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[医療バブルをぶっ潰せ!?]効率化を行えば患者はがん医療の進歩をもっと享受できるはず? [医療行政]

さて、昨日は経済的な専門家から「お門違いだぞ!」って意見がありましたらすみません(--;)。自分もとてつもなく勉強不足を感じています。ただ、 M&Aが世界で標準なのに、日本だけ「ハゲタカ外資カエレ!」って言い続ければ、結局、窮地に陥ったバイオベンチャーやベンチャー起業を誰も救ってくれません。難しい問題です。

さて、医療費については、今後、高齢化が進行するにつれ、問題が山積しそうです。というのも、「高齢化=医療費激増」なのですから、それは仕方あいません。

さて、ここに医師でありながら元厚生労働省のお役人さん(現在は大学教授です)が、「がん」について自説を開陳しておられます。この考え方も、ひとつの見解なのですが、DPCが導入され、がんの治療は長足の進歩をとげています。今後、外来での治療が当然になり、長期入院も次第になくなり、「手術を受けたらとっとと家に帰れ」という時代になるでしょうね。それを受け入れるか否かですね。

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現場の効率を高めれば、患者はがん医療の進歩をもっと享受できるはず

文芸春秋編:日本の論点PLUS

濃沼信夫 (東北大学教授)

増大するがんの医療費負担
経済的理由によって、がんの治療を変更せざるをえない。これは、患者にとっても担当医にとっても苦渋の選択である。がん臨床医約七〇〇名に対する調査で、こうした厳しい状況の患者が少なくとも一〇〇人いることがわかった。化学療法では一日数万円する薬剤が使用されることがあり、保険の適用であっても患者の負担は大きい。保険がきかない陽子線治療は三〇〇万円近い自己負担が必要となる。身体的、精神的負担に加え、経済的負担は三重苦である。わが国には国民皆保険があり、さらに高額療養費、医療費控除、医療費減免などのセーフティーネットが用意されている。しかしそれでも、自己負担割合の引き上げや最先端の医療技術、長い治療経過などでがん患者の経済的負担は増加している。
がんセンターや大学病院などに通院するがん患者約四〇〇〇名に、領収書などから医療費を合算してもらった。年間の自己負担額は平均九〇万円に達していた。内訳は入院、外来、交通費などの直接費用と、健康食品・民間療法、民間保険料などの間接費用とが、ほぼ半々である。六割の患者は健康食品・民間療法を利用し、その年間支出額は平均二〇万円。また、八割の患者は民間保険に加入し、その年間保険料は二〇万円を超える。
患者の平均年齢は六〇歳を超えており、がん治療の自己負担額はこの年齢層の平均実収入の二割に相当する。患者の半数は高額療養費による償還を受け、四分の一の患者は医療費控除を受け、四割の患者は民間保険からの給付を受けている。これら戻ってくる金額の合計は五〇万円ほどである。一部の患者は、しばらくして一息つける可能性があるが、当座は年間一〇〇万円近い金額を準備しなくてはならない。治療期間は平均三年半である。

制度疲労に陥った国民皆保険
今日、がんは身近な病気である。患者は約一三〇万人であり、死亡者は年間約三〇万人、全死亡の三割を占める。がんの医療費は年間二兆円を超え、一般医療費の一割を占める。また、がん患者が入院することによる生産性の低下は四〇〇〇億円強、死亡による生産性の喪失は四〇〇〇億円弱と試算される。がんに罹患することの社会的損失は、これらを合算しても三兆円を超える。二〇〇四年度にスタートした「第三次対がん一〇カ年総合戦略」が掲げるスローガン、「がんの罹患率、死亡率の激減」の実現は、財政の観点からも重要かつ緊急である。
がんの医療費は今後も増加傾向をたどると予測され、国家の財政と患者の家計を圧迫する恐れがある。がん患者が医療費を心配することなく治療に専念できる環境を早急に整備しなくてはならない。「お金がないため必要な医療が受けられないことがないように」、これは一九六一年(昭和三六年)に国民皆保険を実現した国民の悲願であった。それから半世紀、再び、国民皆保険前夜の事態が生じつつあるようにみえる。国民皆保険のほころびは、患者の医療費に関する切実な訴えからもうかがい知ることができる。

コスト意識のなさが患者負担を増やす
がん医療の進歩を患者にあまねく届けるために、がんの医療財政を破綻させることなく質の高い安全ながん医療を展開するために、臨床現場、制度運用、制度改革の三つのレベルでそれぞれやるべきことがある。
第一の臨床現場では、医療費についての丁寧な説明が第一歩である。調査でみると、医療費について「十分な説明を受けた」とする患者は四分の一にすぎず、半数の患者は「説明がなかった」としている。医師の調査でも、医療費についての説明を「必ずする」と「たいていする」の合計は四分の一にとどまり、過半数は「あまりしない」としている。一般のがん患者が医療費について気軽に相談できる窓口の設置や専門職員の配置が急務である。患者と医療者がともにコスト意識を高めることは、検査や投薬の適正化、入院適用の厳格化など、患者負担を最小化する知恵と工夫を凝らすことにつながる。
臨床現場のもう一つの視点は効率化である。わが国の入院医療が抱える三大課題は、世界標準(主要三〇カ国の平均)に比べ、在院日数が長く(三~五倍)、病床数が多く(二~三倍)、人手が少ない(二分の一~三分の一)ことである。がん患者の平均在院日数は一カ月を超えるが、アメリカは一週間、イギリス、フランス、ドイツは一〇日である。わが国の技術水準は諸外国に遜色はないので、在院日数を現在の二分の一、三分の一に短縮できないはずはない。在院日数が短縮すれば、患者のQOL(生活の質)は向上し、ホテルコストと入院生活の支援にかかる経費が大幅に節約できる。試算では、アメリカ並みの在院日数で三〇〇〇億円強、ドイツ並みで三〇〇〇億円弱の社会的損失の節減が期待できる。
ただし、在院日数の短縮は人員配置の改善とセットでなければならない。在院日数が短縮すると仕事の密度が高まるとともに、早期退院で空いた病床に新たに患者が入院するので仕事はきつくなり、サービスが低下し、ミスが起きやすくなるからである。すなわち病床数は、在院日数の短縮分だけスリム化されなければならない。在院日数が半分に短縮されれば、病床数は半分で足りる。病床数が半分になれば患者あたり二倍のマンパワーを投入できる。
第二の制度運用の工夫としては、三カ月程度かかる高額療養費の償還の迅速化がある。これは患者の要望により、二〇〇七年四月より実現の見通しで、自己負担限度額以上を支払う必要はなくなる。また、新薬などの保険適用の迅速化、高度先進医療の早期保険導入、特定療養費制度(評価療養)の拡大ないし見直し、経済的負担に関する情報提供システムの構築(がん対策情報センターの活用)などがある。

優先度を考慮した医療保険に
第三の制度改革は患者、医療者とも強く望むものであり、改革の核心は人手不足の解消である。がん治療は特に多くの人手を要し、人手不足はわが国のがん医療の致命的な欠陥である。人口当たりの養成数をみると、医師は世界標準の下限、看護師はちょうど世界標準、薬剤師は世界標準を大きく上回る。それでも、人手不足が深刻な最大の理由は、病床数と受診数が世界標準の数倍も多いこと、すなわち、応需可能な限界を超えていることと考えられる。これは、個々の病院や医療者が懸命に努力しても対応しきれない構造的な課題である。社会的入院など、過度に進行した量的拡大、いわゆる医療バブルを総括し清算することがすべての出発点となる。需要から必要な供給を考えるのではなく、供給から適正な需要を考えることが重要である。
改革のもう一つのポイントは、医療の優先度である。医療における優先度は、救急医療におけるトリアージ(患者の選別)と同じく、人手や財源が限られている場合に優先度の高いものに重点配分しようという考え方である。先進国はどこも財政問題を抱えており、医療保険の給付範囲や給付割合について国民的な議論がおきている。アメリカのオレゴン州を嚆矢に、イギリス、フランス、スウェーデン、オランダ、ノルウェー、ニュージーランド等の国々では、医療の優先度を考慮した医療保険のあり方が模索され、一部で実施に移されている。
重い病気などで本当に困ったときに安心を約束するのが医療保険の最大の役割である。フランスでは、補助医療サービスや軽度の疾病の治療薬の自己負担割合を高くするかわりに、がんなど長期で高額な治療を必要とする疾患は患者の自己負担が全額免除される。オレゴン州では、優先度で医療サービスに順位をつけ、休養で回復が可能な病気など優先度の低い医療サービスは、高齢者向け公的保険の給付外としている。わが国に当てはめて試算すると、国民医療費の一割がこれに該当する。こうした制度の導入には、国民の理解と協力が不可欠である。わが国でも、国家予算を医療に重点的に投入することの意義を含め、医療保険の根本に関わる事柄について幅広い議論をおこし、万機公論に決すべき時期に立ち至っているように思われる。
がん対策基本法が二〇〇七年四月より施行される。がん対策の法制化は、多くのがん患者・家族の強い要望に国会が応えたものであるとともに、国を挙げてがんとの闘いに取り組むとの意志を明確にしたものである。患者の経済的負担ができるだけ少ないがん医療の実践に向け、効果的な対策の展開が強く望まれる。がん情報難民ばかりでなく、がん経済難民を回避するために。

濃沼信夫
1948年神奈川県生まれ。81年厚生省に入省、保険局医療指導監査官、WHO本部事務局、国立がんセンター運営部企画室長などを経て、現在東北大学大学院医学系研究科教授。専門は医療管理学、医療経済学。全国のがんセンターや大学病院など 35施設を対象に、がん患者の費用負担などについての大規模な実態調査を実施、06年9月の日本癌学会で発表した。著書に『医療のグローバル・スタンダード』『世界の医療・最前線』などがある。

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それにしても、大学教授は「臨床現場」のことを知りません。お金について、いくらいくらとお話することが「医療費抑止」になるような勘違い・・・。

ちなみに、日本の手術料や入院費は決して高いわけじゃありません。

また、成績も悪くありません・・・。この元厚生労働省のお役人の意見はあくまで「日本の病院は効率が悪い」から患者さんが質の悪い医療を受けているという攻撃です。でも、命がかかるがん治療、金額を聞いても保険が利く範囲ならば、「じゃ、高いので止めます・・・」なんて患者さんや家族はいうでしょうかね。

現在の健康保険では、高額医療費であろうと、ほとんどは患者の支払いに問題は生じません。日本のがん治療が「非効率」なのか?という疑問が生じてしまいます。

日本の在院日数が伸びているのは、療養施設に入れない待機待ちなどが在院日数が伸ばしているように思います。しかし、急性期病院で、外科手術をばんばん行っているような施設が在院日数がそれほど長いとも思えません(まぁ、旧態然とした病院もあると思いますが・・・DPCの在院日数どんどん短くする競争しているのですけどね)。

たとえば、大腸がんの最新の医療に用いられる、分子標的薬。これを年齢に関係なく「破格の値段」(だいたい毎月60万円ていうのが、世界で比べると安いのですが・・・イギリスは毎月100万円♪)、この薬を使うような患者さんが激増している中、高額な薬剤もバーゲンプライスで使える日本といういい環境をやめればいいという話があります(要は地獄の沙汰も金次第♪)。

大学の同門会の時に、ある消化器内科の先生にこう言われて自分は絶句しました・・「ア○スチンなんて高い薬を保険診療で使わせるから医療保険が崩壊するんだぞ!」って・・・。まぁ、これも一つの意見にしか過ぎません。きっと効率化という「難関」を潜り抜ける必要はあるでしょう。しかし、現場の医師は「限界まではたかせといて『お前らの働きが悪い』」みたいな書き方は遠慮なく言わせてもらえば・・・「無礼千万」だと思うのですけどね。

http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/saisin/20071214-OYT8T01014.htm

「1か月の薬剤費だけで約60万円と高額だが、保険で認められ、多くは高額療養費制度が適応されるので、年収にもよるが自己負担は月8万円ほどだ。」

高齢者が増えると、自然にがん患者さんも増えます(これは嘘じゃありません・・・当然、病気で必ず我々は死ぬのですから・・・)。

がんとは言え、病気の進行など、個人差もあります。治療費一定に抑える魔法はないと思います。平均寿命を超えたら、自由診療とか、年収が高い人は保険加入拒否して強制的に医療保険を選ばせて強制加入とかやんないとダメかなぁ・・。ま、それにしても、がん患者さんの医療費高騰に目をつけるのはいいけど、「見当違い」のように思いますがね・・・。

「効率化=手抜き医療」と呼ぶのが僕は適切だとおもっています。ぽち→

なかのひと


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