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みんな人殺し?読者も記者も現場知らず・・・・ [マスコミ]

救急隊員10分寝過ごす 搬送の男性が死亡

産経新聞 12/21 14:16

 福島県の須賀川地方広域消防本部の救急隊員の男性消防士(23)が昨年11月、当直で仮眠中、救急車の出動指令を受けてもなかなか目を覚まさず、出動が10分近く遅れていたことが21日、分かった。消防本部は消防士ら計8人を文書訓告などの処分にしている。
 搬送された須賀川市の会社員男性(34)は死亡。同消防本部は「死因が分からず出動遅れと死亡の因果関係は分からないが、遅れたことは大変申し訳ない」としている。
 消防本部によると、昨年11月3日午前4時51分、男性の妻から「寝ていた夫がうめき声を上げて苦しんでいる」と119番があった。同53分に出動指令が出て、ほかの当直員が消防士を起こそうとしたがなかなか起きず、5時3分に出動。到着時、男性はすでに心肺停止状態で、病院へ搬送された後に死亡した。通常より8-10分出動が遅くなったという。

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 仏教徒ですが、今日は・・・聖書から。

 ヨハネ福音書8章1~11節「あなたは石を投げるのか」より


 律法学者たちやファリサイ派の人々が、姦通の現場で捕らえられた女を連れて来て、真ん中に立たせ、イエスに言った。

「先生、この女は姦通をしているときに捕まりました。こういう女は石で打ち殺せと、モーセは律法の中で命じています。ところで、あなたはどうお考えになりますか。」

「あなたたちの中で罪を犯したことのない者が、まず、この女に石を投げなさい。」

 イエスはかがみ込んで、字を書き始める。そうしたら、人々は一人一人と立ち去ってしまい、イエスとその女性だけになった

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 いやぁ・・・勤務中に寝るなとかいうけど、基本的に「30時間連続」で働いている医師からみれば、救急救命士が仮眠からどうしても起きられないこと・・・理解できます。

 判断能力が落ちる、連続勤務。ところで、この勤務状況はどうだったんでしょうかね?
まぁ、「お前ら仕事しろよ・・・」とか言うのは簡単です。だって、現場を知らないで、新聞の記事が報道するままに、テキトーなことを言うのは自由。ただし、「救急車」を無料だからと救急隊の酷使をしているのも日本国民です。

 読者の人たちは、救急隊の勤務実態を知っていていえるのだろうね。


救急救命士の勤務時間、賃金について

 救命士は「24時間勤務」とありますが、どういったことなのでしょうか?次の日はお休みとかですか?多分違うと思うけど…。」


消防職員です。消防は市町村長等が管理する組織ですので,消防により多少体制が異なります。私の所属消防に限ってとしてお読みください

①24時間勤務
私の所属は3班交代制なので,朝出勤し24時間拘束され,翌日朝交代(非番),その翌日が週休日(一般でいう日曜日),でまた,朝出勤するというパターンを繰り返します。
「拘束され」ると表記したのは,勤務時間は16時間程度,残り8時間程度は休憩時間となるからです(詳細は割愛)。


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 まぁ、お目覚めが悪かったのを「怠慢」とか言うのは簡単です。じゃ、逆にそういう仕事場で国民の健康のために活動している救急救命士がどんな風に今回の報道や、批判を聞くのでしょうか?
 ま、こういうエッセイがあったので、ぜひお読みください。仮眠するのは良くないことですか?おきれなくなるほど、仕事に負われてついうっかり・・・って誰もがするんじゃありません?そういう実態をこういう報道は「無視」しています。救急隊は毎日8時間労働じゃありませんぜ。そういうことを考えたr・・・これ以上「救急隊」を働かせようといっても、厳しい現実が待っていませんかね?



救急救命士の仕事
みんな人殺し~救急隊員の出場状況~

 救急隊の出場状況は特に都心部で毎年うなぎ登りです。救急隊の隊数は基準が設けられており、それは人口に対して決まっています。地方自治体の人口によって多少違いますが、一例として人口15万人を超える区域では概ね6万人に対して1台の救急隊が必要とされています。つまり都心部の救急隊は人口がそれだけ多いわけですから隊の数も多いわけです。地方都市は救急隊の数も少ないですが、もちろん人口も少ない訳です。都心部の救急隊も地方の救急隊もカバーする人口は大差がない訳ですから出場件数はそこまで変わらないはずなんです。

 ところが都心部の救急隊の出場件数ばかりがハンパじゃなく伸びている。都心部は人口密度が高いわけで、怪我する人や事故なんかも多い。歓楽街などではトラブルなども多く出場件数も増える。確かにそういった要因はありますが、それにしてもそれだけじゃとてもはかりきれないほどの出場件数を都心部の救急隊はこなしています。(東京消防庁の救急出場件数大阪市消防局の救急出場件数)私の救急隊では平均1日10件の出場があります。1件の出場の平均時間が約70分ですから1日の半分救急車に乗りっぱなしっていう状況です。もっともひどい東京や大阪の救急隊では1日平均13件の隊とかね。私の隊だって平均で10件なんですからひどい時には14件とか15件なんてこともあります。24時間で17時間以上救急車に乗りっぱなしって事もありました。

 消防官の勤務サイクルは朝8時30分から翌朝の8時40分までの24時間10分です。14,5件の出場の場合にはもちろん一睡もしないで24時間のうち17時間以上救急車に乗りっぱなしになります。ハッキリ言って集中力を保って機敏に迅速な活動なんてできなくなりますよ。一睡もしないで18時間働きっぱなしの救急隊が夜中の3時、4時頃には活動していることがあるわけです。年末など救急要請が増える時期の歓楽街周辺の救急隊なんて、ほとんどがこの状況です。まともに食事や休憩を摂っている隊なんていないものだと思った方がいい。また別のお話で書きますけど、消防官は警察官や看護士さんのように夜勤や順夜勤のような勤務体制はありません。朝から朝までの勤務なんです。で、最近では24時間を前半後半で分けて交代乗車したりしていますが、基本的には3名で24時間10分、救急隊員をやります。あなたの家族が夜中に心肺停止になった時、助けに来る救急隊はもう10数時間ろくな休憩も食事も摂らずに働きっぱなしで駆けつけることがあるということです。

 なんでこんなことになるのか?統計学的にも原因はハッキリしています。都心部での救急要請はうなぎのぼりですが、毎年あまり変わっていないもの。要請数の打ち分けです。中等症以上の重症、重篤、死亡の占める割合はあまり変わっていないのです。伸びているのは軽症の数。地方都市じゃ救急車を呼べば近所総出の騒ぎになる。ご近所の目、ご近所に迷惑をかけたくない。それでもそんなこと気にしていられないから救急車を呼ぶ。地方の救急隊の方に話を聞いても、やっぱり「これは救急車を呼ぶなぁ」って症状の悪い方が多いようです。都心部の場合、お隣さん自体知らない。隣の人が誰なのか?顔も知らない。救急車呼んでも別に関係ない。現場で活動していて都心部のこういったところは嫌ってほど感じます。都心部ならではの風土なんでしょうか。こういった都会の状況が救急要請増大に相当大きく関わっています。「オレがちょっと気分が悪いから、タダだし救急車を呼んだら、その間に近所の子どもが心肺停止で死んだ。でもオレはその子知らないし関係ない。」これって都心部じゃ普通です。本当にこんな人ばっかりを扱うんですよ。こんな感じの人は、なんのモラルもなく本当簡単に救急車を利用します。タクシー使えばお金がかかるからね…。

 以前、東京の消防署にお勤めの救急隊長さんからお話を伺いました。インフルエンザがはやっている時期でした。
隊長「この前、東京23区の救急隊が何隊出場していたか知ってる?
パラ吉「90%くらいですか?」
隊長「あまいね~!すげえよ!100%全隊出場したんだよ
パラ吉「そりゃすごいですね。事故にあったら終わりですね…」
東京って日本の首都ですよ。インフルエンザが流行る時期、年末の忘年会シーズンやお花見シーズンのアル中患者がたくさん出る時期、けっして事故には逢わない方がいいですよ。救急車は来ませんから、だってないんだもん。インフルエンザが流行る時期、都心部で1分1秒を争う大怪我をしたら?もう明らかですよね、死ぬしかないんです。東京に限らず日本の都心部はこういう状況なんですよ。もちろん今も。

 こんな状況にあることは世の中に全然知られていませんけど、大きな社会問題ですよね。近くの隊が全部出場ているからと20分かかって現場到着したら、今にも片足が落ちそうな血の海の交通事故だったなんてこともありました。やっぱり20分かかって駆けつけた傷病者は心肺停止状態だったこともありました。5分で病院に運べれば助かった、30分だから助からなかった。そんな事はだれにも分かりません。でも間違いありません!都心部では迅速な救護を受けられれば助かったかもしれない方がたくさん死んでいるんです。まさに今もそうです。

 決定的対策をとらない国が悪いのか?どうにかしない消防が悪いのか?助けられない救急隊員たちが悪いのか?簡単にタクシー代わりに救急車を呼ぶ人たちが悪いのか?こういう状況を伝えないマスコミが悪いのか?こういう状況を知らないひとりひとりが悪いのか?私が思うに私も含めてみんながみんな少しずつ人殺しです。人を助けたくて救急隊員になったのに、助けられたかもしれない現場に行く…、そして助けられないで死んでいく。都心部に勤める救急隊員のこの苦しみを少しでも分かってもらいたい。救急車を呼ぶとき、少しでいいから考えてほしい。いつだって救急隊が命の危機に瀕している傷病者の下へ、迅速に駆けつけ、迅速な処置で救命する。そんな当たり前だと思われていたことは、都心部では実は全然当たり前じゃないんです。

 当たり前のことを当たり前にさせてほしい。すべては救命のために。そのために救急隊員たちは働いているのだから。

 救急車の適正利用に関しては各消防局、地方自治体が頭を抱えているようです。特に都心部を中心としてですが全国的にモラルの低下がその大きな要因です。各自治体もその対策として以下のようなホームページやホスターなどで広報活動をしているようですがなかなか成果が挙げられていないのが現実です。救急車の適正利用について訴えている各地方自治体のホームページを紹介します。

千葉市消防局 救急車はタクシーではありません!
名古屋市消防局 イラストを使って分かりやすい。

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 自分は、救急隊の方々に「お疲れ様」といっていつも患者さんを迎えるようにしていました。また、救急について彼らに講義を行った時も、誰も眠らない(医者や看護師は慢性疲労で、会議や講義で必ず誰かが寝ますな・・・)。彼らの責任感あふれる態度を評価しています。

 そういう人たちががんばっても、どうしても「おきられない」こと「寝坊」しちゃうのをさもあしざまに書くのは、再発防止になりません。救急隊員がしっかり休憩をとりながら、働けるのならいいですが・・・「根性がたりねーんだ」みたいな事を書いている人は、現場の労働状況を無視しているんですね。逆に、自分たちは一切ミスをしないかのような・・・。現場の職員の過怠があれば、それを無罪放免に・・・とは言いません。きちんとした処分はされていますし、当日の救急隊の到着時間が遅れてしまったのは事実です。

 しかし、このような残念な事件を「再発」させないためには、どうしたらいいか?もう少し考えませんか?それとも100%に出動しているところで、自分の目の前の家族や友人が倒れたとき、救急車が一台も出払ってしまっていて間に合わないとき・・どうしますか?万が一の時のための救急車ですが、日本の場合、適切な利用状況であるとは思いません。

 救急隊は税金で運営されている無料の行政サービスです。それを「無料」だからとむやみとリピーターで利用する人、または軽症でも「急ぎには便利」とばかりに気軽に呼ぶ・・・結局、そのために「救急隊が過重労働を強いられているかも・・・?」そういう視点も欲しいところです。

 病院も同じです。産経新聞の社説のように単純に「たらい回しをした病院は許せない!」なんていうのは簡単です。しかし、その病院がどんな風だったのか?どうしたら防げるのか?そういう視点で建設的に行わなければ、現場のスタッフの疲弊は続きますし、嫌気が増すばかりです。

 今や、病院のスタッフは過重労働で気持ちがネガティブなムードに支配されがちです>今の救急現場。それを理解せよとは言いませんが、マスコミの「心無い報道」が現場のスタッフをどんなに挫いてきたか?そういう事も少しだけ考えて欲しいところですね。
ぽち

  なかのひと 


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