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[責任追及のパラダイムシフト]個人責任よりも再発防止へ・・・ [医療]

 最初に、お亡くなりになられた患者さんのご冥福をお祈り申し上げます。

大野病院のK先生の実名をマスコミ各社は報道することで、「社会的制裁」をまだ行うつもりなようです。産経さんもまた、司法と同じ立場のようです。今回の事件については、民事訴訟で賠償を問うことについては一切否定しません。

しかし、極めて難しい手術をやり切った医師の最大限の努力に対しては「患者と医師の信頼を崩し日本の医療の発展を阻害」だそうですが、このK医師に対して、ご遺族は「土下座」を求め、謝罪をさせたのにも関わらず・・・ですがね(参照→天漢日乗:福島県立大野病院事件第11回公判@12/21→「墓前で土下座してこい」K先生に遺族がさせたこと)。それでも責任回避といわれるわけです。

いやはや、個人への責任追及という「現代版魔女狩り裁判」の恐ろしいこと、極まりなしですな。どんなに医学が進歩しても、100%完全な治療なんて不可能です、それに刑事罰を課することが、「現場の崩壊」につながっていることは、まだ理解できていないようで、医療崩壊推進エンジンとして検察側の全力推進力がいかに強力かよくわかります。ぽち

  なかのひと



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産科医に禁固1年求刑 福島の患者医療過誤訴訟
産経新聞 2008.3.21

福島県大熊町の県立大野病院で平成16年、帝王切開手術を受けた女性=(29)=が死亡した医療事故で、業務上過失致死と医師法違反(異状死の届け出義 務)の罪に問われた産婦人科医、K被告(40)の論告求刑公判が21日、福島地裁(鈴木信行裁判長)で開かれ、検察側は禁固1年、罰金10万円を求 刑した。検察側は「責任回避に終始する被告の態度は患者と医師の信頼を崩し日本の医療の発展を阻害するもの。幼い子供を残し死亡した被害者の無念は察する に余りある」と指摘した。裁判では、子宮に癒着した胎盤の剥離を継続したことの是非▽剥離時に手術用ハサミ「クーパー」を使用したことの妥当性▽剥離に伴 う大量出血の予見可能性-などをめぐり、検察側と弁護側が全面的に対立している。

弁護側は「判断に誤りはなく、措置は適切だった。医師法違反については、異状死の定義が不明確な上、被告は当時異状死と認識していなかった」などと無罪を主張している。
論告によると、加藤被告は16年12月17日、子宮から胎盤を無理に剥離すれば大量出血の恐れがあると知りながら、子宮摘出など適切な措置を取らず、 クーパーを使って剥離を続け、大量出血で女性を死亡させた。また大量出血による異状死と認識していたにもかかわらず、24時間以内に警察署に届けなかっ た。
弁護側の最終弁論は、5月16日に予定されている。

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ところでパラダイムシフトといったのは、アメリカの常識では「こんな魔女狩り裁判」はありえないそうです。いかに、死亡となったであろうと、再発防止の意味では、1人の産科医ががんばり続ける過酷な現場を放置した国や行政側の責任が真っ先にあるべきです。

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医療安全 米国報告

(4)日本の制度不備を痛感

大野病院事故 医師逮捕に驚きの声


読売新聞 2006/05/26



「えっ、それで医師が逮捕されるの?」

 ワシントンの政府系医療機能評価機関の主任研究員、デボラ・クイーンが驚きの声を上げた。日本の福島県立大野病院で今年2月、帝王切開の手術中に女性患者(当時29歳)が失血死し、産科医が逮捕された事件を説明した時のことだ。


 「医療過誤に刑事罰はなじまない」「逮捕の基準、異状死の届け出の基準が不透明だ」という医師団体などの従来の主張に、「たった1人の産科医が不在になれば地域医療が崩壊する」という要素が加わり、医療従事者の間で波紋が広がっている。


 ――そうした日本の事情を説明すると、クイーンは混乱した表情で、こう口にした。「なぜ、そんな分かりにくい制度や状況を放置しているのですか」


 同じ言葉を、多くの医療関係者から聞いた。



 米国では、医療事故が刑事事件になることはきわめてまれだ。


 病院での不審な死については、具体的な届け出の基準があり、専門職が解剖の適否を判断する。解剖して初めて医療過誤が発覚した場合も、検察側に連 絡する義務はなく、通常は担当者の判断に任せられるという。解剖結果の情報は基本的に閲覧が可能。民事訴訟に使うことができ、州ごとのボード(専門家委員 会)がこの結果を判断材料にすることもある。


 大野病院の例のほか、患者の取り違え事故、先端技術を駆使した手術でのミスなど、日本で刑事処分の対象になるケースの対応について、医療制度に詳しいボルティモア大のアラン・ライズ教授に尋ねると、「医師は免許を失い、民事で訴えられるだろう」という答えが返ってきた。


 米国の行政処分は厳しい。2000年の統計では、約70万人の医師のうち、免許取り消し1642人、免許停止745人、戒告・けん責1014人。免許取り消しだけでも日本の過去35年の累計の33倍に当たり、医師数が日本の3倍弱であることを考慮しても多い。


 「行政処分が日本の刑事処分に近い懲罰的な意味を持っている。それでも『医師に甘すぎる』という国民感情がある」と、ライズ教授は付け加えた。



 日本では、「医療事故だけを業務上過失致死罪から除外する理由はない」とする法曹界と、反発する医療界の“溝”が埋まらない。


 昨年、法医学、病理、臨床の3者が解剖と検証、評価を行うモデル事業が始まったが、過失の評価や公表の方法について明確な基準を出せずにいる。


 「なぜ、県ごとにボードを作らないのですか。警察に頼らない事故検証と懲罰の仕組みを作らなければ、医療はダメになりますよ」。自由主義を掲げ、 規制の強化には基本的に反対の立場であるはずの民間研究機関「ケイトー研究所」の担当者でさえそう懸念するのを聞き、日本の制度設計の遅れを強く感じた。 (敬称略)


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ついでに、医師不足の現状を鑑み、短時間雇用制度導入だそうですが、こういう小手先のことで「崩壊」が止まるとは思えません。勤務医に30時間以上寝ないで働かせてきた、厚生「労働」省も、また医療崩壊を放置プレイしているわけです。もう少し、頭を使ってくださいね。

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勤務医に短時間雇用制の導入促進、厚労省が全国の知事に通知
日本経済新聞 2008/03/21
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厚生労働省は21日、勤務医の労働状況を改善するため、短時間の労働でも正規の雇用扱いになる制度の導入を求める通知を全国の都道府県知事に出した。女性医師などが働きやすい労働環境を整え、出産後の離職を防ぐ。全国的に勤務医の不足が指摘されていることに対応する。

フルタイムより労働時間が短く、残業のない勤務形態を想定している。働いた時間に応じて給料を受け取り、社会保険も適用される。大阪厚生年金病院で導入 例がある。女性医師が短時間でも正社員として働けるようにすることで、離職を防ぎ、復職を促す効果が上がっているという。

厚労省によると、全国の産婦人科と小児科で医師が不足する事例が目立つ。女性医師の割合が比較的高いのが特徴で、離職を防げば改善にもつながるとみている。長時間労働のため出産や子育てをきっかけに離職する女性医師や看護師が後を絶たないという。(21日 23:33)

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