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医師過労死と産科医不足 [産科医療]

 「なくそう!医師の過労死」
2007/11/15   キャリアブレイン

 過重労働による医師の過労死が深刻な問題となる中、過労死弁護団全国連絡会議(代表幹事・松丸正弁護士)は11月14日夜、東京都千代田区の中央大学駿河台記念館で「なくそう!医師の過労死」と題したシンポジウムを開催した。小児科医や産科医また弁護士らが労働基準法“違反”の医師の過酷な勤務実態を告発。過労死した医師の遺族らも医師の労働の在り方について思いを語った。約130人の参加者は、「医師のためだけでなく、国民が安心で安全な医療を受けられるためにも医療現場の環境改善が不可欠」と確認した。

 過酷な勤務状況による勤務医の過労死・過労自殺が深刻な社会問題となっている。同連絡会議の集約では、過労死・過労自殺をめぐる労災認定や労災補償の事例はこれまで全国で22件。そのうち7件が今年に集中している。
 厚生労働省の「医師需給に係る医師の勤務状況調査」によると、病院などの医療機関の勤務医の1週間当たりの勤務時間は平均で63.3時間。同連絡会議は、「この時間は、厚労省の『脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準』において業務と発症との強い関連性を示す、1カ月当たり約100時間の時間外労働に相当する」と指摘。医師の過労死が今後も起こり得る現状の改善を目指し、シンポジウムを開いた。

 第1部では、専門家4人がそれぞれの立場から講演。
 昭和大学の主任教授で産婦人科医の岡井崇氏は、同科の医師の92.5%が当直翌日の勤務を行っている調査結果を示すなど、医師不足による同科の過酷な勤務実態を報告。「過重労働が“医療の質の低下”“事故の発生”“訴訟”“医師不足”となる悪循環を引き起こしている」と話し、被害者を補償して訴訟を抑える「無過失補償制度」の導入を求めた。

 ちばこどもクリニックの院長・千葉康之氏は、10カ所の病院で小児科の勤務医を務めた経験から、医師の宿日直とその問題点に言及。厚労省が宿日直を「ほとんど労働する必要のない勤務」などと規定していることに対して、「実際は通常勤務より何倍も負担がかかる」と指摘し、「40時間の連続勤務が常態化している」と打ち明けた。千葉氏は、「働いたら休むという当たり前のことがなぜ許されないのか」と問題提起。「患者の安全と医師の健康のために労働環境の改善が不可欠」と訴えた。

 医療問題に取り組むジャーナリストの塚田真紀子氏は、「医師が過酷な勤務を“辛い”と言えない古い考えをなくすべき」と発言。また、患者の視点で、「軽症であっても容易に受診してしまう国民の意識も変えていく必要がある」と呼びかけた。

 そして、医師の過労死をめぐる複数の裁判を担当する松丸正氏は、過重労働を許し、労災認定もなされにくい現状について解説した。背景には、勤務医の労働時間を把握するシステムがそもそもないこと▽労働基準法第36条に基づく時間外及び休日労働に関する協定(36協定)が適切に届けられてないこと▽サービス残業が常態化し勤務に歯止めがかからないこと▽宿日直に対する認識が現場と裁判所で食い違っていること―の4つがあると強調。松丸氏は、「労基法の重要性を訴え続け、勤務医の労働環境の改善に向けた取り組みを行っていきたい」と話した。

遺族らも環境改善訴え
 
第2部では過重労働によって命を断たれた医師の遺族が意見を述べた。
 1995年に過労死し、2年かかって労災認定された山梨県の産婦人科医の妻は、「医療現場は、改善に向かうどころかさらにひどくなっている」と指摘。「医師の人間らしい生活を保障していくことが、患者さんの安全を守ることにつながる。いろいろなところで声を上げていき、医師をはじめ労働者の労働環境を改善していきたい」と話した。

 また、99年に過労自殺した小児科医の妻・中原のり子さんも発言。中原さんは今年の行政裁判で勝訴し、現在勤務先を相手取った民事裁判の控訴審で係争している。
 この日、同連絡会議とともに厚労省に対して申し入れを行い、その席で小児科医の労働環境を改善する要請書とそれに同意する22,314筆に上る署名を厚労相あてに提出したことを報告。これに加え、医師の時間外勤務の適正な評価とそれに基づく就労環境・法制度の改善▽医師の供給システム側からのアプローチ、特に「地域で医師を育てる取り組み」の重要視▽受療者の行動変容、とくに時間外のコンビニ受診の改善―の3点も要求。中原さんは「一人でも多くの国民の声を発信し、過労死や過労自殺が起こらないような施策を行政に求めていき
たい」として、今後の活動への意欲を示した。

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産科医は「ツライから嫌」 横浜市大生が調査

産経イザ 2007/11/15

 医学部の学生で過去に産婦人科医を志したことのある人は全体の29%いるにもかかわらず、現在第1志望にしている学生は全体の4%、第3志望まで含めても14%にとどまり、多くは「勤務実態」や「訴訟リスク」を理由に挫折していることが15日、横浜市立大の医学部学生が実施した調査で分かった。

 志望しない人が「産婦人科医になってもいい条件」として挙げたのは「適正な当直回数」や「刑事責任に問われない」が多く、医療を取り巻く厳しい環境が学生の進路希望にも影響し、産科医不足に拍車が掛かる状況が浮き彫りになった。

 調査は同学部医学科1~6年の361人を対象に実施し、応じた307人(回答率85%)と他大学13人の計320人の回答を分析した。

 産婦人科を目指したことがあるとしたのは1年20%、2年18%、3年25%、4年37%、5年32%、6年47%と学年が上がるほど高率。理由として「命の誕生という感動にかかわることができる」「時代や国を問わず必要とされる」などが挙がり、6年は「実習で楽しかった」も目立った。

 しかし、一度は産科医を志望した学生の約半数が進路を変更。その理由として勤務実態(当直回数、勤務時間、育児との両立困難)や訴訟リスクが高いことが挙がった。

 調査結果は、17日に同学部で開かれるシンポジウム「STOP the 妊婦たらい回し」で発表される。シンポジウムでは、結果を基に、学生が現場の医師らと意見交換。産科医不足を実感したことがあるかなどについて、妊産婦約100人に実施した調査結果も発表する。

 企画した医学科3年の武部貴則さん(20)は「問題の改善には、医師や行政だけでなく市民にも果たす責任がある。患者と医師の間に立つ学生の考えを伝え、医師不足などについて考え直すきっかけになれば」と話す。
 シンポは同大福浦キャンパス(同市金沢区)で午後3~6時。入場無料。

     ◇   
 
 産科医不足 深夜・長時間労働や分娩(ぶんべん)事故に伴う訴訟リスク、子育てによる女性医師の休職などを背景に産科医が減少。平成18年2月に、福島県警が帝王切開した妊婦の死亡をめぐり県立大野病院の産科医を業務上過失致死容疑などで逮捕したことも影響しているとされる。各地で妊婦の救急搬送先が見つからない事例も相次ぎ、背景に産科医不足が指摘された。国は分娩事故で医師に過失がなくても補償金を支払う「無過失補償制度」の創設や、中核病院への集約化による地域医療ネットワークづくりなどの対策を進めている。

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産める病院、地方では医師一人の確保に懸命

首都圏では妊婦集中、近県ヘリ搬送
読売新聞 2007/11/15

 地方都市では、地域の産科医療の存亡が、わずか1人の医師を確保できるかどうかにかかっていた。首都圏では、中核病院に妊産婦が集中する。お産を扱う病院が次々と姿を消し、窮地に立つ産科医療の現場を追った。(山下昌一)

 「地元で出産できてよかった」。和歌山県新宮市立医療センターで今夏、長女を出産した女性(32)は安堵(あんど)の声を漏らした。地域の中核病院で、年400件の出産を扱う同センターの産婦人科医はわずか2人。そのうちの1人が奈良県立医大に引き揚げられることになり、病院側は10月から出産の取り扱いを中止すると発表していた。

 中止となれば、車で1時間半以上かかる病院に搬送しなければならない。新宮市は、大学病院などに医師派遣を要請したが後任が見つからず、国が医師をあっせんする制度に申請。大分市で開業していた中尾愃仁(けんじ)医師(62)の派遣が決まり、お産の中止を免れた。

 9月から単身赴任した中尾医師は、診察した妊婦に「(出産予定の)来年もやってますか」と何度も尋ねられ、半年の期限後も病院に残る決意を固めた。

 江川忠雄収入役(59)は「都市部に医師が集中している。地域格差がはっきり出てきた」。

 だが、都市部でも深刻な事態が起きている。

 「神奈川からの妊婦も受け入れています」。千葉県鴨川市の亀田総合病院で、鈴木真・産科部長(44)はそう話す。ハイリスクの出産を引き受ける同病院では2005年4月以降、ヘリコプターによる妊婦の救急搬送が43件もあった。このうち18件は、神奈川など県外の患者。20か所以上の病院に断られた末に搬送されて来るケースも。

 現場の負担は重い。先月中旬、同病院の上田恭子医師(28)は午前7時過ぎに診察を始めた。当直明けで仮眠は1時間。「早産や帝王切開などハイリスクのお産が4件あった。もう日付の感覚がない」。当直は月6~8回、休みは1、2日。「こんな勤務では仕事を続けられるか不安」と訴えた。

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 「産科崩壊」と「医師の過労死」。両方とも根っこは同じです。まともな労働環境を行政が放置しているからです。医師や看護師のぎりぎりの努力で維持されているこの国の医療。今後、どうやって医療を維持するのか?きちんと「解決策」を考えださないと行けませんが、はたして厚生労働省にはいいアイデアでもあるのでしょうか?
 そうそう、この前、浜松の大きな病院の小児科医の先生にお会いしましたが、浜松のこの病院では、首都圏から妊婦さんの搬送の引き受けをしているそうです。逆にいうと、ここが引き受けてくれないと、妊婦さんは愛知県に搬送ということになります。またER広尾の産科医の先生も「福島や静岡からも電話が来るけどこっちにも余裕がないの」ってました。まさに崩壊寸前です。

 「奈良県で妊婦のたらい回し事件」といって医療サイドを悪しざまに報道し続けたマスコミ。今ごろになって、この流れを押し止められるでしょうか?僕は、あんまり楽観視はしていません。ぎりぎりの状況は何かがあると一気に崩壊します。綱渡りが続いているけど、その余裕はゼロです。困ったことに産科医は次から次へとできません。もうそこまで来ている「非常事態」。さて、国には備えはあるんでしょうか?

ぽち

  なかのひと 



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[妊婦救急問題]マスコミ報道の改善には程遠い [産科医療]

 いずれにせよ、「受け入れ不可能」という現状を考えて欲しいのは、問題の根底には、「医療従事者」の数やキャパシティの問題があります。
 
 簡単に言えば「周産期救急医療が政府の怠慢のせいで崩壊しかけ」ているのです。日本では「不幸な目に遭った患者さんばかりを気の毒だという一方、過労死寸前の状態で働き続けている産科医を何かあると一斉に非難するマスコミ」があります、そのために日本中でお産の引き受け手がいなくなっています。それにつられてテレビやブログで「けしからん」という自分勝手な論理を展開する人が多い。問題の深刻さはここにあります。

 現場を理解しないまま「非難」するのは自由だが、結局、それが「離職」という形でマイナス効果が出ています。

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憂楽帳:医師不足の裏に 
毎日新聞 2007年10月25日 12時20分

 以前、取材に応じてくれた女性産科医(38)が、常勤職をやめた。非常勤の今は、泊まりも、休みがつぶれることも、ない。「未練はあるけど、限界でした」

 それまでは、朝8時から深夜まで働きづめ。月6回の宿直をこなし、週に1度は深夜に呼び出された。疲労が抜けないまま、メスを手にすることが怖かった。それでも彼女は、「きついだけならまだ頑張れた」と漏らす。

 患者に「おめでとう」と言ってあげられるのは産科だけ--そう思って志した。しかし、そこには「うまくいって当然」という誤解も生まれる。04年、産科医が裁判に訴えられた件数(医師1000人当たり)は11.8件。他の診療科に比べ、群を抜く。

 「医療ミスでしょ」「訴えるから」。リスクの高い高齢初産などの増加につれ、心ない言葉を吐かれることが増えた。患者と心を通わせにくくなったのが、最もこたえたという。

 「日本人は変わっちゃったんでしょうか」

 最後に、ポツリと言った。【吉田啓志】
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 悪いけど、毎日新聞のこの記者、もっと現実を知ろうよ。月に6回の当直で「労働基準法違反」だし、週1度くらい呼び出しなんて現場じゃもっとひどいという話もあります。

 しかも毎日新聞は、去年の奈良県大淀町立病院で、亡くなった患者さんを巡って明らかに「偏向報道」や「誤報を垂れ流し」といて、これはないよな・・・と思う。

 バランス感覚がまったくない>マスコミ各社。「たらい回し」だという見出しで誤報を伝えて、世論を操作しておいて、産科医のやる気をそいで、この記事はない。


 引き受けが困難だったのは、
東京185件を筆頭に神奈川県、大阪府でも多い・・・大都市でおきているんですけどね。「マスコミ」は報道するだけしておいて、何も解決になっていなません。3回以上断られたケースが670件という数がゼロになるように・・・願っていますが、今のやり方ではたぶんもっと増える。犠牲者を生んだのは「政府」のやり方がいかにまずかったか・・・それは今の「C型慢性肝炎の問題」とよく似ています。責任官庁が責任を取ってないからですが。
ぽち

  なかのひと 


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妊婦搬送全国調査 受け入れ拒否は最多の26回

「医師不在」「満床」切迫流産も

読売新聞2007/10/26

 「別の妊婦に対応中」「ベッドが満床」「医師不在」――。速やかに対応してもらえると信じて119番通報したにもかかわらず、いつまでたっても搬送先が決まらない。各地で起きている妊婦の「たらい回し」の実態が明らかになった総務省消防庁などの調査。救急搬送の現場からは、いらだちと不安を募らせる声が高まっている。

 千葉県八千代市では昨年5月、かかりつけ医のいない妊娠7か月の26歳の女性が14病院に計15回受け入れを断られた。近隣の病院に搬送されるまでに、通報から約2時間半が経過。女性は切迫流産となった。「医師がいない」「ベッドが満床」「新生児集中治療室(NICU)がない」などが理由で、同市消防本部では「あんなに受け入れ要請を繰り返したことは、ここ数年なかった」と話す。

 福岡県では昨年夏、水巻町の30歳代の妊婦が13回、苅田町で31歳が10回、医療機関への受け入れを拒否された。このうち水巻町では、町内や隣接する北九州市の病院に「かかりつけではない」との理由で断られ、女性はその間に破水した。県消防防災安全課では「たらい回し事案がどんな時に起きるのか分析中だが、消防としては病院に頼み込むしかないのが現状だ」という。

 大阪市でも昨年7月、30歳代の妊婦が「満床」などを理由に19病院で受け入れを断られた。女性は救急車で待機していたが、陣痛が激しくなり、自宅で出産。その後、受け入れ先が見つかったが、救急要請から約2時間15分かかっていた。

 東京消防庁によると、拒否された回数が最も多かったのは26回で、病院に収容されるまでに3時間37分もかかった。現場の救急隊と指令室の双方から照会を行うため、照会回数が多くなる傾向にあるというが、同庁救急管理課は、搬送に長時間かかっているケースもあることから、「各事例を分析し、今後、改善していく必要がある」としている。

 札幌市で昨年、5回以上、病院から受け入れを断られた妊婦は5人。市消防局救急課は「受診歴のない妊婦は救急隊が受け入れ先を探すことになり、時間もかかってしまう」と、早期の受診を勧めている。

(2007年10月26日 読売新聞)

妊婦搬送 受け入れ態勢が不備
NHK 2007/10/26

 この調査は、ことし8月、奈良県で救急車を呼んだ女性が医療機関に相次いで受け入れを断られて死産した問題を受け、総務省消防庁と厚生労働省が初めて行いました。それによりますと、妊娠中の女性を救急車で運ぶ際に医療機関から3回以上受け入れを断られたケースが去年1年間に全国で667件に上り、このうち5回以上が220件、10回以上も45件ありました。3回以上断られたケースを都道府県別に見ますと、東京都が185件、神奈川県が154件、大阪府が76件、千葉県が36件、兵庫県が31件と、東京・大阪とその周辺の大都市部で多くなっています

 また、救急隊が到着してから受け入れ先が見つかるまでに30分以上かかったケースは1012件、1時間以上かかったケースも105件ありました。受け入れを断った理由では、医師や医療設備の不足で「処置困難」が27%と最も多く、「手術や患者の対応中」が17%、「ベッドが満床」が11%などと、医師不足などが原因で受け入れ態勢が整っていないことが明らかになりました。

 一方で、10回以上受け入れを断られたケースでは妊娠後も産婦人科を受診していない人が目立ち、掛かりつけ医のいない妊婦を医療機関側が避ける傾向を示しています。総務省と厚生労働省は、今回の調査結果を基に、受け入れ態勢の整備や効果的な救急搬送の方法について検討を急ぐことにしています。

 舛添厚生労働大臣は、閣議のあとの記者会見で「たらい回しの回数がもっと多いケースがあるかと思っていたので、若干ほっとしている。しかし、急きょ帝王切開が必要になり、大きな病院に搬送する場合、受け入れを断られることもあるので、こういうことを含めて大きな改善をしたい」と述べました。


拒否10回以上45件 妊婦救急搬送実態調査
産経新聞 2007/10/26


 平成18年に妊婦の救急搬送で、医療機関から受け入れを10回以上断られたのが45件あることが26日、総務省消防庁と厚生労働省が全国の消防本部を対象に実施した妊婦の救急搬送の実態調査結果で明らかになった。

 調査は奈良県で救急搬送中の妊婦を受け入れる医療機関が見つからず、死産した問題を受け、16~18年の3年間について実施された。

 結果によると18年中の搬送された妊婦は約3万9000人。医療機関へ照会した件数のうち9割以上は最初の連絡で受け入れ先が決まっているが、3回以上断られたケースは667件(全体の1.9%)あり、うち5回以上が220件、10回以上が45件あった。

 未集計の消防本部も多く、実際の拒否件数はさらに増えるとみられる。

 地域別の傾向をみると、首都圏や近畿圏、政令指定都市など都市部で受け入れを断られるケースが多く、地方部では少なかった。また、医療機関への受け入れの照会、連絡回数が多くなるケースが増加傾向にあることもわかった。

 受け入れ先が見つからず現場に留まった時間は、30分以上60分未満が907件、60分以上90分未満が84件、90分以上が21件となっている。

 最も拒否が多かったのは東京の留置場に拘置中の妊婦で、27回目で受け入れられ、医療機関収容まで217分もかかった。

 受け入れを断った理由については、「処置困難」(1306件)が最も多く、続いて「手術・患者対応中」(842件)▽「専門外」(572件)▽「ベッド満床」(513件)▽「医師不在」(342件)▽「初診(妊婦のかかりつけ医がいない)」(148件)-など。

 結果をうけ、消防庁は同日、全国の消防機関に対し、医療機関との連絡には救急救命士などの有資格者があたることや救急隊と指令センターが連携して受け入れ照会をすることなどを通知した。


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[加速する産科医療の衰退]霞ヶ関や県庁には問題意識がないようです [産科医療]

 細る産科医、妊婦のリスクどう管理? 京都で考える集会

2006年07月18日朝日新聞

 医師不足から病院の産科が閉鎖に追い込まれている状況について、妊産婦や医療者が話し合う「どうする? 日本のお産」の京都大会が16日、京都市伏見区の京都医療センター付属看護助産学校であった。今年4月に分娩(ぶんべん)を休止した京都府舞鶴市の国立病院機構舞鶴医療センターの助産師らが、地域の母親や助産師ら142人を前に、府北部のお産の現状について報告した。

 舞鶴医療センターは府の地域周産期母子医療センターで、新生児集中治療室(NICU)6床を持つが、産科医3人全員が相次いで退職し、分娩の取り扱いをやめた。同市内では03年8月に舞鶴市民病院が産科を休診している。地域の年間分娩数約900件は舞鶴共済病院と二つの診療所にのしかかった。残った産科医の負担を減らそうと、舞鶴医療センターの助産師8人が、助産師外来で妊婦健診を請け負い、5月から産後2日目以降の産褥(さんじょく)入院も受け入れている。同センター病棟師長の吉田美和子助産師は「助産師たちは研修を積み、自力でお産が扱える体制が整いつつある。近隣の病院に嘱託医や連携医療機関になってもらい、院内助産所を早く開設したい」と話す。

 同センターの小児科は救急車で出産した病院まで新生児を迎えに行く「出前NICU」に取り組んでいるが、赤ちゃんに負担が大きく、危険度が高いため、妊娠27週以前の早産は、原則として、出産前の母体を京都市内の病院まで搬送している。だが、見舞いに片道2時間かかるなど、妊婦の家族の負担は大きい。

 同府綾部市の塩尻佳代さん(43)は97年に生まれた次男が1236グラムの未熟児だった。「舞鶴医療センターが近くにあったから、今、元気な子どもの姿が見られる。田舎だからこんな医療でいいと思わずに、行政や医療関係者は意識を高く持って、私たちを助けてください」と訴えた。

 今年4月、娩を休止した京丹後市立弥栄(やさか)病院。同市内のお産年500件を分け合ってきた丹後ふるさと病院には、産み場所を求める妊婦が殺到した。産科医1人、助産師5人の体制では受けきれず、分娩予約を月20件に制限している。府は弥栄病院に府立医大、京都第1、第2赤十字病院から6人の産科医を交代で派遣し、10月から分娩を再開すると発表した。だが、非常勤のため、対象は正常産が見込める経産婦のみだ。ふるさと病院の中谷朱美助産師は「リスクの高い初産婦や高齢出産は遠方の病院へ行けという本末転倒が起きている。行政は補助金をつけてでも、へき地に医師を確保してほしい」と話した。

 会場の女性からは「ハイリスクの妊婦を救うため、ヘリコプター搬送のネットワークを充実させてほしい」などの提案があった。

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 患者さんサイドの要望は、自分の所で安心して産みたいという希望だが、集約化の前にそれは願うべくもないような…過労死になるまで産科医が放置されて、それでお産を安全でというのは結構、難しい要望だ。ましてリスクの高いお産を医師が少ない地域で引き受けさせて、万が一のことがあれば、福島の二の舞ではないかという懸念がある。

 補助金を付けてでもというが、紀伊半島の南で産科の開業医をリクルートして年俸に5800万円も払っただけでマスコミが騒ぐワケで、どう考えても難しい。

 それよりもきちんと人口割り当てで配分していく、複数の施設の統合による安全の確保が今は一番大切だと思うのですが…アクセスを確保すれば、結局は産科の撤退が加速するという現状はどうも見過ごされているような気がしてなりません。マスコミはその場にいた意見だけをまとめるのではなく、実情を知っている筈だ。どうして産科医が減っているのか?現状、どういった施策があるのか?単に現場の意見を垂れ流すのはいかがかと思われる。

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22道府県「把握せず」…厚労省調査

 小児科や産科の医師不足が全国各地で問題となっているにもかかわらず、両科の医師数など、基本的データの実態把握が進んでいない都道府県が半数近くに上っていることが、厚生労働省の調査でわかった。

 同省は昨年12月、小児科医と産科医の確保が困難な地域について、中心となる病院に医師を集中させ、24時間体制の小児救急医療などを実現させる「集約化、重点化」の方針を打ち出した。その実施の必要性について、都道府県ごとに今年度中に検討するよう求めており、調査は、今年4月25日現在で、その進展度合いをたずねたもの。

 小児科と産科のある病院と、そこに配置されている小児科医、産科医の数について把握状況を聞いたところ、「既に把握している」が22都県、「小児科のみ把握」が3県だったのに対し、22道府県は「今後把握する予定」「把握していない」だった。

 また、集約化、重点化の必要性の検討を既に始めていたのは、静岡、三重など7県のみ。今後の検討スケジュールが決まっていたのも、奈良、千葉など19府県にとどまり、出足の鈍さが目立った。

 その一方で、同省に対する意見、要望としては、「集約化、重点化に協力する医療機関に対する財政的支援が必要」「小児科医、産科医の育成、確保は全国的な課題であり、国が実効性のある施策を始めるべきだ」などの声が多く、自治体の自助努力に頼る厚労省への不満もにじみでていた。

2006年7月17日  読売新聞)

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 地方も危機感が薄ければ、霞ヶ関も薄い。役人はしょせん数字合わせが得意なだけで、医師が将来間に合うからいいのだと述べる。危機感がなければ、当然対策は遅れる。役所としてはもっと遅れて、「医師が怠慢」だと世論を焚き付けたいのか?

 

お産ができない
人口8万人の管内 産婦人科ゼロの危機(北海道・浦河町)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-07-19/2006071903_01_0.html


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[産科空白地帯]兵庫県内に12市町 [産科医療]

産科空白地帯 県内に12市町

(神戸新聞2006/07/04)

兵庫県内の十二市町が、実際に出産できる病院・診療所がない空白地帯となっていることが三日、神戸新聞社の調べで分かった。うち四市町は市町立病院での再開や開設を検討するが、医師不足のため困難な状況だ。大半の市町が小児救急の体制維持、整備などの課題を抱えており、安心して子どもを産み育てるための基盤が揺らいでいる。

 県内の全四十一市町に、出産できる病院・診療所の有無▽産科充実の対策▽産科や小児救急の不足-など子どもを取り巻く医療の現状や課題を尋ねた。

 それによると、出産施設の空白地は相生、たつの、加西、朝来、淡路、加東市、猪名川、播磨、市川、佐用、香美、新温泉町。市町立病院での再開を目指すのは、加美、新温泉町。市町立病院での再開を目指すのは、加西、加東市と香美町で、たつの市は開設を検討している。

 加西市立加西病院は、医師二人がほかの病院に移ったため、今年六月から分(ぶん)娩(べん)の取り扱いを休止した。存続を求める約二万人分の署名が出され、病院側は神戸大などに医師派遣を依頼するなどしたが、確保できないまま。同市の出生数は年間四百人以上あり、不安の声が上がる。

 香美町立の公立香住総合病院も、二〇〇五年三月で分娩を休止。町民は近隣自治体で出産せざるを得ないが、同町は「病院まで時間がかかり、妊婦や家族は心配を抱える。雪が積もればさらに負担が大きい」と話す。

 たつの市は、合併に伴い誕生した市立御津病院を一一年に建て替える計画。産科開設の方向で検討するが、医師確保が難題という。

 ただ、地域によって事情は異なり、空白地帯でも、播磨町は、町域が狭く、近隣市に病院や診療所があるため、問題は生じていないという。

 子どもを取り巻く医療では、全体の七割にあたる三十一市町が、産科・小児科の医師不足、夜間や休日の小児救急体制の整備・維持を課題に挙げた。

 医師不足は全国的な課題で、都市部でも深刻。「小児科医の減少や新人医師が小児科を敬遠するため、二十四時間の救急体制の維持が難しくなっている」(姫路市)「休日夜間急病診療所の小児科が近い将来維持できない可能性が高い」(尼崎市)などと答えた。

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 産科崩壊は福岡にも波及するかもしれませんが、その前に大都市周辺でも徐々にじわりじわり…。まったく、こういうニュースのネタには欠かない始末。

 少子化対策大臣はぜんぜん動かないし、まったく仕方ないなぁ。


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