです)のですが、専門医をはじめとして病院の勤務医はいちじるしく不足しています。病床数が多すぎるから減らそうという国の政策は「国民の理解」されていませんし、都市部ではなく、地方で今後、病院がなくなる事態が広がりそうです。

↓アメリカの医師不足
アメリカ:全米2位の医師数のメリーランド州を襲う医師不足

 解決の処方箋として報告書は、「医療訴訟の賠償金に上限を設けること、農村部の新人医師向けにスチューデントローンを貸与すること、農村部に医師をローテートさせること、メディカルスクールの医学生の数を増やすこと、メリーランド州で削減されているという、医療費の保険還付率の軽減を与える法律を制定することを勧告しています。」

 …とありますように、アメリカでは医療訴訟、学費、人材交流、募集数、診療報酬などさまざまな点から検討されています。さて、日本の新聞社(中国新聞と毎日新聞)
の分析はいかがでしょうか?
ぽち

  なかのひと 


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格差生む「医」の自由化 過疎地域の深刻な医師不足
中国新聞 '07/12/23

 ▽新臨床研修制度で流出加速 新たな調整枠組みを

 医師減少が病院再編を引き起こしている中国地方の過疎地域。統合予定先の中核病院さえも深刻な医師不足にあえぐ実態がある。二〇〇四年度導入の新臨床研修制度で、過疎地域にも医師を派遣してきた大学医局の人事権が弱まり、多くの研修医は都市に流出した。歯止めなき「医」の自由化が、医療格差の拡大を招いたと言える。地域医療の崩壊を食い止めるためには、医師の育成と配置に関する新たな枠組みづくりが急務である。

 三原市立くい市民病院の移管が検討されている、広島県世羅町(一万九千人)の公立世羅中央病院。取材中にも末広真一院長(51)の携帯電話が頻繁に鳴る。「看護師が入院患者の変化を逐一、教えてくれるんです。とても自分だけでは目が届かないから」

 百十床のベッドはフル稼働しているが、常勤医は定数の半分の六人。五年前は十二人いた。広島大医局への引き揚げや病気退職などで減った。医師派遣の要請を続けるが、医局の返事は「出したいが、人がいない」。

 当直 月8日も

 医師が疲弊しないよう末広院長は気を配る。自ら月に七~八回は当直し、日曜は朝から翌夕まで勤務。「完全休日は年に一日か二日。いろんな患者を診るのが好きでやっている面もある」。周囲は「院長に倒れられたら、病院が倒れる」と気をもみながら見守る。

 程度の差こそあれ過疎地域の多くの中小病院に共通する医師の定数割れ。勤務医の疲弊を招くだけでなく、患者減少で収益も悪化する。経費を補てんする自治体財政も厳しさを増す中、「病院経営が成り立つのは人口一万人程度まで。それ以下は診療所移行もやむなし」との見方も医療関係者の間で出始めた。

 「どの病院も医師不足で、放置すれば共倒れ」と県立広島病院の地域医療支援センター専門員の竹内啓祐医師(54)。「住民には苦しい選択だが、集約化や機能分担は避けられない」とみる。

 だが、再編には痛みが伴う。入院受け入れを停止した戸河内病院の診療所化を計画する安芸太田町(八千二百人)では、旧戸河内町住民の不満が噴出。三年前の三町村合併時には十年以内としていた病院再編が医師不足で早まったことに加え、合併での得失をめぐる住民感情も尾をひく。

 二病院のうち一つを診療所にした島根県津和野町(人口九千三百人)では、再編後も正念場が続く。二病院を経営していたJA石西厚生連は収益悪化で職員賞与も支払えず、自主再建を断念。町は計四億四千万円の融資で資金ショートを食い止め、公設民営で運営を継続することにした。

 町にとり、医療施設などの買収費約十二億円は重荷だ。「将来の運営補てんはどの程度必要か」。町幹部が協議を重ねるが、鍵を握るのは医師確保の成否である。昨年から続いた看護師流出の防止にも気を使う。

 医局入り減少

 新臨床研修制度の導入前、医局の力は絶大だった。医学部卒業生の多くが大学病院で研修して医局の各科に入り、教授の指示で過疎地域を含む各地の病院に赴任した。

 「行けと言われればハイしかない。教授は人生の決定権を握っているようなもの」(広島県内の勤務医)。家族的で閉鎖的でもあった医局の求心力は、一変した。

 新制度では、卒業生は研修先を自分で選べる。「二カ月単位で各科を回る研修医は『お客さま』。誰も将来を束縛しないし、保障もしない」(同)。研修生は多くの症例を診られる都市部の大病院に集中した。

 広島大医学部では導入前、二年の研修を経て大学病院に入局する医師数は約百三十人だった。それが導入後は九十人余りに減り、毎年三十人を超える医師が消えている。

 過疎地域の病院医師の急減は、医局から人事権を引きはがし、勤務医の病院選びを市場原理に委ねた結果である。専門化が進むなどで増員が必要なのに医師はそれほど増えず、人口当たりの数は先進国で最低水準という実態も背景にある。こうした構造的な医療危機から抜け出すには、医師の育成や調整の新たな枠組みをつくるしかない。

 厚労省は昨年初め、病院長や開業を目指す医師にへき地や救急医療現場で一定期間の実務を義務づけようと検討したものの、職業選択の自由を奪いかねないとする反対に遭い断念した。だが、過疎地医療の現実を前にすれば、義務規定か特別な優遇措置を検討すべき時期に来ている。

 地域医療を、末広院長は「臓器のみ治すのでなく、退院後のケアも含めてトータルに治す」と表現する。過疎地域の医療機関を支援する竹内医師も「地域密着の医療を体験し、面白さに目覚める人も少なくない」と言う。大学や行政などが連携し、研修医が地域医療の重要性を認識し、深めていけるような仕組みづくりも課題である。(編集委員室長・山城滋)

 ■「困窮ぶり国策の貧困だ」 中島厳・津和野町長

 石西厚生連の資金がショートしかけた八月、病院撤去か公設民営化かの選択を迫られた。町財政も大変苦しいが、地域から医療の灯を消すわけにいかないと決断した。

 全国的な医師不足がやっとクローズアップされているが、遅きに失した。大学病院の医局支配は改善すべき古い体質だとしても、過疎地域の医療を支えてきたことは間違いない。研修を自由化するなら、へき地勤務を義務づけるなど特例措置を考えるべきだ。

 津和野病院は救急指定の看板を下ろさざるを得なかった。今、一番の不安は、圏域中核の益田市の病院も当直体制の維持が厳しくなっていることだ。医療の格差が極まろうとしているが、便利な所にいる人は私たちの心痛は分からないだろう。過疎地域を守る人間がいるから、国土も保全されているのに、不便な所に人は住むなと言わんばかり。国策の貧困だ。

 ■「地域貢献の制度が必要」 弓削孟文・広島大理事(医療・施設担当)

 新臨床研修制度の導入前は、大学が地域医療を回転させ、過疎地域にも交代で医師を送り出していた。医師の配置を調整する組織や法律もないまま新制度を導入した結果、大学での研修医が減り、医師不足を招いた。

 広島大でも入局する医師が三年間で百人以上減り、各地の病院の要請に応えるのは難しい。勤務医が疲弊して開業し、病院の現場はより苦しくなる悪循環だ。現状を乗り切るには、拠点的な病院が周辺をカバーするような再編もやむを得ない。

 今やっと、政府や与党が動き始めたが、医師の絶対数を増やすには年数がかかる。過疎地域の医師不足対策として、国立大医学部の卒業生は数年間は地域医療に貢献するような制度が必要ではないか。地域ぐるみの取り組みも重要で、地域医療に関する寄付講座を行政や民間の支援を得て大学に開設することも意義深いと思う。

【写真説明】
<上>11月から診療所と老人保健施設に再編された元日原共存病院(島根県津和野町)
<下>7月から閉鎖された戸河内病院の病棟内部(広島県安芸太田町)


クローズアップ2007:医師確保、悩む自治体 類似策で奪い合い

毎日新聞 2007/12/25

 国の08年度予算案でも重点項目の一つとなった医師不足対策。毎日新聞が先月実施した都道府県調査からは、自治体も医師確保対策に力を入れている現状が浮かぶ。日本における医師の絶対数不足は深刻だ。ドクターバンク、給与優遇、再就業支援……。あの手この手の対策で医師不足は解消できるのか。問題解決のための抜本策はあるのか。現状と課題を追った。【河内敏康、五味香織、鯨岡秀紀】

 ◇好条件に“応募ゼロ”も--研究費100万円補助、月給20万円上乗せ…

 「研究費助成!」「国内外での研修が可能!」。医師向け新聞のホームページに掲載された岩手県の「ドクターバンク」の求人広告には、こんな勧誘文句が並んでいる。

 岩手県のドクターバンク事業は、06年12月にスタートした。医師不足に悩む県内の病院や診療所に勤務できる医師を登録する。任期は3年で、うち1年間は有給のまま国内外の大学などで研修できる。3年間で最大100万円の研究費も補助し、かなりの好条件だ。

 さらに県内の医師にダイレクトメールも送ったが、この1年間、応募実績はゼロ。

 県医師確保対策室は「利用しやすいよう制度の見直しを検討中だが、医師の絶対数が少なすぎる」と頭を抱える。

 山梨県も同様の制度を実施しているが、採用はいまだない。昨年9月にドクターバンクを始めた愛知県では、今年10月までに13人を医療機関に紹介したが、医師不足の解消には程遠いのが実情だ。

 埼玉県は、医師確保のため給与面で優遇する策をとる。臨床研修病院が、産婦人科と小児科の後期研修医を医師不足地域に派遣する場合、医師1人当たり月に最大で20万円を給与に上乗せできる支援制度を実施。2病院で6人の産科医を確保することに成功した。

 埼玉県医療整備課は「産科や小児科の勤務医が少ない中、後期研修医は即戦力になる。しかし、各都道府県が同じような医師確保策を実施しているため、限られたパイの奪い合いをしているような状況だ」と嘆く。

 ◇少な過ぎる絶対数--各国平均に「14万人不足」

 毎日新聞の調査では、各自治体の医師確保対策予算は急増している。回答のあった46都道府県の合計額は、03年の約22億4000万円と比べ、07年は3倍以上の約74億6000万円になった。各都道府県はこのほか、地方で勤務する医師を養成する自治医大の負担金を年に1億2700万円ずつ支出している。

 だが、医師不足解消の見通しは立っていない。島根県は「専任スタッフ7人で取り組み、02年度以降で29人の医師を招いたが、地方の取り組みには限界がある」と回答した。

 背景には、日本の医師数の少なさがある。経済協力開発機構(OECD)によると、日本の医師数は04年、人口1000人当たり2・0人。加盟30カ国でワースト4だ。各国平均の3・0人に追いつくには約14万人も足りないとの試算もある。国は「地域や診療科によって医師数に偏りがあるのが医師不足の原因」との姿勢だが、医師の絶対数そのものが少ないのが実情だ。

 医療法の医師配置基準は、一般病院では入院患者16人に1人以上、外来患者40人に1人以上。厚生労働省によると、常勤医だけでこの基準を満たす病院は04年度でわずか35・5%。最も医師数が多い東京都でも45・8%にとどまる。非常勤医を含めると83・5%の病院が基準を満たすが、フルタイムで働くわけではない医師もカウントした上での数字だ。

 しかも、この基準は1948年に定められたものだ。

 済生会栗橋病院(埼玉県)の本田宏副院長は「基準は実情に合っていない。例えば、抗がん剤の外来治療が行われるようになるなど、患者一人一人の治療の質と密度は、以前とは全然違う」と指摘。その上で「うちの病院は常勤医だけで配置基準を満たしているが、当直明けの医師が手術をしなければならないなど、過酷な勤務を強いられている。医師を大幅に増員しない限り、問題は解決しない」と警鐘を鳴らす。

 ◇女性医師復帰、常勤の壁高く

 女性医師が増える中、医師不足対策の柱の一つとして、出産などで退職した女性医師を対象にする再就業支援が注目されている。毎日新聞の調査では、33道府県が実施中だ。

 群馬県は06年度から支援事業を始めた。07年度は約3000万円の予算を組み、退職前の技能を取り戻すために再教育を実施する病院への委託料と、研修中の保育料の補助に充てている。

 この事業で、30代の内科医が2月から再教育を受け、8月に前橋市内の民間病院に採用された。別の30代の外科医も「負担が軽い診療科を」と内科の再教育を受けており、08年1月にも現場に復帰する予定だ。

 いずれも非常勤での勤務を希望しているが、県医務課は「昼間だけの勤務でも、常勤医の負担を軽減できる。家庭の事情で退職した女性医師がフルタイムで復帰するにはハードルが高い。医師としての能力を活用しないのはもったいない」と話す。

 一方、常勤医確保を目指す県は苦労している。山口県は06年度から小児科、産科、麻酔科への女性医師の復帰に対して支援を行う。予算は年800万円で、復帰に必要な研修費に充てる。研修後は公的医療機関の常勤医として勤務してもらうが、応募者はいない。県医務保険課は「パート勤務として復帰した医師はいるが、常勤での復帰を望む女性医師がどこにいるかも把握できない」と悩む。

 三重県も07年度から同様の支援制度を開始した。県内にある高校の同窓会に協力を求め、県外在住者にも呼びかけているが、非常勤を希望する人が多いという。県医療政策室は「非常勤でも補助の対象にするなど、新たな対策の検討が必要かもしれない」と話している。

毎日新聞 2007年12月25日 東京朝刊


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