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[防げない流れ]国外へ優秀な人材が流出する・・・ [キャリア・転職]

 日曜日は「ワーキングプア――働いても働いても豊かになれない」のNHKスペシャルの再放送を拝見していました。

 再放送にも関わらず、衆目を集めた内容で、東北地方の小京都・角館(今は仙北市と言います)で、奥さんが病気で倒れ、入院費を支払うために1日食費を100円に切り詰める洋服の仕立て屋さん(昔は年に100着以上仕立ててた町一番のお店だったとか)のお話は身に沁みるお話でした。

 個人的には、「地域や弱者を切り捨てても、日本が生き残るなら何でもアリの小泉路線」は国民が幸せになれるとは思えませんが、おかげでトヨタやキャノンなどの大企業はほくほくです(ちゃんと黒字をだしている銀行からもきちんと税金とってね>財務省の方々)。

 もちろん、日本は高付加価値のハイテク商品を売りにして、そのおかげで豊かな暮らしを手に入り、その恩恵にあずかっているので、政府と自民党のやり方を全否定はできません。

 ただ、バブル経済が崩壊したあと、日本の景気拡大のために土建屋さんに大量に国債を発行して資金を投入したように、崩壊しそうな医療や福祉部門にも資金を・・・といってもほんのわずかな資金しか出してくれません。国の税金の使い道を「道路は大切、福祉は無駄が多い」というい「恣意的」に福祉切捨てのためになら、マスコミの情報操作さえ厭わぬ、財務当局の動きは、監視が必要です。

 ただし、大手新聞社をはじめとするマスコミは報道が話題になり、広告枠が売れるためなら、どんな記事でも載せることは平気です、大切な視点としては、マスコミ自体は善悪関係なしに売ることが商売なので、「崩壊」の真犯人たりえません。犯人はまた違うところにあると思います。さて、診療報酬の改定のニュースが参りました。いよいよ・・・ほんの僅かばかりですが引き上げが本決まりになりそうです。

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診療報酬「本体部分」8年ぶり上げ、政府・与党が調整 

日本経済新聞 2007/12/12

 政府・与党は12日、医師の技術料である診療報酬の「本体部分」を8年ぶりに引き上げる方向で調整に入った。引き上げ幅は0.1%を軸に、0.3%程度までの範囲で来週までに決める方針。ただ、薬価に関しては1%程度引き下げることが固まっており、薬価を含めた診療報酬全体では4回連続のマイナス改定となる。 

 診療報酬の改定率は1%当たり800億円の国庫負担となる。歳出抑制の立場から医療費削減を求める財務省は0―0.1%程度の改定を求めている。一方、大幅な引き上げを要求する日本医師会や医師不足問題に配慮して、与党がさらなる上積みを求めており、政府・与党は今週末から来週にかけて0.1―0.3%の範囲で調整する方向だ。 

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 このニュースで取り扱っている診療報酬の改定で、800億円が医師の財布に直接入って潤うわけじゃありません。今まで行われてきた医療費抑制策で、経営危機に直面している病院が一息つけるか・・・くらいです。

 また看護師に薬の処方解禁という話題も・・・ありましたが、これすら「薬剤師」さん側からは、「医師でさえ間違えるのに、きちんと薬について教育を受けていない看護師さんに処方させて大丈夫なのか?」という疑問が出されていますし、初診料や再診料が大きな収入源である開業医にとって打撃となりえます。
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<規制改革>医師負担軽減で看護師の薬処方解禁…医療分野案

毎日新聞 - 12月07日

 政府の規制改革会議(議長・草刈隆郎日本郵船会長)が2次答申に向けまとめた医療分野の規制緩和策の原案が6日、分かった。最優先課題に医師不足対策を掲げ、医師の負担軽減のため看護師などが行える医療行為の範囲を広げる法改正を08年度中に実施することなどを盛り込んでいる。また、医療従事者の派遣解禁や、入院日数短縮のため、患者がいくら入院しても病院には一定の報酬しか払わない「定額制」導入も明記した。今月下旬をメドに最終案をとりまとめる予定だ。 

 答申は医師以外の医療従事者も医療行為ができるように医療関連法を改め、勤務医の負担を軽減するよう求めている。具体的には(1)看護師による感冒、便秘、不眠、高血圧、糖尿病などに対する検査、薬の処方(2)助産師による正常分娩時の会陰切開、縫合(3)訪問看護における看護師による死亡確認や薬の処方--などの解禁を挙げた。 

 医師の派遣については、06年4月から産休の代替要員としての派遣のほか、へき地への派遣が認められたものの、解禁はされていない。また派遣元、派遣先とも医療機関に限定している。答申は07年度中に労働者派遣法の政令を改正し、禁止業務から医療従事者を削除することで、派遣業者でも医師や看護師を派遣できるようにし、派遣先も医療機関に限定しないようにすべきだとした。医療従事者がボランティアで救命手当てをした場合、事故が起きても免責されるよう08年度までに法整備することも指摘している。 

 また、入院医療費削減のため今の「1日単位」の定額制を改め、「1入院単位」とする「診断群別定額払い方式」を07年度中に導入。一律の医療費を治療結果によって変える「医療の質に基づく支払い」(08年度検討開始)、医療機関に病気ごとの治癒率などを公表させ、患者が病院を選択できる情報公開(07年度検討)なども盛り込んでいる。同会議は、混合診療の解禁についても検討しており、最終的に答申に盛り込む方針だ。 

 「医療従事者の役割分担の見直し」については、政府の経済財政諮問会議も検討するよう求め、厚生労働省は年内に結論を出す。しかし、日本医師会が「責任の所在を明確にする必要がある」などと慎重姿勢を崩していないこともあり、具体案の検討はほとんど行われていない。その他の項目も同省などが強く抵抗している。2次答申は、こうした現状を踏まえ、規制緩和の流れを加速させる狙いがある。【大場伸也】

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 規制緩和は、間違いなく、医師の間でも収入の格差を広げます。MNJで「カナダ:年収7900万円の救急医が話題になる」 を掲載しましたが、これ以上「医療費削減」を続ければ、アメリカやカナダに優秀な人材が流出すると思います。

 当然です、医療を施すのは「崇高な義務」とか「聖職」というのなら、きちんとした職業に見合った処遇が必要です。ですが、昨今の「医療バッシング」で日本を出たいと思う人が出ても仕方ありません。 

↓日経メディカルより

「米国で医者として働く」―仕事内容、勤務時間、給料を比べてみた

米国ピッツバーグ大学 津久井宏行

日経メディカル2007/12/10

日本から医師が流出していく?
 私が働くピッツバーグ大学には、他科の先生を含めると、毎年10~15人の先生が臨床留学されている。また、研究留学されている先生方もたくさんいる。そういった先生方と飲み会などを通じて、今まで述べてきた労働環境などの話をすると、皆一様に米国の医療に興味を示し、最近では、米国で臨床に従事したいという意志を持たれる先生も増えてきた。

 かつて、日本からの研究留学生の多くは、数年の滞在が終わると、日本に帰るのが当然だったが、研究から臨床への道を開こうと真剣に頑張っている先生方が増えており、状況がだいぶ変わってきたように思える。

 中には1年余りの準備期間で、USMLE (United States Medical License Examination: 米国で臨床を行うために必要な医師免許)のStep1から3まで、すべて合格し、現在、ポジション探し中の先生もいる。また、臨床留学した先生の中には、今まで日本で行ってきた科を米国でも希望したが、ポジション獲得が非常に難しかったため、他科に転向して米国に残ることを決意したという先生も1人や2人ではない。

 なぜ米国で?と聞くと、「米国の方が仕事をしやすいから」「家族との時間が取りやすいから」といった答えが返ってきた。人として当然の選択であると思う。多分、転科してまで米国に残ることを決断された先生方は、今後も日本に帰らないのではないだろうか。

 これらが意味することは何か?

 チャンスさえあれば、日本から離れてしまう医師が増えているということである。

 研修を終え、Attendingポジションを得て、米国各地に散っていく日本人の先生方を見て、「日本人医師もメジャーリーグ同様、世界で活躍するようになったなぁ」とうれしく思う半面、日本のプロ野球がここ10年で空洞化し、すっかりつまらなくなってしまったように、日本の医療の空洞化が現実のものになっているような気がして、心配でならない…。私の杞憂であろうか――。

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 ちなみに、優秀な人は100年以上前にも国外へ流出しています。彼は、イギリスへの留学から帰国し、肥料会社を設立して前途有望でしたが、周囲の反対を押し切って、アメリカに再度36歳に出国、アメリカで研究所を作り、40歳でアメリカに永住権を得、終生アメリカと日本の架け橋になるべく現地で活動されました。

 また、彼のおかげでアメリカで設立されたばかりのパークデービスという名の製薬会社は大きく成長しました。彼はその後、アドレナリンを開発し、これは日本だけでなく世界中で今でも現在使われている大切なお薬です。

 のちに、彼は三共株式会社(今の第一三共の前身です)の初代社長をつとめることになります。彼の名は高峰譲吉博士と言います。

 彼の生涯についてはウィキペディアの日本語版英語版の両方を読むと楽しいです。彼の死を当時の新聞はニューヨーク・ヘラルド紙は社説で、「米国は得がたき友人を失い、世界は最高の化学者を失った」と書いて、彼の業績を称え、その死を惜しんだ。とのことです(NPO法人国際留学生協会 高峰譲吉の項より)。

 さて、話は医療に戻ってしまいますが、今回の改訂で、コンタクトレンズの診療報酬などで、過剰利潤を追求するのは確かに「規制」されてもいいのですが(非眼科医によるコンタクト診療、やはり問題ないとは言い切れませんが、急激な規制によって、廃業させられる医師は困りますけど・・・汗)。

 「過重労働」を押し付けられ、「訴訟」や「義務」ばかり追求されるのでは、適いません。高峰博士のように海外留学して、現地で活動し続けるのは生半可では行かないと思いますが、カナダのように年間3600時間の労働で8000万円近くなら、英語の勉強や海外での修行も報われそうに思います。

 いずれにせよ、日本の医療について光明が見えません。若くて優秀な医師や看護師が流出する可能性はますます増えますし、自分も今、医学生なら語学留学したり、もっと海外に目を向けるでしょうね。

 日本では、開業したら安泰ではありません、これも変化の時代といえば、聞こえはいいのかもしれませんが・・・大変です。ぽち

  なかのひと 



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