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[株式会社病院への批判]は正しいのか? [医療ビジネス]

株式会社病院については二つの意見があるので併記をまずさせて頂きます。 

日本の医療を正しく理解してもらうために 

川崎市立川崎病院  鈴木厚

■ 日本の医療の良さ

 日本の医療は医療機関へのアクセスの良さ,高度な医療と安い医療費,平均寿命の高さと乳児死亡率の低さ,まさに世界がうらやむ高い水準にあります.このことからWHOは日本の医療を世界第一位,アメリカの医療を第37位と評価しました.
 しかし日本政府は世界37位のアメリカの医療の真似をしろというのです.アメリカの医療は国民一人当たり日本の2倍の医療費を使っていますが,政府の考えはアメリカの制度を真似ても,国の金は出さないというのです.4000万人が保険に入っていないアメリカの医療,民間保険会社が病院や治療を牛耳るアメリカの医療のどこがよいのでしょうか.しかし小泉首相の諮問機関である総合規制改革会議の結論はアメリカの医療の導入なのです.
 株式会社の医療への参入を政府は考えています.しかし医療を儲けと結びつけるのは大変危険なことです.会社の社員の生活を考えずに,リストラで儲けを追求する株式会社に,患者の痛みが分かるとは思えません.
 日本の医療が世界最高レベルで値段が安いことは,患者さんにとってよいことです.そのいっぽう,医療機関で働く者にとっては,その労働条件は過酷なものです.医療従事者の我慢と努力によって,世界で最高の医療を達成していると自負しています.医療従事者の多くは奉仕の精神を持ちながら医療の世界に入ってきました.ですから劣悪な労働条件でも耐えているのです.
http://www.fukuyama.hiroshima.med.or.jp/iryou/index.html

株式会社病院への批判は正しいか

 

           広島国際大学 岡部陽二先生のHPより 

(4)株式会社病院に対する批判とその妥当性

 わが国で医療や福祉のような社会的規制の強い分野で株式会社の参入が規制されているのは、次のようなわが国独特の論理に基づいているが、それぞれの論拠につき検証してみたい。

 第一は、株式会社は営利を追求するための組織であるため、暴利をむさぼり、質の悪いサービスを提供する惧れがあるとする主張である。しかしながら、このような企業は消費者の支持が得られずに短期的にはともかく、長期的には市場から追放されている。一方、わが国に残存する株式会社病院や米国の上場病院企業の実績はすでに記述のとおり、むしろ患者のニーズを重視した経営をしており、医療の質においても非営利病院に劣るという証拠はまったく見当たらない。そもそも、医療行為の適切性は経営主体の違いとは無関係であって、医療に従事している病院経営者や医師・看護師など個々人の倫理感の問題であろう。

 第二には、株式会社は利益が得られなければ、市場から安易に撤収するという主張である。利益が得られなければ存続できない点は非営利病院も同様であって、株式会社に特有の弱点とは考えられない。逆にわが国に残存する株式会社病院の過半は赤字経営を続けているが、本業からの支援によって生き延びており、資本力のある株式会社は創業期には赤字覚悟で新規分野への進出を試みるケースが多い。

 第三には、株式会社は儲かる分野のみを手掛けて不採算分野は敬遠するため、救命救急部門などが不可欠な医療には適さないという、いわゆるクリーム・スキミング(よいとこどり)の非難である。これはわが国においては、病院全般にそのまま当てはまる非難である。救命救急医療などは採算性の問題もさることながら、公的病院においても定員制や勤務条件などの硬直性がネックとなっているので、これらの点について柔軟に対応できる株式会社病院が手掛けるのに適しているのではないかとの見方もあり、実験してみる価値があろう。

 

http://www.okabe.org/yoji/yoji_docs/021107Hospitalincorporated.htm

 

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  アメリカの自由と比較すると、日本の場合、診療内容に関しては規制が強かったため、公立私立問わずに、保険がカバーされる範囲でのみ医療が進み、それ以外のサービス内容の充実で立ち後れた可能性があります。

 株式会社病院の場合、営利追求が活動する根本理念であるので、その点、消費者のニーズを的確に捉え、そのためには万難を排しても提供する、ただし利益を求める(保険がカバーできなくても必要とする消費者には価格は提示できる)。

 現状の公立病院などは消費者のニーズにはまだまだ応えられていない、しかも提供するのは当局の規制もありその障壁を突破するには事務的な手続きや保険がカバーできない医療には手を出せない(消費者には価格提示も方法についても未提示)現状。

 

 医療の提供される側を考える時期に来ています。保険診療では限界があるのは、集中医療を行っていると感じる時がありました。保険でめいっぱい使っても不足している。しかし日数も制限されており、それ以上は保険のカバーが難しいとなると患者さんの病状にお構いなく治療はストップ。こういうのが今の健康保険の問題。その枠の中では自由、しかしそれを逸脱すると病院は費用を負担するしかありません。

 

 今後、株式会社の病院は自由化されるかは不明ですが、ファンドが購入資金を出すと、その経営に口を出すようになると思います。が、患者さんのニーズがあるところにはものすごく適切なサービスが充実すると思います。ただ、厚生労働省がまた「規制」をかければ、そういう意味では再構築には時間がかかると思います。

 似たような事例で、外資系保険会社が売り出している「がん保険」や「だれでも入れる保険」などと国がやっている「簡保」の間ではまだ自由競争にはなっていません(民営化が完了してませんし)。自由化が進んだ保険の第三分野でも、完全に自由ではないのです。

 

 日本で戦前に作られた株式会社の病院(トヨタや麻生セメントが作りました)は経営の問題などで少しづつ減ってきていますが、今後は新しい経営形態である可能性があるかもしれません。これらの施設は営利目的で作られてはいません(会社員の健康保持が目的だった)が、保険診療でほとんどカバーされているためか、いまだに消費者サイドから「儲けすぎ」とか「悪徳病院」という声は聞いたことはありません。日本での株式会社病院のあり方は今クローズアップされてもいいかと思います。

 

 もっとも、日本で病院ファンドが買収してどういう経営戦略を練るか、さらに行政の指導で大きく変わると思います。単なる「有料老人ホーム」になってしまうのか?それとも最先端医療の粋を集め、国外から患者さんを集めて猛烈に稼ぐような高収益事業に乗り出すか?はっきりまだ見えて来ませんが、医師はその中でも収益の鍵となるため、医師としての業務に専念することが可能となるかと思います。

 


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