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医師過労死と産科医不足 [産科医療]

 「なくそう!医師の過労死」
2007/11/15   キャリアブレイン

 過重労働による医師の過労死が深刻な問題となる中、過労死弁護団全国連絡会議(代表幹事・松丸正弁護士)は11月14日夜、東京都千代田区の中央大学駿河台記念館で「なくそう!医師の過労死」と題したシンポジウムを開催した。小児科医や産科医また弁護士らが労働基準法“違反”の医師の過酷な勤務実態を告発。過労死した医師の遺族らも医師の労働の在り方について思いを語った。約130人の参加者は、「医師のためだけでなく、国民が安心で安全な医療を受けられるためにも医療現場の環境改善が不可欠」と確認した。

 過酷な勤務状況による勤務医の過労死・過労自殺が深刻な社会問題となっている。同連絡会議の集約では、過労死・過労自殺をめぐる労災認定や労災補償の事例はこれまで全国で22件。そのうち7件が今年に集中している。
 厚生労働省の「医師需給に係る医師の勤務状況調査」によると、病院などの医療機関の勤務医の1週間当たりの勤務時間は平均で63.3時間。同連絡会議は、「この時間は、厚労省の『脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準』において業務と発症との強い関連性を示す、1カ月当たり約100時間の時間外労働に相当する」と指摘。医師の過労死が今後も起こり得る現状の改善を目指し、シンポジウムを開いた。

 第1部では、専門家4人がそれぞれの立場から講演。
 昭和大学の主任教授で産婦人科医の岡井崇氏は、同科の医師の92.5%が当直翌日の勤務を行っている調査結果を示すなど、医師不足による同科の過酷な勤務実態を報告。「過重労働が“医療の質の低下”“事故の発生”“訴訟”“医師不足”となる悪循環を引き起こしている」と話し、被害者を補償して訴訟を抑える「無過失補償制度」の導入を求めた。

 ちばこどもクリニックの院長・千葉康之氏は、10カ所の病院で小児科の勤務医を務めた経験から、医師の宿日直とその問題点に言及。厚労省が宿日直を「ほとんど労働する必要のない勤務」などと規定していることに対して、「実際は通常勤務より何倍も負担がかかる」と指摘し、「40時間の連続勤務が常態化している」と打ち明けた。千葉氏は、「働いたら休むという当たり前のことがなぜ許されないのか」と問題提起。「患者の安全と医師の健康のために労働環境の改善が不可欠」と訴えた。

 医療問題に取り組むジャーナリストの塚田真紀子氏は、「医師が過酷な勤務を“辛い”と言えない古い考えをなくすべき」と発言。また、患者の視点で、「軽症であっても容易に受診してしまう国民の意識も変えていく必要がある」と呼びかけた。

 そして、医師の過労死をめぐる複数の裁判を担当する松丸正氏は、過重労働を許し、労災認定もなされにくい現状について解説した。背景には、勤務医の労働時間を把握するシステムがそもそもないこと▽労働基準法第36条に基づく時間外及び休日労働に関する協定(36協定)が適切に届けられてないこと▽サービス残業が常態化し勤務に歯止めがかからないこと▽宿日直に対する認識が現場と裁判所で食い違っていること―の4つがあると強調。松丸氏は、「労基法の重要性を訴え続け、勤務医の労働環境の改善に向けた取り組みを行っていきたい」と話した。

遺族らも環境改善訴え
 
第2部では過重労働によって命を断たれた医師の遺族が意見を述べた。
 1995年に過労死し、2年かかって労災認定された山梨県の産婦人科医の妻は、「医療現場は、改善に向かうどころかさらにひどくなっている」と指摘。「医師の人間らしい生活を保障していくことが、患者さんの安全を守ることにつながる。いろいろなところで声を上げていき、医師をはじめ労働者の労働環境を改善していきたい」と話した。

 また、99年に過労自殺した小児科医の妻・中原のり子さんも発言。中原さんは今年の行政裁判で勝訴し、現在勤務先を相手取った民事裁判の控訴審で係争している。
 この日、同連絡会議とともに厚労省に対して申し入れを行い、その席で小児科医の労働環境を改善する要請書とそれに同意する22,314筆に上る署名を厚労相あてに提出したことを報告。これに加え、医師の時間外勤務の適正な評価とそれに基づく就労環境・法制度の改善▽医師の供給システム側からのアプローチ、特に「地域で医師を育てる取り組み」の重要視▽受療者の行動変容、とくに時間外のコンビニ受診の改善―の3点も要求。中原さんは「一人でも多くの国民の声を発信し、過労死や過労自殺が起こらないような施策を行政に求めていき
たい」として、今後の活動への意欲を示した。

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産科医は「ツライから嫌」 横浜市大生が調査

産経イザ 2007/11/15

 医学部の学生で過去に産婦人科医を志したことのある人は全体の29%いるにもかかわらず、現在第1志望にしている学生は全体の4%、第3志望まで含めても14%にとどまり、多くは「勤務実態」や「訴訟リスク」を理由に挫折していることが15日、横浜市立大の医学部学生が実施した調査で分かった。

 志望しない人が「産婦人科医になってもいい条件」として挙げたのは「適正な当直回数」や「刑事責任に問われない」が多く、医療を取り巻く厳しい環境が学生の進路希望にも影響し、産科医不足に拍車が掛かる状況が浮き彫りになった。

 調査は同学部医学科1~6年の361人を対象に実施し、応じた307人(回答率85%)と他大学13人の計320人の回答を分析した。

 産婦人科を目指したことがあるとしたのは1年20%、2年18%、3年25%、4年37%、5年32%、6年47%と学年が上がるほど高率。理由として「命の誕生という感動にかかわることができる」「時代や国を問わず必要とされる」などが挙がり、6年は「実習で楽しかった」も目立った。

 しかし、一度は産科医を志望した学生の約半数が進路を変更。その理由として勤務実態(当直回数、勤務時間、育児との両立困難)や訴訟リスクが高いことが挙がった。

 調査結果は、17日に同学部で開かれるシンポジウム「STOP the 妊婦たらい回し」で発表される。シンポジウムでは、結果を基に、学生が現場の医師らと意見交換。産科医不足を実感したことがあるかなどについて、妊産婦約100人に実施した調査結果も発表する。

 企画した医学科3年の武部貴則さん(20)は「問題の改善には、医師や行政だけでなく市民にも果たす責任がある。患者と医師の間に立つ学生の考えを伝え、医師不足などについて考え直すきっかけになれば」と話す。
 シンポは同大福浦キャンパス(同市金沢区)で午後3~6時。入場無料。

     ◇   
 
 産科医不足 深夜・長時間労働や分娩(ぶんべん)事故に伴う訴訟リスク、子育てによる女性医師の休職などを背景に産科医が減少。平成18年2月に、福島県警が帝王切開した妊婦の死亡をめぐり県立大野病院の産科医を業務上過失致死容疑などで逮捕したことも影響しているとされる。各地で妊婦の救急搬送先が見つからない事例も相次ぎ、背景に産科医不足が指摘された。国は分娩事故で医師に過失がなくても補償金を支払う「無過失補償制度」の創設や、中核病院への集約化による地域医療ネットワークづくりなどの対策を進めている。

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産める病院、地方では医師一人の確保に懸命

首都圏では妊婦集中、近県ヘリ搬送
読売新聞 2007/11/15

 地方都市では、地域の産科医療の存亡が、わずか1人の医師を確保できるかどうかにかかっていた。首都圏では、中核病院に妊産婦が集中する。お産を扱う病院が次々と姿を消し、窮地に立つ産科医療の現場を追った。(山下昌一)

 「地元で出産できてよかった」。和歌山県新宮市立医療センターで今夏、長女を出産した女性(32)は安堵(あんど)の声を漏らした。地域の中核病院で、年400件の出産を扱う同センターの産婦人科医はわずか2人。そのうちの1人が奈良県立医大に引き揚げられることになり、病院側は10月から出産の取り扱いを中止すると発表していた。

 中止となれば、車で1時間半以上かかる病院に搬送しなければならない。新宮市は、大学病院などに医師派遣を要請したが後任が見つからず、国が医師をあっせんする制度に申請。大分市で開業していた中尾愃仁(けんじ)医師(62)の派遣が決まり、お産の中止を免れた。

 9月から単身赴任した中尾医師は、診察した妊婦に「(出産予定の)来年もやってますか」と何度も尋ねられ、半年の期限後も病院に残る決意を固めた。

 江川忠雄収入役(59)は「都市部に医師が集中している。地域格差がはっきり出てきた」。

 だが、都市部でも深刻な事態が起きている。

 「神奈川からの妊婦も受け入れています」。千葉県鴨川市の亀田総合病院で、鈴木真・産科部長(44)はそう話す。ハイリスクの出産を引き受ける同病院では2005年4月以降、ヘリコプターによる妊婦の救急搬送が43件もあった。このうち18件は、神奈川など県外の患者。20か所以上の病院に断られた末に搬送されて来るケースも。

 現場の負担は重い。先月中旬、同病院の上田恭子医師(28)は午前7時過ぎに診察を始めた。当直明けで仮眠は1時間。「早産や帝王切開などハイリスクのお産が4件あった。もう日付の感覚がない」。当直は月6~8回、休みは1、2日。「こんな勤務では仕事を続けられるか不安」と訴えた。

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 「産科崩壊」と「医師の過労死」。両方とも根っこは同じです。まともな労働環境を行政が放置しているからです。医師や看護師のぎりぎりの努力で維持されているこの国の医療。今後、どうやって医療を維持するのか?きちんと「解決策」を考えださないと行けませんが、はたして厚生労働省にはいいアイデアでもあるのでしょうか?
 そうそう、この前、浜松の大きな病院の小児科医の先生にお会いしましたが、浜松のこの病院では、首都圏から妊婦さんの搬送の引き受けをしているそうです。逆にいうと、ここが引き受けてくれないと、妊婦さんは愛知県に搬送ということになります。またER広尾の産科医の先生も「福島や静岡からも電話が来るけどこっちにも余裕がないの」ってました。まさに崩壊寸前です。

 「奈良県で妊婦のたらい回し事件」といって医療サイドを悪しざまに報道し続けたマスコミ。今ごろになって、この流れを押し止められるでしょうか?僕は、あんまり楽観視はしていません。ぎりぎりの状況は何かがあると一気に崩壊します。綱渡りが続いているけど、その余裕はゼロです。困ったことに産科医は次から次へとできません。もうそこまで来ている「非常事態」。さて、国には備えはあるんでしょうか?

ぽち

  なかのひと 



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