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[貧しい医療]常勤医不足で露呈 [医療崩壊]

 だいぶ前に[医師の進路-2-]医療訴訟フリーな公務員の世界で「医療訴訟フリー」だなんて書いたけど、壁の中も大変なようです。

 まぁ、兼業不可などで条件が悪いことで有名な「公務員」ですが、こういう「行政の不作為」が表面化しています。

 日本医事新報などでも、募集をよく見かけますが、大学医局がお付き合いで送っていたポスト(無給助手)として、常勤職員として派遣を受けていたかもしれませんが、医師不足は「弱いところ」や「貧弱なところ」から被害がはじまります。

 きっとそのうち「医師免許さえあれば、定年退職後でも、誰でも可」ということになるのでしょうね。ぽち 

 

刑務所の常勤医不足が深刻

.産経新聞 2007/09/24

 

 全国の刑務所に勤務する常勤医が減少を続けている。国家公務員扱いから兼業禁止などの規定で、元々のなり手が少ないうえ、厚生労働省が義務付けた研修制度の影響で、大学病院が刑務所に医師を派遣する余裕がなくなっことなどがその理由だ。地方では常勤医ゼロの刑務所が珍しくなくなってきている。

 秋田刑務所は勤務していた医師が転職したことで、7月1日から常勤医がゼロとなり、現在は非常勤の医師と、別の刑務所からの派遣医に頼っている。

 医師確保は各刑務所に委ねられており、秋田刑務所の関係者も7月以降、大学病院を繰り返し訪問して交渉したが、いまだ常勤医は決まっていない。同刑務所の藤本英雄総務部長は「常勤医を採用する以前に外部の医者に非常勤で来てもらうことも難しい」と嘆く。

 秋田刑務所と同様、地方の刑務所での医師不足は目立っている。

 全国の刑務所、拘置所は75カ所で、常勤医が1人もいないのは、帯広(北海道)、月形(同)、長野(長野)、富山(富山)など全国で10カ所に上る。すべての施設の常勤医の定員数は226人だが、平成19年4月の時点で198人と深刻さがより浮き彫りになっている。

 法務省矯正医療管理官室は「診察の対象が受刑者では、進んで働こうという心理にはなりにくい。兼業ができないことも大きい」と常勤医確保の難しさを説明する。

 さらに、地方の刑務所の医師不足に拍車をかけたとされるのが、平成16年度から厚労省が医学部生に必修を義務付けた「新臨床研修制度」だ。

 制度導入後、充実した研修内容を求めた学生が、大学病院を避けて一般病院で研修を受ける傾向が強まっている。これによって大学側が自前の医師確保に汲々とし、「余裕のなさからか、地方の大学病院では刑務所などに医者を融通できなくなっているようだ」(文科省関係者)という。

(2007/09/24 20:17)

 

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行刑改革会議第3分科会 第2回会議議事概要

 より抜粋 

<説明概要>
 横浜刑務所には部長以下6名の医師がおり,24時間体制で対応している
 横浜刑務所の支所の中には非常勤医師しかいないところもあり,そのような支所からは電話で対応を求められることがある。
 医師としては,医師以外の医療スタッフの不足を強く感じている。
 医療機材の多くは老巧化しており,市中開業医以下である。
 施設で対応できない病気・怪我については,八王子医療刑務所や外部の病院に対応を依頼している。
 1日に行う業務は,病舎に収容されている者の診察,懲罰・解罰時の診察,隣接している横浜拘置支所の被収容者の診察,工場回診の結果診察が必要とされた者の診察などであり,これらを普通は3人の医師で行っている。
 被収容者のうち約60%が投薬を受けており,約17%が精神科の患者である。
 歯科は受診待ちが約8ヶ月,眼科は約3ヶ月である。
 現在の矯正医療では,医師の確保が至上命題だと思う。
 刑務所の医師になるメリットとしては,拘束時間が短いため研究などをする時間が持てるということが挙げられると思う。デメリットは,勤務に魅力がないことであり,経験が長くなるほど不満が強くなる。
 医務と保安の分離という点については,医務と保安を完全に分離すれば医師は患者が納得する治療を施せばそれでよいということになり,精神的には楽であるが,詐病が多く,外医診察や投薬要求が強い中で,限られたスタッフで全ての要望に応じるのは現実として不可能である。医師に全ての責任がかかることにはストレスを感じるが,医務と保安が協力してバランスの取れた医療を行うことが刑務所医療では必要ではないか
<説明概要>
 精神科の患者への対応はどうなっているか。
  (回答:精神科の患者は多いが,精神病の者には精神科の医師が対応している)
 睡眠薬を求める声は強いか。
  (回答:強いが,刑務所の睡眠時間は約10時間と長いため,精神科医師が必要と判断した場合のみ投薬している。)
 診察中身の危険を感じたことはあるか
  (回答:ある。精神科医師の医師は特に多い。刑務官の立会いにより対処している。)
 保安に外医治療を止められたことはあるか。
  (回答:外医治療をするかどうかは医師の責任・判断であり,必要があると判断すれば必ずやっている。)
 外部病院は受け入れに協力的か。
  (回答:公立病院でも,過去にトラブルがあったりするとなかなか協力が得られない。他方,私立病院でも礼を尽くしてよい関係を築けば協力が得られている。)
 医師以外のスタッフはあとどのくらい必要と感じるか
  (回答:どの職種も足りないが,薬剤師と回診担当の准看護師に不足を感じている。)
 社会的に意義のある仕事をしていると感じるか。それとも生活のためと割り切っているか。
  (回答:若い医師は,研究の片手間という意識が働いてしまうこともあり,どうしてもアルバイト感覚になってしまうことがある。自分に関して言えば,仕事中は熱中しているが,時々このままでいいのかと思うことはある。)
 給料を上げればどうか。
  (回答:給料への不満よりも,医師としても知識・技術を維持,発展できないのではないかという不安のほうが強い。ここにストレスを感じる
 診療を求めるものは多いか。セレクトする必要はあるのか。
  (回答:受刑者の60%程度が投薬を受けており,セレクトしないと診療できない。実際には,准看護師の資格のある刑務官が回診してセレクトしている。)
  刑務所に体調が悪い人が集まるのか,それとも,刑務所に入ってから悪くなるのか。
(回答:入ってくる時点でフィジカル的に落ちている人は多い。)

 

 もっともこの質疑応答の前に「証言」が面白いので、そちらもご参考に・・・

1.村瀬尚哉氏(横浜刑務所医務部保健課長)ヒアリング

http://www.moj.go.jp/KANBOU/GYOKEI/BUNKA03/gijiroku02.html

 

 横浜刑務所は横浜市港南区上大岡駅近くに位置します。定員が1,239名に対して収容が,9月の最初の段階で1,484名,収容率でいうと120%,職員負担率5.7と,過剰収容を反映する状況となっております。
 刑務所の隣には横浜拘置支所,これは定員579名,ほかに小田原拘置支所,定員160名,相模原拘置支所,定員100名を含めた4施設が横浜刑務所医務部の管轄となります。小田原,相模原拘置支所には非常勤医師が週2回程度数時間勤務していますが,やはり体制としては不十分であり,しばしば,当所医務部から電話コンサルト,あるいは連行して医療上の指示を受けています。
 次に横浜刑務所の特徴ですが,横浜刑務所はB級施設であり,いわゆる犯罪傾向の強い者を収容しています。実際,平均入所度数は5回,暴力団加入者が30%,これは第104回矯正統計年報の12%と比較すると,かなり大きい数字になっています。再犯率は具体的な数字は出ていませんが,恐らく全国平均の50%を超えるものと思われます。
 このようなことから,本日お話しします内容は,すべての矯正施設に当てはまるものではないことを御考慮の上,御検討ください。
 横浜刑務所の医務のスタッフ構成は,医師は部長を含め6名から成ります。外科3名,内科1名,精神科2名で,精神科の1人を除いていずれも40歳代,私ぐらいの年齢です。部長を除く5名の医師は,週3日の勤務と週1日の夜間オンコール,月2~3回の免業日の日勤及びオンコールをデューティとし,24時間対応できる体制をとっています。

(以下略) 

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 そうなんです。2000人近い受刑者と拘置中の人もたった6人の医師で・・・しかも投薬率60%となるとそれだけでかなりの仕事量でしょう。だから、こんな↓報道になるんですね。 

 

再診せず処方せん6000枚、奈良少年刑務所

日刊スポーツ 2007年9月8日

 奈良少年刑務所(奈良市)が2005年度からの2年間に、医師の再診を受けないで作られた処方せん約6700枚を基に、医薬品を入所者らに投与していたことが8日、わかった。

 医師法は、医師は自ら診察しないで処方せんを交付してはならないと規定。同刑務所を管轄する大阪矯正管区は「継続的に同じ薬を出す際、准看護師資格のある刑務官が医師に症状を報告し処方せんを作ってもらうことがあるが、違法性はない」と説明している。

 同矯正管区によると、奈良少年刑務所は、少年のほか成人の受刑者ら約870人を収容。常勤医師と非常勤医師各1人が診察していたが、ことし6月末に常勤医が退職した。現在は非常勤医2人のほか近くの医療機関に依頼することもあるという。

 医師の診察を受けずに交付された処方せんは05年度に約3100枚、06年度に約3600枚。初回時や薬を替える際には診察した上で処方していたという。

 同矯正管区は「直接医師が診察して1回ずつ処方せんを出すのが最も望ましいが、常勤医師が欠員の施設もあるのが現状。より一層充実した医療に努めたい」としている。(共同)

 

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 週3日の勤務と夜間オンコール。報酬は少ない・・・難しいかなぁ。わかったのは収容されるような悪いことはしちゃだめってことですね。

 あ、もっとも刑務所の食事は健康にはいいらしく、糖尿病なんかのコントロールは良くなるそうですよ。

 

「くさい飯」 本当はうまい?
朝日新聞 2007年09月08日15時55分

 山口県美祢市の刑務所に、受刑者とまったく同じ食事ができる食堂が登場し、「意外なおいしさ」と驚かれている。拘禁施設の食事は長年、「くさい飯」と呼ばれ、マイナスイメージがついて回ったが、最近の事情は違うらしい。くさい飯は本当はうまいのか。法務省は、塀の中の味を外に向かってアピールし始めた。東京で6月に開いたイベントで、初めて受刑者の食事を試食するコーナーも設けた。

実際に獄中で食べた人の感想はどうだろう。02年春に背任容疑で逮捕され、03年秋まで512日間を東京・小菅の東京拘置所で過ごした起訴休職外務事務官の佐藤優さん(47)は、「食事としては完璧(かんぺき)」と言う。カボチャの煮付け、切り干し大根、ひじきの煮付けは、忘れられない味だったという。「房への配膳(はいぜん)の順番を毎日変えて、均等に温かい食事を配る配慮まであった。外務省の食堂より拘置所の食事のほうがずっと上だった」 「面会のない日は囚人のストレスを食い物で抑えている」というのが佐藤さんの見方だ。「食べ物に矯正や懲罰の要素はなく、むしろ『お客様』を管理しやすくすることに重点が置かれている」

バレンタインデーにはチョコレート、お盆にはあんこを添えたもち米、年末には年越しそば。正月には重箱入りのおせち料理まで出た。「食事で季節を知ることができた」という。ご飯に肉や魚、おかずが2~3品、汁物が標準的な食事だ。土日はデザートなどが一品増える。 敷地内に農園を持ち、野菜などを自給自足する刑務所もある。


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skoba

刑務所の医療環境に不満を訴えて,訴訟沙汰になる例も最近は増えていますよ。
by skoba (2007-09-28 14:00) 

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