[燃え尽き症候群と医療崩壊] [看護]
医学界新聞に興味がある記事が載っていました。これを読むと、看護師さんについてこういう数字が出ること自体、日本の医療従事者の労働環境は「悪化」が続いているように思います。
そして、それを病院の経営者たちや各団体は一致して政府に働きかけないと、「医療崩壊」は外的要因だけでなく、内側の要因でさらに進むであろうというのは・・・難しくないと思いました。
ところで、医師のバーンアウトについて「数字」は出さなくてもいいんですか?>日本医師会の勤務医部会さんは。
もちろん、手間がかかるし、そういうのは大学にお任せでもいい?厚生労働省がやる?訳ないですよね・・・平均残業時間をそのままに「病院再編」とか考えている役人が、労働者として医師の燃え尽き度なんて考える訳ないです。
リンダ・エイケンが診た日本の労働環境,危機のシグナル
週刊医学界新聞 第2749号 2007年9月24日 |
看護師の受け持ち患者が1人増えるごとに,患者の死亡率は7%,看護師のバーンアウト率は23%,職務不満足率は15%上昇する――。2002年JAMAに発表されたこの論文*は適正人員配置の必要性を強く訴えかけ,世界中に衝撃を与えた。筆者のリンダ・H・エイケン(Linda H. Aiken)氏らは同様の調査をさらに世界各国で行っており,日本では金井Pak雅子氏らが共同研究を実施。その研究成果がこのたびまとめられた(参照)。金井氏ら日本の研究班のメンバーが,ペンシルバニア大リサーチチームのエイケン,クラーク両氏とのディスカッションを行った。
>日本の調査において「1年半以内に今の職場を離れる予定がある」と回答した看護師が3分の1以上もいましたね。これは他産業と比べて極めて高い割合です。もし,教師の3分の1が毎年教職を去るとしたら,教育現場にどんな混乱が起こるでしょう。トヨタの社員の3分の1が毎年辞めたら,下手をすれば経営がひっくり返りますよ。非常に危険で,厳しい状況です。
「Nursing Work Indexを用いた
ヘルスケアアウトカムの日米比較研究」の概要
記=増野園惠
第2749号 2007年9月24日結果
◆看護師のバーンアウトの状況は,
・対象者の58%がバーンアウトしており,非常に高いバーンアウト値(バーンアウトスコア>48)を示す者が7%いた。
・バーンアウトスコアの平均値を病院ごとにみると最低でも26.6で,最高は33.4であった。これを経験年数3年以下の看護師の割合と比較した場合,3年以下が5割を越える病院で,バーンアウトスコアの平均値が最高値であった。ただし,全体としては経験年数とバーンアウトスコアの間に相関はみられない。
◆月あたりの平均残業時間は26.6時間であった。
◆看護師が捉える自らの職場環境は,
・受け持ち患者と過ごす時間が取れる適切な支援体制がある(38.5%)。
・他の看護師と患者ケアに関する問題点について話し合うだけの十分な時間と機会がある(38.6%)。
・質の高いケアを提供するために十分な看護師が配属されている(17.5%)。
・仕事をやり終えるのに十分なスタッフがいる(19.7%)。
・仕事がうまくいった時には賞賛や承認が得られる(29.8%)。
・労働環境は快適で,魅力的で,居心地がよい(25.1%)。
◆自分の病棟のケアの質が高い/優れていると答えた対象者は3%である。
◆ケアを受ける必要が家族に生じた場合,自分の病院を勧めると答えた対象者は36.6%である。
◆対象者の59.6%が現在の仕事に不満足である。
◆対象者の71.3%は看護師であることに対しては満足している。
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医師といえども、労働者の一人にしか過ぎません。逆にいうと、こういう調査を毎年行いながら、行政に働き明けを行わないで「待遇改善」を図ってもらおうとしても、ベンチマークにするべきものもない状態では、「目標」もないですね。
せめて、国際的にも比較対象となりうる基準を導入して、毎年の調査を行いマスコミに報道してもらうだけで、だいぶ違いませんかね?
医師が現場から立ち去ったりしないように努力するのが、日医や日医総研などの仕事なんだと思うのですが、「診療報酬の引き上げ闘争」なんかより、自分は「勤務医の労働時間削減」や「過労死ゼロの実現」が大切なんじゃないでしょうかね。ぽち→
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