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[医療事故&薬事行政への市民の声]成熟?これからに期待しましょう [医療]

【コラム・断】成熟した患者中心の法案を

 プロの産婦人科医からみれば、現時点の医療技術では不可抗力の出産時における死が「医療には素人の検事」によって、業務上過失致死罪の刑事事件として起訴された。さらに証拠隠滅のおそれありと手錠までされて逮捕されたシーンは、ことに死のリスクがある症例を扱う大病院の勤務医を震撼(しんかん)させ、猛反発させた。これでは危険な症例を避ける医師が続出し、医療崩壊が現場から起きるとの声があがった。実際、産科病院はこの1年間に10%減少した。

 公正中立な第三者機関で判断するのはどうかと、厚生労働省主導の検討会が開かれた。その第2次試案がこの10月発表されたが、最初に処罰ありきの様相に勤務医らから反対意見続出である。

 この協議会では、現場から医療改革の具体的提言をすべきと、独自の医療紛争処理対案を発表し、今年のラストセッションはずばり「医療紛争処理」だった。

 医師だけでは不十分だろうと、法曹界、政治家、遺族らがパネリストとして登場し、会場からも自由に発言でき、多様な意見が交換された。しかし、いろいろな意見を聞けば聞くほど、現実の重さに息苦しくなった。

 と、会場の遺族が「対案作りには患者や遺族も参加させてほしい。それでこそ『医療事故に関する患者支援法案(仮題)』では」との意見を理路整然、堂々と述べた。成熟した患者・遺族が中心にいる、そこにこそ希望があることを再認識させ、拍手喝采(かっさい)だった。(評論家・井口優子)

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 薬害事件の時もそうですが、こういう時、「患者さんの声」はマスコミが増幅させます。困った事に、素人である患者さんは、薬の時もそうですが、「科学的な立場」に立てません。被害者という立場を忘れては「薬」を考えられません。

 また、技術的な議論にも少し入ろうというのなら、やはりそのレベルに達するように医学論文に精通していたり、日本や世界の医療現場について学んでほしいのですが・・・あんまりそういう意味では立派に活動しているという市民側の論客が見当たりません(医薬ビジランスセンター の浜六郎氏が有名ですが・・・「高血圧は薬で下げるな!」「コレステロールに薬はいらない! 」といった形で薬の害をひどく注目を引くことを目的としているので・・・薬についての啓蒙活動というより、センセーショナルに走った感じがしてなりません)

 個人的には「市民活動」としての医療事故をセンセーショナルに取り上げがちなのを懸念しております。

 もちろん、薬害エイズ訴訟、薬害肝炎訴訟など、行政の不作為による被害、医師や看護師による「単発的な医療事故」、むしろ病根が深い「システム不良による医療事故」もあります。
 一番、難しいのは、患者さんは単独の医師や病院を責めるのですが、たいがい医療事故は複雑で、リピーター医師を排除しただけでは、この世の中からは医療事故は根絶しません。そして、患者さんの声が必ずしも「正しい」とは限りません。

 アメリカでのワクチンなどによる予防について「Taichan先生」【マイアミの青い空】で「、「自分の身は自分で守る」という認識であり、守るための盾や矛(武器)が予防接種や予防薬、そして病気の知識です」と書いておられるように、予防接種は自ら守るべき自衛策です。
 アメリカでは必須とされている世簿接種を受けていない児童は学校にも通えません、そして言うまでもありませんが、この国では「ほんの一部の薬による被害者さん」によって、医療行政や薬事行政の動きが恐ろしく遅くなっています。世界中では「がんの1/4は予防できる」とばかりにウィルス予防の子宮頸がんの予防のためにHPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンなどを接種することについて議論をしていますが、日本じゃ3種混合混合ワクチンですら、任意。はしかが輸出されるたびに「感染症対策後進国」といわれる・・・。

 もちろん、薬害は根絶が望ましいですが、ワクチンや新薬の普及の遅れによる「犠牲者」を感じるのは個人的な感想でしょうか。

 タミフルを処方するか悩む季節になりましたが、こういうグラフもあります。日本中からインフルエンザがなくならないように、高齢者について言えば、予防接種によるメリットが多いでしょうが、日本は任意です。

 アメリカのワクチンの承認などにかかわる諮問委員会Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP)のメンバーには医師あるいはナースプラクティショナーしかいません。
http://www.cdc.gov/vaccines/recs/acip/members.htm

 実は、タミフルやインフルエンザワクチン接種について、考えることがありました。以下、開業医の先生のホームページですが、非常に内容が濃いです。

http://www7a.biglobe.ne.jp/~SuzunokiCC/tamihuru.html

「インフルエンザはかぜの一種。数日寝ていれば治る病気だ」

 薬害反対運動のリーダーはこう言い放ちました。
 しかし、本当にそうでしょうか。次のグラフを参照してください(国立感染症研究所HPより)。毎年これだけ、インフルエンザで死亡した方がいるのです。また、10年前、抗インフルエンザウイルス剤が登場するはるか昔は、死亡にいたらなくとも高熱が続き、肺炎などで入院する子どもは小児科病棟にあふれていました。インフルエンザという病気そのものの恐ろしさを軽視し、医療の進歩を否定すれば(なぜか、日本のマスコミではこの手の無責任なアジテータがもてはやされますが)、必ずそのつけが回ってきます。そして、そのつけは常に、弱い立場の一般の子どもと親にふりかかってくるのです。
 来シーズンからインフルエンザ患者の死亡者数、入院患者数が増加していくでしょう(もちろん、タミフルが使えず、リレンザも絶対数が少ないため、入手できないと考えられるからです)。そのとき、4年前とは全く正反対のことを現在発言している人たちは、何とコメントするのでしょうか。

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 いずれにしろ、市民の声もあっていいのですが、どうも「特定の犯人探し」にばか目が
行ってしまって、国際的な医療水準から遅れた医療行政を行っている・・・そんな気がするのは、ワクチンや薬などで防ぎうる病気をこのまま放置していてもいいのでしょうか?薬害を訴える人にそういう意見が出されたことはありません。理性を欠いているというのは99%安全でも、「有害なことがあるのなら叩く!」というのはどうも解せません。

 ちなみに、ワクチンの製造産業としては日本の弱小メーカーは、規模が小さ過ぎて、新しいワクチンの開発が、国内でも非常に難しい状態であることは・・・当局の方たちは良くご存知だと思いますが、日本の国民、我々医師も知っておかねばなりません。

 厚生労働省などのお役人は、ことあるごとに予防医学が大切と言われていますが、国民にとって、疾患予防のために、もう少し「科学的な検証」もなされねばなりません。また、市民が「外野」におかれないためにも、情報開示も必要でしょう。そして、在野の意見が「被害者」として報道されてばかりなのも少し見直して欲しいものです。

↓アメリカでは異論があるようですが、インフルエンザ予防接種は義務付けです
アメリカ:ニュージャージー州幼児へインフルエンザ予防接種の義務付けへ

日本薬学会誌ファルマシア12月号
「日本のワクチン産業再生に向けて/橋本宗明」

ぽち

  なかのひと 


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