[司法までもがアメリカ型医療を歓迎?]混合診療導入へ? [医療行政]
日本経済新聞 2007/11/07
がん治療で保険対象外の免疫療法を併用する混合診療を受けた男性が、本来は保険がきく治療まで適用を認めず自己負担とするのは違法として、国に保険適用を求めた訴訟の判決で、東京地裁(定塚誠裁判長)は7日、「国の法解釈は誤り」と指摘し、男性の請求を認めた。
厚生労働省は保険診療と保険外診療(自由診療)を併用する混合診療を原則禁止。患者の負担軽減のため混合診療の解禁を求める意見の一方、医療の安全性確保などの側面から弊害を指摘する声も根強く、判決はこうした議論や医療現場に大きな影響を与えそうだ。
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厚労省 「混合診療」国の敗訴で保険局長談
YakujiNews-Net Day 2007/11/07
厚生労働省は11月7日、東京地裁が「混合診療」で、保険診療部分も含めた全額自己負担は不当とする判決を下したことを踏まえ、「健康保険受給権確認請求事件判決を受けて」とする保険局長談話を発出。「厳しい判決」との考えを示した。
同判決は、原告であるがん患者が、インターフェロン投与等の保険医療と、非保険医療(自由診療)とされている活性化自己球リンパ療法を併用した際、保険診療部分の受給権があることを主張し、国を相手に訴訟を起こしていたことを受けてのもの。判決を受けての談話では「いわゆる『混合診療』の取り扱いに関する目的の合理性と制度の妥当性」についての主張が認められない「厳しい判決」とコメントしている。また今後の方針については、「判決の内容を検討し、関係機関と協議の上、速やかに決定したい」とした。
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遠からず、我々の医療制度は変貌を遂げそうです、お隣の中国でも15年前くらいまでは、全部、無料だったのが、今や救急車から点滴一本にわたるまで全て「お金」が必要となり、大変な事態になっています。
僕は慎重にやっていこうとする「医師会」の考えに基本的には賛成です。しかも今回の訴訟については「免疫療法」。おそらく、末期の患者さんや家族が一縷の望みを託して「受けたい」ということでしょうが、あいにく、保険が通らないのは理由があります。
きちんとした「効く」という証拠がはっきりしないからです。「○×には効いた」とかあたかも神仏への信仰かと思うくらい、まだ医学的には立証が完全になされていません。しかも高額で、お金持ちにしか選べない治療です。最先端か?というと「治療効果に疑問」がある実験的な治療です。保険が承認されないのはある意味正しいのです。
ちなみに、今週はアメリカでAHAといって世界中の循環器疾患(心臓や血管の病気)について最新の研究結果が次々と発表されていますが、日本では「これ保険通ってるよ!」ってのが通っていないのがアメリカだったりします。
最新技術:冠動脈造影CTはアメリカで保険が利きません
きっと「シッコ」のような医療を臨んではいないと日本の国民のみなさんは思っているでしょうが、規制緩和を求める民間会社の社長さんとかが「医療で金儲けして何が悪い」とか「病人を食い物」にしているなんてことを考えているとは、よもや思いますまい。もちろん、よい医療サービスを選べるのは良いことですよ。でも、お金がある人にしか「選べない世界」って残酷じゃありませんかね?
規制改革会議メンバー
議長 草刈 隆郎 日本郵船株式会社代表取締役会長
議長代理 八田 達夫 政策研究大学院大学学長
委員 有富 慶二 ヤマトホールディングス株式会社取締役会長
安念 潤司 成蹊大学法科大学院教授
翁 百合 株式会社日本総合研究所理事
小田原 榮 東京都八王子市教育委員長
川上 康男 株式会社長府製作所取締役社長
木場 弘子 キャスター・千葉大学特命教授
白石 真澄 関西大学政策創造学部教授
中条 潮 慶応義塾大学商学部教授
福井 秀夫 政策研究大学院大学教授
本田 桂子 マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパン プリンシパル
松井 道夫 松井証券株式会社代表取締役社長
松本 洋 アドベントインターナショナル日本代表兼マネジングパートナー
米田 雅子 慶應義塾大学理工学部教授 NPO法人建築技術支援協会常務理事
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この中には、医療関係者はゼロです。この人たちが本当に、患者さんのためを思っているのか?本当に疑問です。ぽち→
医療従事者のストライキ:非常時には手段となりうる [医療行政]
↓座位の夢想 2007/11/01
国が医師の善意を裏切るのならば、我々は闘う。
↓新小児科医のつぶやき2007/11/02
合理化の前に合法化を
こんなことを言うと「医者を甘やかすな」とか言う人もいますが、当直などで毎週のように病院に泊まり込みをしても、代休は一切もらえません。そういう宿命なのかと思えというかもしれませんが、労働基準法すら守らない前近代的な職場に「希望」を見出せずに、医学部を出て、金融関係に行ってしまう先生もいます。
税金がかかっているのに・・・というかもしれませんが、東京大学を優秀な成績で入学した人が「激務」でありながら、叩かれてばかりの霞ヶ関を見捨てるのと同じですよ>これは。
さてと、ストライキですが、こんなニュースもあります。
アメリカ:看護師のストライキへ突入
オーストラリア:看護師のストライキで病棟閉鎖が深刻化
イギリス:医療従事者のデモがロンドン市内を行進
フィンランド:賃金交渉で看護師が一斉に退職?
こんな具合で、海外でも医療従事者たちが「医療費削減」や「過重労働」に抗議する動きはあります。日本のマスコミは無視していますけどね。ぽち→
↓この「霞ヶ関大本営発表」の記事、医師の高給といっても、開業医でも高給取りは一部だと思いますがね・・・きっと官僚が上手にリークしているのです(裏をとらないで垂れ流すだけのマスコミの仕事って、楽ですね☆)
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財務省 医師の「高給」にメス
診療報酬下げ要求 歳出増圧力に危機感
読売新聞2007/11/06
財務省が5日の財政制度等審議会で、2008年度の診療報酬引き下げを求める方針を示したのは、高齢化などで増え続ける社会保障費に歯止めをかけるには、医師給与の引き下げに手を付けることが避けられないと判断したためだ。
与党が来年4月に予定していた高齢者医療費の負担増の一時凍結を決めるなど、社会保障費に歳出増の圧力が高まっていることへの危機感も反映している。
財務省はこの日の財政審で、診療報酬が1990~2000年度で7回にわたり1・5~5・0%のプラス改定が続き、今に至るまで高止まりしていると指摘した。その原因の一つとして医師給与の高さを挙げた。
例えば、中央社会保険医療協議会(中医協)の今年6月の調査を基に、稼働日数が少ない診療所の開業医が病院勤務医より1・8~2・0倍の給与をもらっていると指摘した。再診料などの診療報酬が病院より診療所で優遇されていることなどが背景にある。
ただ、日本医師会は逆に、「地域医療を支え医療の質を確保する」ために、診療報酬の引き上げを求めている。財務省は、過去の一般物価の下落に比べ、診療報酬の引き下げ幅は小さ過ぎたとして、まずはその解消を求めている。
また、この日の財政審で財務省は、「(中小企業を中心とした)政府管掌健康保険と、大企業の健康保険組合、公務員の共済組合との間で財政調整をすることは、各組合の医療費抑制努力につながる」との認識を示した。政管健保の国庫負担分の一部を健保や共済の拠出で賄う財政調整は、負担増につながる大企業などから「国費の肩代わりだ」として異論が出ているが、財政審では異論はなく、これも建議(意見書)に盛り込まれる方針となった。
[開業医の待遇]イギリスは日本の年収2倍! [医療行政]
夜間延長で診療報酬加算 厚労省が方針
中日新聞 2007年11月3日 朝刊
来年度の診療報酬改定で厚生労働省は二日、開業時間を夜間まで延長した診療所に診療報酬を手厚く加算する方針を固め、中央社会保険医療協議会(中医協)に提案した。地域の開業医に症状が軽い患者の診察を分担してもらって、病院勤務医の負担を軽くする狙い。患者が仕事や学校の帰りに医者にかかりやすくなる利便性向上も見込む。
勤務の過酷さから、地域の拠点病院などで勤務医の退職が相次いだことが「医師不足、地域医療の崩壊につながった」と指摘されており、改定案は勤務医の待遇是正策の一環。
厚労省は「病院は大変。開業医も協力を」としているが、診療所の再診料を引き下げて加算分に回す方針で、日本医師会は反対を表明。調整は難航しそうだ。
厚労省は「午後六-八時」に絞って診療所の開業延長に加算、患者を病院から開業医に誘導する考え。救急搬送を含む病院の夜間外来が、この時間帯で突出して多いのに対し、診療所の大半は夕方で閉める。このため病院が症状の重い患者の診療と同時に軽症患者の対応にも追われ、繁忙化している実態を考慮した。ただし報酬目当ての夜間だけの診療は認めない。
勤務医の負担軽減のため同省はこのほか、産科や小児科などがある総合病院では二十四時間救急や入院医療に傾注できるよう、地域連携体制を整えた上で外来を縮小した場合への加算を提案。
診療データ入力や文書作成など、診療行為以外の煩雑な作業を肩代わりできる事務補助員の病院への配置も、報酬で上乗せする方針を示した。
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開業医、夜間診療の報酬手厚く…厚労省が見直し案
読売新聞 2007/11/02
厚生労働省は2日、2008年度診療報酬改定で、救急病院の医師の負担軽減などを目的に、開業医の夜間など時間外診療の報酬を手厚くする見直し案を中央社会保険医療協議会(中医協)に示した。
時間外の報酬を手厚くする一方、開業医の初診・再診料の引き下げを含めた見直しも提案した。
中医協に示された厚労省案は「救急医療機関の救急外来が、本来の目的と異なり、軽症患者に利用されている」と指摘。軽症患者の増加が、救急病院の勤務医の負担増につながっているとの認識を示した。
同省の調査では、救急病院の軽症患者の約6割が「開いていれば、診療所で受診する」と答えている。厚労省案は、救急の軽症患者の流れを大病院から診療所へと変えることに狙いがある。
また、高度な救急医療を行う病院を維持するために、産科から小児科まで幅広い領域で、重症患者をいつでも受け入れられる中核的な病院への診療報酬を手厚くする考えも示した。
開業医の初・再診料下げ、厚労省が中医協に提案
夜間延長で診療報酬加算 厚労省が方針
中日新聞 2007年11月3日 朝刊
来年度の診療報酬改定で厚生労働省は二日、開業時間を夜間まで延長した診療所に診療報酬を手厚く加算する方針を固め、中央社会保険医療協議会(中医協)に提案した。地域の開業医に症状が軽い患者の診察を分担してもらって、病院勤務医の負担を軽くする狙い。患者が仕事や学校の帰りに医者にかかりやすくなる利便性向上も見込む。
勤務の過酷さから、地域の拠点病院などで勤務医の退職が相次いだことが「医師不足、地域医療の崩壊につながった」と指摘されており、改定案は勤務医の待遇是正策の一環。
厚労省は「病院は大変。開業医も協力を」としているが、診療所の再診料を引き下げて加算分に回す方針で、日本医師会は反対を表明。調整は難航しそうだ。
厚労省は「午後六-八時」に絞って診療所の開業延長に加算、患者を病院から開業医に誘導する考え。救急搬送を含む病院の夜間外来が、この時間帯で突出して多いのに対し、診療所の大半は夕方で閉める。このため病院が症状の重い患者の診療と同時に軽症患者の対応にも追われ、繁忙化している実態を考慮した。ただし報酬目当ての夜間だけの診療は認めない。
勤務医の負担軽減のため同省はこのほか、産科や小児科などがある総合病院では二十四時間救急や入院医療に傾注できるよう、地域連携体制を整えた上で外来を縮小した場合への加算を提案。
診療データ入力や文書作成など、診療行為以外の煩雑な作業を肩代わりできる事務補助員の病院への配置も、報酬で上乗せする方針を示した。
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開業医、夜間診療の報酬手厚く…厚労省が見直し案
日本経済新聞2007/11/02
厚生労働省は2日の中央社会保険医療協議会(中医協)で、診療所(開業医)の初診・再診料を引き下げるとともに、外来の時間外診療の報酬は引き上げる方針を提示した。地域医療を担う病院の勤務医の負担軽減に向け、開業医に協力を促す狙い。初診・再診料の引き下げ分は勤務医の待遇改善の財源に回す。来年度の診療報酬改定で実現したい考えだが、日本医師会は強く反発しており、調整は難航しそうだ。
診療報酬の改定は年末の来年度予算編成で全体の改定率を決定。それを受け、年明けに個別の改定内容を決める。
医療の現場では、病院勤務の労働実態の厳しさから、地方の病院などで医師不足の問題が指摘されている。厚労省は今回提示した案を導入すれば、定時診療だけでは収入減になるため、開業医が休日や夜間の時間外診療も積極的に受け入れるようになると判断した。(23:44)
国庫が空っぽで、借金山盛りの「日本政府」ですから、この決定は・・・仕方ないのかもしれませんが、「軽症」ばっかり診察しているという風に決められると、開業したばかりの先生とかには厳しいです。
もちろん、自分は役割分担の時代で、病院から開業医へのシフトは必要だと思います。かかりつけ医師をもたないでいきなり風邪で病院に来てしまう患者さん、夜中なら空いていて便利と思っている患者さん。こういう人をいかに昼間に誘導するかを考えて欲しいのですが・・・。もちろん、夜間診療もいいでしょうが、そもそも開業医の先生も朝9時から12時まで、それと夕方4時から7時までの7時間しか働いていないくらいに思っているのかというと疑問です。
自分の同級生(皮膚科)の先生は、午後9時でも、診療のあとも残って仕事しています。往診もやっています、看取りもされています。そういう先生にとって、昼間がんばって働いて、夜も仕事をせよと?
ちなみに、日本の開業医の平均年齢は50歳過ぎ。無理に夜の対応を・・・というと厳しいかもしれません。
もちろん、70過ぎても働きたいという人もお見えでしょうが、「レセプトオンライン化」(請求書の電子化)などの追加支出や設備更新を求められるより、もう辞めた!なんてベテラン医師の出てきやしないかと思ってしまいます。
そして、病院への診療報酬を厚くしても「勤務医」の労働環境を良くするようにしなければ、今の「立ち去り」は減りません。思うに、「労働基準法の遵守」できるように36協定を結んで、過重労働をさせないようにした病院に「割り増し」するのならいいですが、単に高度救急をやっている病院にお金を払っても、働いている勤務医が「睡眠不足」である限り、医療の安全を保つのは厳しいと見ています。
ちなみにイギリスの開業医の平均年収は2600万円ということで、議論を呼んでいるようですが・・・日本はこんなに高くはないですし、土日も夜間も休まないで、もっと働かされそうです。
↓イギリス
イギリス:家庭医の平均2600万円が議論となる
↓日本
[どこから金を調達するか?]その場しのぎは続かない・・・ [医療行政]
もちろん、医療費の総額抑制は限界・・・というコンセンサスはできつつあるのですが、はたして「5.7%も診療報酬」を上げるためには、どこを削って?あるいは増税して?増やすかというのがジレンマになりそうですね。
イギリスみたいに節約三昧や補修費までもを削って赤字を押さえ込むか?アメリカみたいに自己負担(保険のカバーを減らして)を増やすか。
ぽち→
日本医師会、診療報酬の5.7%上げ要望
日本経済新聞2007/10/31
日本医師会の唐沢祥人会長は30日、舛添要一厚生労働相と会い、2008年度の改定で診療報酬を5.7%引き上げるよう求める要望書を手渡した。唐沢会長は「医療の現場は疲弊している」と訴え、舛添厚労相も「これ以上の医療費削減は限界で、勤務医を中心に対策を検討している」と答えたという。(22:01)
保険料を半年凍結、続く半年は1割負担 自公の高齢者医療費凍結案
日本経済新聞2007/10/31
日本医師会の唐沢祥人会長は30日、舛添要一厚生労働相と会い、2008年度の改定で診療報酬を5.7%引き上げるよう求める要望書を手渡した。唐沢会長は「医療の現場は疲弊している」と訴え、舛添厚労相も「これ以上の医療費削減は限界で、勤務医を中心に対策を検討している」と答えたという。(22:01)
保険料を半年凍結、続く半年は1割負担 自公の高齢者医療費凍結案
来年4月から予定されている高齢者医療費負担増の凍結を検討している自民、公明両党の与党プロジェクトチーム(PT)は30日、75歳以上の一部高齢者からの新たな保険料徴収について、凍結期間は来年4月から9月までの半年とし、その後の半年(10月~平成21年3月)は保険料額を9割免除し、1割徴収とすることで合意した。両党はすでに、70~74歳の窓口負担率2割(現行1割)への引き上げを1年間凍結することを確認しており、19年度補正予算で必要財源を確保する考えだ。
凍結に伴う国の新たな財政負担は(1)70~74歳の窓口負担据え置きに約1100億円(2)75歳以上の保険料凍結・軽減に約360億円(3)システム改修経費や国民への広報費用などに100億円以上-で、総額1500億円を上回る見通し。
一方、今回の凍結にとどまらず、21年度以降に法改正を含む高齢者医療制度を見直すことも確認。世代間や世代内の公平性確保や、財政健全化との整合性などを踏まえ、引き続きPTで検討することで一致した。
【視点】
高齢者医療費の負担増凍結が30日、ようやくまとまった。小泉構造改革のもと「高齢者も応分の負担」との方針で、昨年の通常国会で強行採決してまで成立させた医療制度改革関連法をあっさりと修正させた形だ。来年4月まで半年足らずに迫った中での修正は、次期衆院選への危機感の表れといえよう。
構造改革後退の印象に、自民党内からは懸念の声も上がったが、制度の抜本見直しまで主張する公明党の圧力も強く、一気に福田政権の重要政策課題に浮上した。
ただ、「凍結」との意気込みとは別に、軽減の期間も規模も中途半端との印象はぬぐえない。保険料については、もともと激変緩和措置で2年間は定額負担部分の5割(月額約1500円)と安く設定されていた。9割軽減なら、さらに安く月額約300円とはなるが、月あたり1000円ちょっとの“恩恵”だ。
凍結分は国民の税金でまかなわれる。厚生労働省からは、窓口負担率が1割で凍結されることで「安易に病院に行く人が増えるのでは」との懸念も聞かれる。今回の凍結対象は一部の高齢者だけだ。「医療費が伸びれば、若者世代の保険料負担増にもつながりかねない」との指摘もある。自民、公明両党には新たな不公平感が広がらないよう、さらに丁寧な説明が求められる。
(桑原雄尚)
[品格のない政府へ提言]社会福祉政策でさえこの有様 [医療行政]
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巻頭言
国民が求めているのは政府の品性
日本医療法人協会 常務理事
医療法人社団金澤会 理事長
金澤 知徳
それにしても、美しい国、思慮深い国だったはずの日本は、いったいどこに行ったのだろう。いや、どこにやってしまったのだろう。連日のように呆れかえる話題が報道され、特に公的な立場にある者の信じ難い所業が明らかになるたびに、目と耳を疑ってしまう次第である。
今後の社会保障制度に対する国の対応についても同様。思考過程や政治手法に政府の品性を疑わざるを得ない。世界の多くの国が日本の医療制度・国民皆保険制度を高く評価しているにもかかわらず、ほとんど財政的な視点だけに目を奪われて、制度の崩壊を招こうとしている。さらに、このたびの療養病床削減計画においても、入院実態調査の結果を悪意的に解釈し、「過半数が不必要な入院である」と表現している。「政策」は為政者の所有物ではなく、その実践者および利用者である現場国民の理解と協調のもとに実るものである。信頼し得る政策意図が最重要であることは明らかだ。
さて、この8月に再び療養病床の転換意向調査が実施された。当院のお膝元である熊本県では、この調査と並行して「療養病床連絡協議会」が中心となり、患者家族に対する療養病床削減の認識調査を実施した。約1万1000人の医療・介護療養病床入院患者の家族全員を対象とし、9月6日時点で約65%の回収率であるが、結果の一部をここに報告する。
1)削減計画を
知っていた(42%)、知らなかった(56%)
2)医療費適正化と社会的入院の是正に
賛成(4%)、反対(64%)、わからない(29%)
3)医療の不必要な入院が多いと
思う(6%)、思わない(57%)、わからない(36%)
4)自宅での療養が
可能(2%)、不可能(84%)、わからない(4%)
この結果から、
1)削減計画の報道から約1年で42%が認識している。しかし、賛成が4%でありながら、県民の声としてほとんど問題に取り上げられていない、
2)不必要な入院が多いと6%は認識しているが、現実問題として帰宅困難、
3)現時点の報道や公的広報等では理解判断できない者が3割以上
・・・などが推察される。
今春発行された日医グランドデザイン2007では、必要療養病床数の推計値を24.4万床と算出。国が掲げた15万床と著しくかい離している。さらに、後期高齢者の増加に従い平成32年度には29.9万床が必要であると示している。確かに、介護予防や疾病予防に努めて療養患者の増加を抑えることは医療における必須命題であるが、自然科学的な予測値を経済学的期待値で置き換える過ちを犯してはならない。為政者には、正しい情報と判断材料を国民へ伝える品性が求められている。最後に、もう一度強調する。私は、ひた向きな子どもの心を養う教育と、国力の礎である国民の健康を守る医療にこそ、身勝手な成果主義ではなく、品位ある道徳的見地が重要視されなければならないと思う。
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まぁ、至極まっとうなご意見です。これに対して、日本経済新聞、産経新聞をはじめとする大手マスコミはどう思うのであろうか?
政府のお先棒をかついで、国民に不利な情報は開示せず、政府・与党が出す都合のいい数字を広報する側に回っていないのだろうか?
いずれにせよ、10年もせずに明らかになるだろう・・・介護殺人や介護放棄が増え、自宅へ戻れないのに無理やり退院させられて苦しむ姿が見える。残念ながら、これは「政府&与党」のやり方に対して、きちんと意見を言わないで来たから仕方ありませんね。ぽち→
[手際のいいお役所?]先ず隗より始めよ [医療行政]
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沖縄タイムズ2007/10/27
療養病床の目標数は、国がこのほど示した療養病床削減策に基づき都道府県が算定。
県医務・国保課は療養病床の入院患者調査を基に医療区分を割り出し、県内の七十五歳以上の後期高齢者人口の伸び率を踏まえて検討した。国と調整後十二月の同計画案で確定する。
削減した病床は今後、県が並行して策定中の「地域ケア体制整備構想」の中で介護保険施設や在宅介護へ転換する。しかし県高齢者福祉介護課が今年八月に療養病床を対象にしたアンケートでは28・2%が「転換は未定」と回答した。
同課は「療養病床から介護保険施設に円滑に転換できるよう、第四期介護保険事業支援計画で人員や設備基準の緩和措置を設ける」と説明した。
一方、松岡会長は「患者を介護老人保健施設などほかの施設に転換しても、四割は医療ケアが必要で容体も不安定。施設での受け入れは困難」とみる。
「高齢者人口が増える中での療養病床の大幅削減は、高齢者の負担増につながる」と話す。
救急など、急性期医療を担う病院からも、慢性疾患の患者を受け入れる療養病床の削減に懸念の声が挙がっている。
北部地区医師会病院は「今でも急性期治療を終えた高齢者の転院先の確保は難しい。急性期医療の場を確保するには療養病床が必要で、これ以上減れば、急性期医療を担う病院のベッド確保も難しくなる」と懸念している。
療養病床については、役人によって「社会的入院」とか、「老人医療費増加」の諸悪の根源のような言われ方していますが、病院から退去になったからといって、その人がしゃきしゃきと元気になるわけでもありません。
また、自宅で「看取り」といっても、戦前のような大家族制は崩壊しており、ヘルパーさんと訪問看護師の手をかりて家族で看取るには、相当な負担が各家庭を襲います。
お役人は「一律」「均等」とか「平等」な「計画」が大好きですから、この文字通り、「高齢者医療費削減」のためになら、自分の両親が寝たきりになっても療養病床など利用しなければいいと考える。まずは、400万人いる、国家公務員の家族や、地方公務員の家族の療養病床利用を100%使用ができないよう、制限しましょう。
公務員であるかぎり、有給休暇も民間よりも取得しやすいですし、介護についても周囲の理解もあるでしょう。また、自宅で療養するというのが厚生労働省によってどれだけ国民の労働生産性を落とすか?考えてもらいたい。実際に病院を集約化した場合、急性期の入院期間は今の半分になり、病院でのんびりなんてのは死語になり、「よれよれ」「病み上がり」でも追い出されるようにして退院が目に付くでしょう。それを狙っているのは誰かは知りません。お役人はとにかく公的保険のカバーを削る。その負担が国民や家庭に襲い掛かってもしらん顔です。介護殺人が増えています。まずは公務員のように福利厚生がしっかりしているところから始めることをお勧めします。ぽち→
[自治体病院再編]総務省がつきつける取り潰しの条件 [医療行政]
Japan Medicine Mail2007/10/25
自治体病院改革で総務省は、過去3年間の病床利用率が続けて70%を切る場合には、病床削減やほかの自治体病院との再編を促す方向で検討に入った。自治体病院を対象にした改革プランのガイドライン案に盛り込む予定。一律の数値目標を定めることにはこれまで慎重な向きもあったが、停滞する自治体病院の経営改善を進めるため、より強い姿勢を打ち出す必要があると判断したとみられる。
ガイドライン案は29日の公立病院改革懇談会で示される。病床利用率が過去3年にわたり連続で70%を下回っている自治体病院には抜本的な経営見直しを提言し、これに当たる病院が策定する改革プランの中に、病床削減や診療所へのスリム化、病床過剰地域の場合には自治体病院同士の再編・ネットワーク化を盛り込むよう求める見込みだ。
Japan Medicine MailはJapan Medicineのニュースをもとに提供…
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もはや、限界まで来ていますね。医師不足で患者さんを満足に入院させられない病院は改易(取り潰し)です。再編とかきれいごとを言っていますが、赤字を垂れ流すのなら、「廃業を申し付ける」のです。
別に今に始まったわけじゃありませんが、日本の医療は病床稼働率が95%とかありえないほど高くないと黒字になりません。アメリカとかは70%~80%とかじゃないでしょうか…と調べたら「地域病院における平均病床稼働率(occupancyrate)は,1975年の75%から,90年66.8%,96年61.5%へと減少している。」とあります。それでも黒字になるように在院日数を削減しまくってますけどね。
現代アメリカの医療産業複合体と病院
http://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/44493/1/19_10.pdf
いずれにせよ、早晩、地域の拠点である病院は再編へと行きます。集約化はお産だけではなく、外科医不足・麻酔科医不足、経営資源の無駄遣いの節約にもなり、お上(総務省)としては、各自治体が勝って気ままに赤字を垂れ流すのは許さないということです。
地域住民の声などは多少は取り上げられるでしょうが、地方自治体存続がテーマであるかぎり、第二第三の夕張を作らぬためには、ハコモノ行政からの脱皮が先だと思っていますが・・・難しいですね。
「小児集中治療室」必要なのは設置基準ではなくて人とお金 [医療行政]
NHK2007/10/21
PICUは、重い病気になったり手術を受けたりした子どもに高度な治療を行う集中治療室ですが、設置に関する明確な基準がなく、国内には16施設、ベッド数にして97床と、ほかの先進国に比べて著しく少ないのが実状です。このため、日本集中治療医学会や日本小児科学会などは、明確な基準を定めてPICUの設置を促す必要があるとして、初めての指針をまとめました。この中では、6床以上のベッド、専従の医師、患者2人につき1人以上の看護師を、それぞれ確保するとともに、患者や家族のケアに当たる保育士を置くことなども求めています。大人と同じICUや、十分な設備のない一般病棟で治療を受けている子どもの重症患者は多く、受け入れ先が見つからずにたらい回しにされるケースも相次いでいます。指針をまとめた「国立成育医療センター」手術集中治療部の阪井裕一部長は「日本の1歳から4歳までの子どもの死亡率は、先進国の中で最も悪いレベルだ。PICUを増やし、重症の子どもに適切な治療を提供する体制を急いで作る必要がある」と話しています。
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体制が整っていない現状は、これまで政府・厚生労働省が放置しつつ、政治家に「少子化対策」とか「医療費削減」いわせているのです。
こういう問題は予算には限りがあるので、どこかを削減して、そちらへ転用するという形になりかねません。
浜松赤十字病院:医師不足の課題抱え 産科医確保できずスタート--完成式 /静岡
毎日新聞 2007年10月20日
http://mainichi.jp/area/shizuoka/news/20071020ddlk22040083000c.html
浜松の病院が「新築」したけど、産婦人科の医師がいなくて・・・という話です。結局、ハコモノ行政の考えがそもそも間違い。設置基準に満たない施設を暫定的に作っても満たされないのではなく、きちんとスタッフを育成して、5年くらいかけて予算をつけてやんないと無理。お役所は施設の名乗りでお墨付きを与えておしまいでしょ。そうならないためにも、各方面に働きかけないと予算を取ってくれないのが、役所。政治家も動かすにはそれなりに署名などが必要です。やっかいな問題です。
[診療報酬とりすぎでクビ?]真相は? [医療行政]
昭和大藤が丘病院(横浜市青葉区)が診療報酬約5億1000万円を過剰請求していた問題で、昭和大は20日までに理事会を開き、与芝真彰院長を31日付で解任することを決めた。また看護部長と当時の事務長を降格処分にするなどした。
同病院は昨年8月、診療報酬が最も高くなる入院患者7人当たり看護師1人の配置になったと神奈川社会保険事務局に届け出た。
実際は、入院患者10人当たり看護師1人の配置だったといい、今年6月に発覚するまで、約5億1000万円を過剰に請求していた。
同事務局が差額を返還するよう行政指導、病院側は全額返還を決めている。
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この大学の運営の中枢にあたってた理事会としては「責任」の所在を明らかにする必要があってのことだと思います。しかし・・・この先生はいわゆる普通の「金の亡者」みたいな気はしないのですけどね。 もちろん、この世の中に「金の亡者みたいなお坊主さんや医者」も居るとは思うのですが・・・
この院長先生が「診療報酬」を全て請求していたとは思えないんですがね。ま、新聞記事ではそこまで「取材」しないからね。
「過剰請求」の責任・・・自分が推測するには、事務部門に「共犯」がいっぱいいると思います。
ぽち→
医師と僧侶の狭間を生きる―智慧と慈悲こそが医療を救う
著者:与芝真彰
出版社: 悠飛社 (2007/09)
http://www.hpmix.com/home/fujichan/C8_2.htm
脳梗塞も集約化かな・・・ [医療行政]
血栓溶解剤t-PA投与体制整備病院の評価等にも言及
薬事ニュース 2007/10/19
08年度診療報酬改定項目に沿って議論を進めている中央社会保険医療協議会・診療報酬基本問題小委員会(土田武史会長兼小委員長)は10月19日、①医療安全対策②救急医療③心の問題――の3つの課題について審議。
医療安全対策では、投与方法が難しい薬剤や重篤度が高い入院患者に対する病院薬剤師の指導、管理業務の報酬を手厚くするなどの論点を提示。救急医療では、血栓溶解剤t-PA(アルテプラーゼ)を投与できる体制を整備した病院の報酬を手厚くしたりすることなどを論点として提示した。いずれの課題もこの日の意見を踏まえて事務局が論点を整理、それを基に再度審議する。
「医療安全対策」については、06年6月の医療法改正等を踏まえ、積極的な評価を行うべき論点が示された。論点は、①生命維持に直接関与する医療機器の専門知識を有する臨床工学技士配置の評価②重篤副作用が発現しやすい薬剤を使用する患者に対する病院薬剤師の指導や管理業務の重点化と、緊急対応が求められるケースの薬剤管理や適切な使用の充実――。経済課では、提示した2つの論点のうち、
病棟における薬剤師の指導、管理業務については、「難しい薬剤の使用」と「患者の重篤度」の観点から評価する方向を提示。専従、専任との考えではなく、「現行病棟業務における薬剤管理指導の範囲で対応するべきではないか」との考えを示した。ただ、重篤な患者への対応との点でみると、「“薬剤”管理指導の範囲から外れるため、そのあたりの検討は継続して行う必要がある」(磯部総一郎課長)などとしている。
「救急医療」に係る論点は、脳梗塞発症後3時間以内に血栓溶解剤t-PA(アルテプラーゼ)を投与できる体制を整備した病院に対して報酬上評価するというもの。
日本人の死因第3位の脳卒中の約6割は脳梗塞の死因による。患者数の増加が予想されている脳梗塞だが、t-PAを投与することにより、後遺症の発生率を下げることが実証されている。
しかしその効果も発症後3時間以内に投与された場合と限定的。病院に救急搬送されても投与に至るまでには、脳出血等でないことを判断しなければならず、そのための診察、検査、画像診断等を経て確定診断を行うことが必要であり、その分コストも時間もかかる。
事務局は、時間との勝負になるt-PAの投与には、24時間の緊急画像診断、緊急手術、集中治療ができる設備等の高い病院機能が要求されているため、「これらの施設の急性期脳卒中に係る体制について評価する必要があるのではないか」と指摘。その評価方法については、現行の救命救急入院料にt-PAが投与されたら加算をつけるような仕組みを想定している。なお、薬剤に着目した報酬点数は初めて。
これに関して診療側の中川俊男委員(日本医師会常任理事)は、「この治療に携わっている者としてありがたい評価」と言及するも、施設基準に係る算定要件をあまり厳しくしないよう配慮を注文。
支払側の対馬忠明委員(健康保険組合連合会専務理事)は、その方向で議論を進めていくことには理解を示したが、06年度改定で、急性期脳卒中患者の急性期医療及びリハビリテーションを組織的・計画的に行った場合を評価した「脳卒中ケアユニット入院医療管理料」(包括評価)の新設を受け、「(報酬体系が)複雑にならないか」と懸念を示した。診療側の山本信夫委員(日本薬剤師会副会長)は、t-PAの投与に当たっては、病院薬剤師も24時間体制で対応しなければならないとし、それに対する評価を求めた。
この他、「ドクターヘリを用いた救急医療の提供に要する費用のうち、診療に要する部分について現時点としてどのように考えるか」といった論点が示された。
6月に成立した「救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法」の附則に基づいて提案されたものだが、省内にある関係検討会の結果を待ってから議論に入る方向で大筋合意を得た。
「心の問題」の論点は、成人と子どもの2つを切り口に提示。成人では、6月に閣議決定された「自殺総合対策大綱」において早期発見・早期治療が重要との指摘を踏まえ、患者がうつ病等の精神障害が疑われる場合、担当医がその患者を精神科医に紹介することを報酬上評価する、自殺企図の患者等に対し、精神症状、身体症状の両方を総合的に診断・治療できるよう報酬上評価することが示された。
一方、子どもの心の診療においては、診察時間が長時間に及ぶ場合もあり、ある程度診療時間に応じた報酬上の評価の検討や、治療期間が1年を超える症例も多いため、算定期間(上限)の延長等が論点として示された。
いずれも同日の議論を踏まえ改めて論点整理し、さらに審議する。
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tPA治療を行う医療機関の条件 脳出血の危険性があることから、日本脳卒中学会は、この治療を行う施設として▽CTまたはMRI(磁気共鳴画像)による検査が24時間可能▽この治療を熟知した医師が勤務――などの条件を挙げている。ただ、それを満たす医療機関名は把握されていない。(2005年10月25日読売新聞より)
今日はのんびり週末を過ごしています。というか、t-PA投与体制整備病院の評価となると・・・脳梗塞発症3時間以内に投与できるように、緊急時にMRIやCTが撮影できるところ、血管内治療ができる医師が複数いるところ、とになります。この体制を整えていない病院では「脳梗塞急性期」を診るのは・・・ダメっていわれそう汗。