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[医療システム崩壊後を考える-2-]病院ファンド設立 [医療]

病院特化の不動産ファンド、札幌のカレスグループが設立

 北海道で7医療機関を運営する病院経営大手のカレスグループ(札幌市)はドイツ証券などと組み、病院が保有する不動産だけを購入する1000億円規模の投資ファンドを設立する。金融機関からの借り入れに頼っている病院に新たな資金調達手段を提供することで、施設の建て替えや高度医療機器の導入を支援。診療報酬引き下げなどで厳しさを増している病院経営の改革を後押しする。

 今秋をメドにファンドの運用会社を設立する。大手商社や不動産会社、エネルギー関連企業などからも出資を募る。ファンドの組成・運用はドイツ証券が担当。2007年にも不動産投資信託(REIT)として上場を目指す。  (日経新聞2006/07/15)

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 いよいよこういうニュースがでてきましたね。外資と組んでがんばる所も出てきました。国内の不動産業界でもそろそろでしょうか(実際、大手財閥系の不動産屋の方とお会いした時に、もうゴルフ場は商売も終わりだし、都心部も値上がり傾向で、土地代が安い所(国)はない?って聞かれました)。

 医師の場合、勤務している所の経営母体が変更になって心配かもしれませんが、収入源である医師の大量解雇は考えにくいです。もっとも医療の方向性が異なってくれば異動を考える必要はありますが。元経済産業省の官僚だった人が今はファンドとかやって、ついでに捕まる時代です、新しい業界へ跳躍する人もいっぱい出るんではないでしょうか?

 

 さて、医療システム崩壊後何がくるか?アメリカでは所得水準によって医療サービスを受ける医療機関が異なるようになりました。大企業などに勤務している人はフルカバーの保険を使って、医療給付はほぼ保険でカバーされる(これがGMが倒産しかけている原因レガシーコスト(退職者に対して、現役社員が医療費を負担する。一人に対して2.5人分、車一台の生産コストに1500ドル)でもあります)。この層は全く心配がありません。

 中流の人はその所得に見合う保険をいくつかの選択肢から選んで加入を義務づけられる可能性があります、今のように公的な健康保険の出番は少なくされると考えます。民間の保険では、おそらく給付の割合が3割なら毎月の掛け金はいくら、1割なら掛け金は1.8倍だとかそういう「自由」が増えるかもしれません。

 一方、所得水準の低い下流の階層の人には従来と同じ公的保険がカバーするが、受診できる医療機関に制限がかかり、費用負担割合は低めになるはずです。ただし、所得が高くなると補助率がさがり、自己負担が増える民間保険に加入を求められるようになるかもしれません。

 

 問題は、これからです。最初に救急車に担ぎ込まれる時に今の保険制度では、どの医療機関にでも受診可能です。ところが、アメリカ型の民間保険の場合、受診できる施設に制限をかけてあります。この制限のため患者さんサイドにとって高い病院(自己負担が多い)にはかかりづらく成る可能性があります。

 また、受けた医療の水準によって医師への技術料が高く請求される可能性はあります。実際に、増えてきている「プライベートクリニック」に近い「○×ハートセンター」というのが最近、あちこちで出来ています(豊橋、三重、草津、はちのへ)。これらは、通常の公立病院なら2泊三日のカテーテル手術やカテーテル検査を日帰りで受けられる、術者の症例数も日本で有数な先生方が手術を行うなどで、高度サービスかつハイレベルな成績を残しています。これらのような専門性の高いクリニックは当然、治療成績は論文として学会で公開されており、患者さんが加入している保険のカバーがなければ、高い技術料とともに、自己負担が高い料金でしか受けられなく成る可能性はあります。ただし、他の公的な病院でも同じような手術は受けられ、こちらは自己負担は低いままです。

 

 現行の医療システムの問題は、「技術料が安い」点です。(医療技術やサービスが高くても同じ料金…はさすがに問題が出てきています)、そしてフリーアクセスが良い面もあるが逆にいうと夜間にかかった方が時間の節約になると言わんばかりに昼間からの発病なのに夜中に救急車で乗り付ける患者さんの激増などで医療側にとって負担が高くなっている点があげられます。

 これについて言えば、新しい制度のもとでは、高い技術水準については加算され、請求がなされたり、夜間の場合今よりもさらに深夜加算の割り増しが増えるなどがされる可能性はあります。

☆高齢者世帯の年間所得の分布

http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2004/zenbun/html/G1221200.htmlより

 所得水準のばらつきを見て頂くとおわかりのように高齢者世帯の場合、所得の平均値も低い上に患者さんの高齢者の層は偏っています。年収1000万円以上の患者さんが受けたいサービス(特定の術者を指定したい、土曜日曜夜間問わず専門医の高度医療を希望したい)と自ずと異なってくるので、この層については公的保険がしっかりカバーする必要があると思います。

 そして、年収が1000万円を超える層については元来、健康的生活を送ることが可能です。民間保険を自分の意志で選べるというのもいいかと思います(もちろん価格もサービスも自由)。

 今の健康保険制度ですと「病気にならないのに払わされる」という誤った思いが出てきます。年収が高い人でも病気になったら困るので加入は必須。ただし、この層の方たちはもともと貯金や不労所得のある層でもあり、入院=失業につながりにくい(そもそも会社が病気を理由に解雇は肉体労働系以外は難しいのもありますが)ため、何かあっても大丈夫という特性があります。

 

 今後、色んな意見が出てくると思います。問題は「受ける側」も不満だが、提供サイドも不満をかかえている制度の代わりを短時間で移行できるように、行政もバックアップしてくれないと取りこぼしが出る可能性があるということ。

 

 現行の健康保険制度でおいしい思いをしてきた一部の私立病院の経営者層(日本医師会のお偉い方もここに入ってきませんか?)や厚生労働省の官僚は、市場から退場させられます。これは仕方ないのではないでしょうか?大手の病院チェーンは病院を買収したり、医療コストを引き下げる努力をして来たのですが、外資の攻勢に打ち勝つのは大変です。この春の改訂で利益がすべて吹っ飛んだという私立病院の院長先生は生き残りのため必死にがんばっていました。しかし経営努力を助けるべく働いている事務長さんは年収800万程度、本当にがんばれるでしょうか?(銀行からの派遣で来る人もいるでしょうがそれは自分の貸したお金が返してもらうためですが)。

 代わりに来るのが外資系ファンドが連れてくる経営のプロ達です。彼らは収益構造の見直しと医療サービスの特化を進め、日本の医療機関の収益性を引き上げることになると思います(望むと望まないと関係なく、収益が上がると見込んで彼らは経営資源を投入し、資金を回収できるように力入れるはずです)。医師は?大丈夫でしょう、技量があれば、必ず食べて行ける筈です。病院はなくなりません、経営にタッチさせられる頻度は低くなるし、技術が高くて収益の源である医師の給与は今より増えるでしょう(発給では働かない!…「開業」(ベンチャー起業)という選択肢もありますw)

 そして医療システムの再構築が終わった時、病院ファンドは悠然と市場に病院を売り渡して、大量の現金をもらって海外に戻っていくのではないでしょうか?

 

 これは消費者である患者さんにとってはいいことなのですが、公共福祉の視点からみると、患者さんが受けられる医療を制限されること、これにつながらないように願っています。

-------7/17日経新聞より------------ 

整理回収機構の元幹部、病院・介護施設を支援

 整理回収機構の元幹部として多くの企業再生を手掛けた弁護士の住田昌弘氏が、国内の病院や介護施設の経営支援に乗り出す。設立した会社が病院再生に実績のあるファンドと連携し、債権の買い取りや保有不動産の購入を通して財務の健全化を助けるほか、施設の運営管理も指南する。ファンドを通じた投資金額は最大500億円にのぼる見通しだ。

 このほど医療機関を支援する「インディペンデンス・ヘルスケア」(東京・千代田)を設立。病院再生を数多く手掛ける投資会社、エイ・アイ・ピー・ジャパンも経営に参加し、専用ファンドを用意した。同ファンドは国内外の投資家から資金を集め、400億―500億円を投資する計画だ。 (07:01)


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