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過労死裁判:「勝訴」失われた命は返って来ない [看護]


 過労死大国にっぽん:労働者軽視の厚生労働省に意義アリ で先日取り上げた看護師さんの訴訟が、原告勝訴という判決が下りました。しかし、25歳の看護師さんの失われた命は返ってきません。これ以上、医療現場の従事者たちの「立ち去り」や「燃え尽き」が続かないように政府・厚生労働省は、きちんとした監督をすべきだと考えます。
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「勤務の質が過重」=看護師の過労死認定-大阪地裁

時事通信 2008/01/16 
 看護師の長女がくも膜下出血で死亡したのは過重な勤務が原因として、大阪府吹田市の夫婦が国を相手に、国家公務員災害補償法に基づく計約1260万円の遺族補償を求めた訴訟の判決が16日、大阪地裁であった。山田陽三裁判長は「勤務と死亡の因果関係は、超過勤務時間の面からは認められないが、質的過重性を考慮すると認められる」と述べ、ほぼ全額の支払いを命じる判決を言い渡した。


国循勤務の看護師、25歳女性の過労死認定 大阪地裁

朝日新聞 2008年01月16日

 国立循環器病センター(大阪府吹田市)に勤務する女性看護師(当時25)が01年、くも膜下出血で急死したのは過労が原因として、両親が国を相手に遺族補償金約1200万円の支払いを求めた訴訟の判決が16日、大阪地裁であった。山田陽三裁判長は、時間外の労働時間は国が「過労死」と認定する基準を下回るとしたが、「患者の介助など負担が重い業務に従事し、睡眠時間も十分とれない勤務で疲労が蓄積した」と指摘。勤務実態から過重労働による公務災害と判断し、国にほぼ全額の支払いを命じた。 

 看護師は、同センター脳神経外科病棟に勤務していた村上優子さん。 

 判決によると、村上さんは97年から働き始め、患者の食事や入浴の世話に加え、院内の勉強会や研修会の準備で日常的に時間外労働を強いられた。00年からは新人看護師の指導係を兼務し、精神的な負担も増した。 

 山田裁判長は、月の時間外労働は「過労死」と認定される月80時間以上を下回る50時間超とした。だが、午後7時半に勤務を終え、午前0時半に次の勤務が始まるなど、5時間程度しか休憩できない日が月平均5回あったと指摘。週休2日でも疲労は回復しない状態でくも膜下出血となった公務災害と認定した。 

 両親は02年、国に公務災害認定を申請したが、05年に退けられて提訴した。同センターの友池仁暢院長は「関係省庁と協議し、今後の方針を決めたい」とコメントした。 
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 国立循環器病センターと言えば、去年の春先に「集中治療室の医師がまとめて5人退職」したことで有名な病院です。

 もちろん、医師も看護師も怠けたくて離れるわけではりません。限界まで働かされたり、きちんとした労務管理や業務マネージメントを管理者である、院長や事務長、看護師長がしてなかったことに起因する可能性があります。

 去年の年末、イギリスのEconomist誌でも過労死について取り上げられており、その中ではトヨタの工場で発生した過労死について報道がされていました。

日本の過労死:Death by overwork in Japan

Jobs for life:仕事人生
Economist誌:2007年12月19日

東京発:日本の従業員たちは働きすぎて過労死しています。ハラ-キリは日本だけの自殺の形式です。会社の場合、それと同等のものは働きすぎによる死「過労死」です。
 これが1980年代に死因として法的に認められて以来、このために政府に申請されるケースが増えています。
 また、政府が過労死の認定を拒むため、訴訟の数も増えています。1988年に過労死認定の申請のうち4%しか認められませんでしたが、2005年には認定される割合は40%に上りました。(略)

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 ま、いずれにせよ国際的にみても「医療従事者の過労死」は国際的な恥です。偽装請負や派遣会社の搾取など問題が多い、労働行政のゆがみが、末端の労働者に直撃していると考えます。ぽち

  なかのひと 


↓去年のこのニュースも思い出しましょうね。何で医者が辞めたのでしょうかね?
 何で、25歳で看護師がくも膜下出血でなくなるのでしょうかね?

国循センター、ICU医師が全員退職へ

3月1日8時0分配信 産経新聞

国立循環器病センター(大阪府吹田市)で、外科系集中治療室(ICU)の専属医師5人全員が、3月末で同時退職することが28日、分かった。同センターは国内で実施された心臓移植の半数を手掛けるなど循環器病治療の国内最高峰で、ICUは心臓血管外科手術後の患者の術後管理・集中治療を受け持ち、診療成績を下支えしてきた。同センターはICU態勢の見直しを検討している。(以下略)

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過労死大国にっぽん:労働者軽視の厚生労働省に意義アリ [看護]

 グッドウィルという企業があります。ちょいと前は「グッドウィル・ドット・ビーズ!」とかをテレビCMで流していた企業ですが、厚生労働省は素敵なお仕置きをしました。

グッドウィルに停止命令、全事業所2-4カ月・厚労省 

日本経済新聞 2007/01/12

 日雇い派遣最大手のグッドウィルに対し、厚生労働省は11日、労働者派遣法に基づき、全事業所を対象に2―4カ月の事業停止命令を出した。18日から新規の派遣事業や営業活動ができなくなる。禁止された業務への派遣や二重派遣など違法行為を繰り返していたことを厚労省は悪質と判断。労働者軽視の法令違反で、日雇い派遣のあり方や業界の体質が問われそうだ。

 700を超す全事業所に対する長期の事業停止処分はこれまでで最も重い。11日午後に記者会見した東京労働局の浅野浩美需給調整事業部長は処分理由について「(違反)期間が長く、(違法に派遣した)人数も多く、(違反に関与した)事業所も多い。グッドウィルは過去にも処分歴がある」と説明した。(11日 23:45)

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 もちろん、会社は国の定めた法律を違反しては行けません。当然、処分されるべきだと考えています。さて「医療現場」に目をやると・・・労働行政は実はまったく機能していません。

 過重労働&過労死は医師だけの問題ではありません。

 ここに看護師さんの過労死について紹介しておきます。彼女は25歳、まだこれからたくさんの人生がある若者でした。その命を奪ったのは「過重労働」でした。所轄はどこですか?国立循環器病センターって。

 国民が病気になった時に、お手伝いをする医師や看護師の命を粗末にしている国、厚生労働省・・・。医師や看護師が毎月何十時間も法令を無視した労働を続けさせているのはいかがなものか。


看護師・村上優子さんの過労死認定・裁判を支援する会



 来週1/16に行政裁判が控訴審の判決が出ます。医療現場で一緒に看護師さんと働いてきた者として、この裁判を応援したいと思います。
 そして彼女のような未来ある若者の「過労死の根絶」を国や病院の管理者は、誓うべきです。No More!過労死!

 そして、厚生「労働」省は、きちんと医師や看護師の労働者を守るべきです。そうでなければ、医療従事者の立ち去りは続きます。そして、医療の崩壊は止まらないでしょう。偽装国家とは国そのもののあり方が問われていると考えます。ぽち

  なかのひと 


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精神科病院の看護師さんの暴行?:真相はまだ謎ですが・・・ [看護]

「言うこときかない」看護師が患者けり死なす

産経新聞 2007.12.8 00:39


 群馬県警太田署は7日、勤務先の病院で入院患者に暴行し死なせたとして、傷害致死の疑いで同県太田市新道町、看護師、大渕充容疑者(28)を逮捕した。

 調べでは、大渕容疑者は11月16日午前4時ごろ、太田市の医療法人愛全会武蔵野病院で当直勤務中、入院中の無職男性(67)=同県桐生市=の頭をけるなどして死亡させた疑い。

 男性は意識不明となり太田市内の別の病院に搬送されたが、今月3日、外因性脳内出血で死亡した。大渕容疑者は「言うことを聞かなかったから」と供述しているという。武蔵野病院は精神科と内科が診療科目。

看護師が暴行、患者死なす 容疑で逮捕 群馬・太田

朝日新聞 2007年12月08日

 入院中の男性患者に暴行を加えて死亡させたとして、群馬県警太田署は7日、同県太田市新道町の看護師、大渕充容疑者(28)を傷害致死の疑いで逮捕した。「言うことを聞かなかったから」と話し、容疑を大筋認めているという。 

 同署の調べでは、大渕容疑者は11月16日午前4時ごろ、勤務する太田市内の精神科病院「武蔵野病院」で当直中、入院していた同県桐生市の無職の男性(67)の頭部をけるなどした疑い。男性は意識不明の重体になり別の病院に運ばれたが、12月3日に死亡した。死因は脳内出血だった。不審を抱いた転院先の病院が11月29日に警察に通報し、暴行の事実が分かったという。 

 武蔵野病院の船渡川誠一郎院長によると、暴行については本人が否定していて、警察の調べがあるまで知らなかったという。「長年こういうことがないように気をつけてきたのに残念だ。大変申し訳なく、遺族に謝罪したい」と話した。 

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 ショッキングなニュースです。患者さんのお世話をするが医師や看護師さんの務めです。間違えても、殴ったりは・・・って思いたいですが。行き過ぎがあったでしょうか。もっとも、日本の精神科の病院の看護体制は一般病院と比べると非常に手薄です。
 通常の7:1とか10:1看護はまず取れない状態です。その証拠が下記のような文章があります(精神科医療情報サイトe-らぽーるより)。また、図表もみていただけると分かると思いますが、看護師さんの数も医師の数も一般病院に比べると、医師は3割弱、看護師さんも6割くらいしかいません、日本の一般病院でも足りない看護師さんですが、精神科の場合、やはり「他の病気と違い」、患者さんのケアや看護は大変なことが少なくありません。

 こういう状況下であると、やはり「一般病院の看護師さんの働く現場」とはまた過酷な様相を呈している可能性があります。

 もちろん、結果として、患者さんがなくなってしまうような行為を看護職員が患者さんにしてしまったことは、「残念」ですが、根底には、日本の精神科病院が、現場のスタッフに負荷をかけていないだろうか?と思いました。亡くなられた患者さんのご冥福をお祈りするとともに、再発防止には「現場の病理」にもきちんとメス(取材)が入ることを願っています。ぽち

  なかのひと 



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精神科病院とは

 精神病院の医師数、看護職員数(正看、准看)の特例とは、一般病院では医師数を計算する場合、入院患者数を徐さないで計算しますが、精神病院の場合は入院患者数を3で除して計算します(次頁の計算式を参照)。例えば、100床の病院でかつ、外来患者が1人もいない場合では、一般病院の場合は6人必要となりますが、精神病院の場合は2人でよいことになります。また、看護職員数は、一般病院の場合は看護職員1人が最低4人の患者を看る必要がありますが、精神病院の場合は、6人まで看ることができます。なお、平成13年3月の医療法の一部改正により、一般病院のうち療養病床は看護職員1人が6人の患者を、一般病床では3人の患者を看ることになります。また、単科精神病院では看護職員1人が4人の患者を看ることになります。(ただし、当分の間、看護職員1人が5人の患者を看ることができます。) 




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医師会と看護協会:分断された我々は失敗する・・・ [看護]

 「東京日和」はマスコミの報道を問うことばかりが、最近の仕事になって、嫌になっています(別に自分はもっと気楽なのがいいのです・・・マイル修行のお話の方が楽しいかなぁって)。

 さて、そろそろ気づいてもいい頃だと思いますが・・・医師会は「医療費削減」について、深刻に考えています。

 一方、看護師さんたちの団体、日本看護協会は「看護師がもっと安心して現場で働き続けられるように・・・」という形で下記のような提案を10月に要望を出しています。


平成20年度予算・税制に関する要望書

国家予算に関する要望
1.資質の向上
  1)看護師基礎教育4年制化の推進
  2)新人看護師臨床研修制度の推進
  3)教育基盤の整備の推進
2.離職の防止・再就業の支援
  1)看護職の就業継続を図る事業の推進
  2)助産師確保総合対策事業の充実
3.補助金事業
  1)間接補助事業から直接補助事業への転換
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 これ、「医療費削減」についてまったく触れていません。また「看護職の増員や教育」にはお金がかかります。人件費が増えるのです。
 それをどこから調達するのでしょうか?政府は「医療費を抑制」しようとしています。それを考えると空虚な文言でしかありません。

 たとえば、「開業医」の診療報酬を引き下げられた開業医はどうするでしょうか?経営が困難となれば、自分の給料を下げるだけでなく、常勤の看護師さんよりは、安いパートにするかもしれません。

 また、病院も経営が困難になった場合、医師不足の折、医師がいないと病院はどうにもなりませんから、「医師」の給与は圧縮できません、つまり他の費用を削減するしかありません、薬や医療機器などのコスト圧縮は簡単じゃありません。

 まして、医療機関の経費のうち人件費が50%以上です。これを圧縮するとなると・・・そうです、看護師や技師さんや事務職員などパラメディカル、コメディカルなどにしわ寄せが来る可能性があります。

 そういう意味で、もはや「医師会」と「看護協会」が雇用者側である医師と対立するのはまったくそぐいません。

 アメリカでは、医療訴訟による医療保険の上昇と、薬の価格の高騰などで、ひどく医療費が増加しました。そして、個人の破産の半数が医療費の支払いによるものです。そして企業にとっても医療保険の高騰で社員の医療保険の負担で世界第一位の自動車メーカーGMが倒産寸前です。

 このため、産業界や患者さん、そして家庭医の学会も参加して「Divided We Fail」という活動を開始しました。この活動は超党派です。なぜならマスコットは・・・共和党のマークの象と民主党のシンボルのロバが半分づつ交わったものです。

アメリカ:家庭医協会も医療制度改革キャンペーンに参加


 日本もそろそろ診療側と看護側、そして患者さん側でみんなで「医療の未来」を考える時期だと思います。また、開業医が楽して儲けすぎと反感をもってみえる勤務医の先生方もお見えですが・・・ちょっとまずいでしょうね。分断されると支配する側はとても簡単です。各個撃破すればいいだけです。

 もうすでに、この対立は時代遅れなのです。開業医も勤務医も提携して、患者さんの診療を行う時代になりました。

 勤務医の労働条件の悪化は、開業医が力を握る日本医師会の怠慢もありますが、お互いにきちんと情報交換できていなかったり、医師不足に陥った病院が、地元の医師会と連携して、患者さんをお願いするような仕組みが不足してたりしませんか?

 先週の土曜日に元厚生労働省の医系のお役人だった先生が「勤務医はとにかく不足だ・・・」というのに対して「先生の地元の開業医の先生がたの医院では患者さん不足じゃないですか?病院は医師不足でしょうが、開業医は患者さん不足ではないですか?」って突っ込まれていましたが、その院長先生は地元の開業医の先生方の診療所の状態をほとんどご存知ない様子でした。

 またマスコミも「病院が悪い」とか「医師が・・・」というのは簡単ですが、厚生労働省がこれまで現場を無視して、僻地医療や産科医療、救急医療を軽視してきたツケが来ています。
 明日にでも、壊れそうな日本の財政も問題ですが、「開業医の給料を下げておしまい!」ではありません。看護師さんたちや患者さんが求める「安全性の高い医療」を提供したいのは我々、医師とて同じです。

 そろそろ、考えてください>看護師さん、開業医も、そしてマスコミも

 医療費がこれ以上増えないようにしたい・・・だから開業医の給料を半分に引き下げよう・・・は一度きりの魔法です(1200万円×開業医10万人としても、たった1.2兆円にしかすぎません)。次は看護師の給料でも半分に下げますか?(辞めるねみんな・・・間違いなく)

 さらにそのあと、高齢化(今の年間100万人死ぬ時代から、ほんの15年先の未来は160万人死ぬ時代になります)や医療の技術進歩で医療費高騰はどうするんですかね?>政府の偉いみなさん。それにマスコミのみなさんも・・・。
 また、開業医の先生方の収益を下げれば、勤務医に戻る?不可能です。初期投資も含めて、借金があります。

 その返済を肩代わりでもしてくれなければ、絶対に戻れません。むしろ怪しげな「アンチエイジング」「プラセンタ注射」「キレート療法」「デトックス」のような自由診療に走るのが目に見えています。

 本当に必要なのは、総合的に診察できる医師。それを育成してこなかった医療界(だいたい医師を育てる大学病院の教授はみんな専門医ばっか・・・)も悪いのですが、そういう医師を評価してこなかった行政が一番悪いと思いますけどね。
 もちろん専門医も大切ですが、何でも相談に乗ってくれるという意味での「家庭医」が、あまり機能していません・・・小児でも何でも病院、困ったらすぐに救急車ぢゃ、病院がてんてこまいしますわな。さて、医師会と看護協会、そしてコメディカル・・・これらの共同戦線を張れるかが最終的には医療費について未来が決まるでしょう(だって看護師さん127万人いるんですよ。それに比べりゃ医師会はたった28万人、医療界で内ゲバやっているうちは、官僚には勝てませんな)
ぽち

  なかのひと 



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[燃え尽き症候群と医療崩壊] [看護]

 医学界新聞に興味がある記事が載っていました。これを読むと、看護師さんについてこういう数字が出ること自体、日本の医療従事者の労働環境は「悪化」が続いているように思います。
 そして、それを病院の経営者たちや各団体は一致して政府に働きかけないと、「医療崩壊」は外的要因だけでなく、内側の要因でさらに進むであろうというのは・・・難しくないと思いました。
 ところで、医師のバーンアウトについて「数字」は出さなくてもいいんですか?>日本医師会の勤務医部会さんは。
 もちろん、手間がかかるし、そういうのは大学にお任せでもいい?厚生労働省がやる?訳ないですよね・・・平均残業時間をそのままに「病院再編」とか考えている役人が、労働者として医師の燃え尽き度なんて考える訳ないです。


リンダ・エイケンが診た日本の労働環境,危機のシグナル

 

週刊医学界新聞 第2749号 2007年9月24日
 

 看護師の受け持ち患者が1人増えるごとに,患者の死亡率は7%,看護師のバーンアウト率は23%,職務不満足率は15%上昇する――。2002年JAMAに発表されたこの論文は適正人員配置の必要性を強く訴えかけ,世界中に衝撃を与えた。筆者のリンダ・H・エイケン(Linda H. Aiken)氏らは同様の調査をさらに世界各国で行っており,日本では金井Pak雅子氏らが共同研究を実施。その研究成果がこのたびまとめられた(参照)。金井氏ら日本の研究班のメンバーが,ペンシルバニア大リサーチチームのエイケン,クラーク両氏とのディスカッションを行った。  

 

>日本の調査において「1年半以内に今の職場を離れる予定がある」と回答した看護師が3分の1以上もいましたね。これは他産業と比べて極めて高い割合です。もし,教師の3分の1が毎年教職を去るとしたら,教育現場にどんな混乱が起こるでしょう。トヨタの社員の3分の1が毎年辞めたら,下手をすれば経営がひっくり返りますよ。非常に危険で,厳しい状況です。

 

「Nursing Work Indexを用いた
ヘルスケアアウトカムの日米比較研究」の概要

記=増野園惠
第2749号 2007年9月24日

結果 

看護師のバーンアウトの状況は,
・対象者の58%がバーンアウトしており,非常に高いバーンアウト値(バーンアウトスコア>48)を示す者が7%いた。
・バーンアウトスコアの平均値を病院ごとにみると最低でも26.6で,最高は33.4であった。これを経験年数3年以下の看護師の割合と比較した場合,3年以下が5割を越える病院で,バーンアウトスコアの平均値が最高値であった。ただし,全体としては経験年数とバーンアウトスコアの間に相関はみられない。

◆月あたりの平均残業時間は26.6時間であった。

◆看護師が捉える自らの職場環境は,
・受け持ち患者と過ごす時間が取れる適切な支援体制がある(38.5%)。
・他の看護師と患者ケアに関する問題点について話し合うだけの十分な時間と機会がある(38.6%)。
・質の高いケアを提供するために十分な看護師が配属されている(17.5%)。
・仕事をやり終えるのに十分なスタッフがいる(19.7%)。
・仕事がうまくいった時には賞賛や承認が得られる(29.8%)。
・労働環境は快適で,魅力的で,居心地がよい(25.1%)。

◆自分の病棟のケアの質が高い/優れていると答えた対象者は3%である。

◆ケアを受ける必要が家族に生じた場合,自分の病院を勧めると答えた対象者は36.6%である。

対象者の59.6%が現在の仕事に不満足である。

◆対象者の71.3%は看護師であることに対しては満足している。

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 医師といえども、労働者の一人にしか過ぎません。逆にいうと、こういう調査を毎年行いながら、行政に働き明けを行わないで「待遇改善」を図ってもらおうとしても、ベンチマークにするべきものもない状態では、「目標」もないですね。

 

 せめて、国際的にも比較対象となりうる基準を導入して、毎年の調査を行いマスコミに報道してもらうだけで、だいぶ違いませんかね?

 医師が現場から立ち去ったりしないように努力するのが、日医や日医総研などの仕事なんだと思うのですが、「診療報酬の引き上げ闘争」なんかより、自分は「勤務医の労働時間削減」や「過労死ゼロの実現」が大切なんじゃないでしょうかね。ぽち 

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[看護師不足]作られた転職支援ブーム [看護]

 流動化といえば、キレイに聞こえますが、引き抜き合戦などで、人材派遣会社が跋扈して地方自治体の病院経営が危うくなったりしているのを見ると、こういう動きはどうなんでしょうかね?もちろん職場の労働条件に難があったり、魅力がなければ、看護師さんも離れていきますが、現在の大規模病院の生き残りのための「無理やり転職ブーム」は7:1の看護水準が、ゴールでない限り、この動きは続くように思いました。ちなみに看護協会は5:1の導入を厚生労働省などに提言しています。急性期には確かにマンパワーが必要なのは間違いありませんが、そういう病院以外まで今回の場合、経営上の理由で人を集めてしまったという…転職業者さんが悪いともいえませんし、流動化によって、いいことがないわけではりません。ただ、新人ナースだらけの大学病院など、怖くて入院なんかしたくありませんけどね。
ぽち→ 

人材サービス各社、看護師の転職支援を拡大

2007/08/01日本経済新聞

 人材サービス会社が看護師の転職を支援する事業に力を入れている。昨春の診療報酬改定で看護体制が手厚い病院ほど報酬が多くなったのを機に、看護師の争奪戦が激化。労働条件の良い病院を求めて転職する動きも広がっている。少子化に伴い人材不足が一段と深刻になるとみて、出産で離職した女性など「潜在戦力」の取り込みを急ぐ。

 ジェイエイシージャパンは年末までに看護師資格を持つ転職コンサルタントを現在の2倍に増やす。出産などでいったん離職した看護師の悩み相談にきめ細かく応じることで、人材確保につなげる。病院からの求人依頼は前年比約6割増で推移。今年の看護師の紹介人数は前年比3割増の320人程度を目指す。

 リンクスタッフ(東京・港)は看護師の人材紹介を担当する転職コンサルタントを向こう1年で現在の三倍の30人程度に増やし、2007年10月期の紹介人数(常勤ベース)を前期の二倍強の1500人前後に引き上げる。中小規模の民間病院に加え、規模が大きな大学病院からの依頼も伸びていると言う。

 メディカル・コンシェルジュ(東京・渋谷)は営業拠点を現在の10拠点から今秋までに12拠点に増やす。高松や仁方など看護師不足が深刻な地方都市に進出、顧客開拓を進める。

 キャリアブレイン(東京・港)は今夏をメドに大手ポータル(玄関)サイトに医療ニュースを提供。自社サイトの閲覧者を増やし、看護師の登録拡大につなげる。

 三十代以上の層を中心に夜勤が多い病院での勤務を嫌う看護師が増えていることに着目。看護師資格が生かせる異業種の職場への転職を支援する動きも広がっている。

 人材派遣大手のピープルスタッフは看護師を訪問介護会社や介護施設向けに派遣する事業を拡大する。メンタルヘルスなど看護師の関心が高い分野のセミナーを前年比3倍の年6回ペースで開催、看護師資格をも登録スタッフ数を増やす。

診療報酬改定で拍車

 看護師は夜勤の多さなど労働条件の厳しさから慢性的に不足しがちなうえ、景気拡大で雇用を増やした他業種に人材が流れたことで、人手不足が深刻化していた。

 昨年4月の診療報酬改定をきっかけに大規模病院が相次ぎ採用枠を拡大、看護師の引き抜きも目立つようになった。看護師の雇用流動化を受け、人材サービス会社への引き合いが急増している。売り手市場のため「転職で給与は5-10%程上がる」(リンクスタッフ)という。

 病院側が診療報酬を増やそうと安易に看護師を増員動きを抑制するため、厚生労働省が新たな数値基準を導入する動きもみられる。一本調子での流動化には不透明な要素も残っている。


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