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病気になったら死ねというのか 医療難民の時代 [医療行政]

 今さら、「シッコ」を見ました。まったく、アメリカは病んでいる、日本でよかった・・・なんて納得していてはいけませんね。なぜなら、日本は医療費が増大しすぎるから、国民の自己負担をどんどん増やしています。政府が土建工事を最優先にして、医療費への支出をけちってるからですが。

 

 まだの方、そろそろ東京都内では上映しているところはぐんと少なくなっていますが、地方ではこれからのところもあります。ぜひ。

http://sicko.gyao.jp/theaters/

 

 さて、タイトルの本、実はまだ手にとってません。ですが、たまたま土曜日の医療制度研究会でお隣に座った中原先生の奥様がおもちでした。

病気になったら死ねというのか 医療難民の時代

著者:矢吹紀人/著 

出版社:大月書店

価格:1,500-

ISBN:978-4-272-36059-8

この国は人間の命を捨てはじめている
「国民が医療・介護を受けられない」という事態が全国で急増し、大量の「医療難民」が生み出されている。医療費削減を主目的とする数々の悪法が、いよいよその実態をむき出しにしつつある。多くの国民がどのように医療や介護から遠ざけられ、健康に生きるすべを阻害されているのか。全国の実情を事実にもとづいて告発する。

 

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 映画「シッコ」でも、入院中の患者さんを捨てる(ダンピング)シーンが出てきましたが、直接ではないが、政府はそういう意味で、これからは自分の手を汚さないで、命を粗末に扱うのでしょうね。

 

 さてと、土曜日は「医療制度研究会」で、本田先生にお会いできるかな?って思ってたら、金沢まで講演に出かけておられ、お会いできませんでした。

 この日は、Admi塾(のませ会) の塾友のお一人信友先生の講演でした。

塾友

信友 浩一(九州大学医学部大学院医療システム学教室 教授)

正木 義博(済生会熊本病院 副院長)

瀬戸山元一(元:高知医療センター院長)

 

「厳寒期の医療を考える-医師不足は生じていないとすれば」

九州大学大学院医療システム学 信友浩一 先生 

 

会員の一人から次のようなメールが届き、本講演会が実現しました。
” 私はアドミ塾で彼らの話を聞き、当地での医療提供体制に重ね合わせたところ、それまでdead endに行き当たっていた当法人の今後の運営に活路を見出すことが出来ました。彼らの主張は、マンパワーと医療資源不足の今、医療資源の集約と開業医も含んだ連携により、各々の地で医療提供体制の再構築を実現することにあります。具体的には、病院が複数ある地域であれば、病院が個々分野に特化することで役割分担を進め、急性期から以後終末期までの医療を連続的に確保することです。特に急性期後医療は患者の残存機能レベルに応じた療養環境を提供し、そこでは急性期疾患が生じた時の医療を確保する。最終的には癌以外も含んだ終末期を送る場所とともに、患者の意思に基づいた看取りの場を構築するということになります。目的の実現には、運営にあたる事務方の徹底した合理化と効率化により、現場がフルに医療に専念できる環境を作ることが重要である。ということになろうかと思います。”

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 ということで、行ってまいりました。本来は、この回に瀬戸山先生も一緒に講演していただく予定でしたが、今回は信友先生だけでとても内容がいっぱいでした。というかまとまりがなかったらすみません(二日酔い気味でした)

 

 信友先生は「日本の医師不足」を単純にOECD加盟国と比較するのは乱暴だということで、本田先生とはまた違った見方をされていました。

 

 最初に、アメリカのように医師の資格や専門領域について厳密に規定し、誰がどこまで治療を担当するか明確にしているのだが、日本の方式だと裁量性(つまり何でも自由)で、業務の内容も外科でも内科でも高血圧の治療をしたり、余分な仕事を行うことで、無理していると、本当に必要な医療の質の確保がままならない状態である。

 アメリカの方式であれば、専門家の団体が、規定した業務内容を担当できる医師以外の領域は別の専門家(つまり医師でなくてもできる仕事は薬剤師や専門看護師)に担当させ、医師は本当に必要なこと以外は行わない。こちらの方が、プロセスがはっきりしており、また医師についてはProfessional society quality controlされており、支払い側も業務内容について払いやすく、安定している。

 一方、日本では看護師の仕事までも医師が分担して行っており、その分、医師が疲れて辞めてしまうと影響が大きく不安定である。また、質が担保されないため、支払い側も学会の認定医や専門医が質の保証がされていないため、安心して追認できない。

 

  日本の西日本でも医療崩壊があるようですが、そんな中で、信友先生が関わったという出水総合医療センターでは、必要な医療について検討を住民や病院関係者、地域の医師会、自治体関係者と行い、その医療圏で必要とされる医療についてリソースアロケーション(見直し)を行って、地域完結型医療を推進したそうです。

 これについては詳しくは出水市病院事業の在り方に関する提言 を拝見いただくとして、いずれにせよ、このような形をとることで、地域医療の見直しを行うのをサポートしてきた先生の意見としては、医療の見直しは地域ごとに考える必要がある。

 政府はお金もないし、アイデアもない。だから地域でやれること(開業医や療養施設、急性期医療機関などとの地域連携型治療パス、救急分野、疾患分野ごとの分担制)を行いなさい。という大蔵省の「銀行の護送船団方式」の放棄と同じように、「病院の護送船団方式の終焉」を追認なさっているような感じでした。

 

 他にも2008年の新医療計画では、二次医療圏の形骸化し、さらに地域ごとに4疾患5事業ごとに全ての病院が対応するのではなく地域ごとにそれが完結することが求められるように言われました。

 

 また、研修制度が導入されたからには、大学は研究機関として生き残るべきだし、臨床研修病院は医師養成機関としてまったく違う役割を担うようになるであろう。いわゆる医師のキャリアパスがまったく二つ別個のモノになったのだから、いいことだという意見でした。

 

 もちろん、異論もあるでしょうし。医師は足りていて、工夫がなりない的な厚生労働省的な発想と「救急医療で疲れたらその病院が全部の救急を引き受けるのやめて、得意分野だけに絞ればいいじゃない?」というのには、北海道のような地方(もう集約化が進み過ぎているように思ってるのですが)ではどうなっていくのか?と思ったものですが、その地方で必要とされるものに絞ることが必要とのことで、「ぜんぶ」は無理だろうとい感じでした。

 

 なかなか刺激的でもありました。質疑応答も色んな方が立ちましたし、そのあとの懇親会もにぎわっておりました。いずれにせよ、地域医療再編に「厚生労働省」はあんまりかかわりをもてないだろうし、結局、地域ごとに動くしかないように思いました。

 もちろん、地方自治体の運営の管轄にあたる総務省も黙っていませんし、地方自治体病院の経営困難に直面した今まさに、地域の医師会などが力を発揮するべきところかもしれませんが、そんな風に迅速に動くのは限られた所だけかなと思ったりしました。

 

ぽち 

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  また興味がありましたら、「信頼に値する医療の確立を目指して」というのもご参考までに。

 

 九州大学大学院医療システム学教室教授、信友浩一先生は、“信頼に値する医療を確立する”ことをモットーに九州大学の新しい講座で人材育成に努めている。信友先生の経歴はユニークだ。呼吸器障害を専門とし、国立療養所近畿中央病院在籍中にハーバード大学院へ留学、帰国後、旧国鉄の産業医として40万人弱いた職員や家族の健康を支える立場となる。そこで国鉄からJRへの民営化という大改革を目の当たりにしつつ、企業の健全化に寄与した。その後、臨床を離れ厚生省の行政官として様々な医療政策や改革に携わってきた。その中で今回は、地域完結型医療の事例を交えながら、これからの医療の在り方とそのために何が重要かについて、お話をうかがった。

信頼に値する医療の確立を目指して (PDFファイル:91KB)

 


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M&A

M&A気になります。
by M&A (2007-10-01 03:36) 

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