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医療小国にっぽん:看護師不足が深刻化 [医療行政]

訪問看護ステーションの休止相次ぐ 愛媛県内

愛媛新聞2007/11/11

 在宅医療を担う訪問看護ステーションの休止が、県内で相次いでいる。運営する母体病院自体が看護師確保に苦慮し、同ステーションに配置する看護師を確保できないことが主な要因。2006年4月の診療報酬改定で、手厚い看護体制を整えた病院は診療報酬が上乗せされるようになり、大病院を中心にした看護師の争奪戦が、同ステーション運営に大きく影響している実態が浮き彫りになった。 
 訪問看護ステーションは、看護師や保健師らが患者の自宅などを訪問し、主治医の指示書に基づき点滴や投薬などの医療行為にあたり、人工呼吸器の管理、リハビリや排せつの介助などの介護にも携わる。全国に5480カ所(06年10月現在)あり、患者や家族の在宅療養を支えている。 
 県長寿介護課などによると、県内の訪問看護ステーションは07年4月現在、97カ所あるが、うち17カ所が休止している。事業所数は介護保険制度がスタートした00年は72、03年91、06年97と増加。その一方、毎年2―3事業所が休止しているため、この数年、運営を続ける事業所数は横ばい状態が続いていた。特に今年は新たに5カ所が休止し、新規参入もなかったことから、運営を続ける事業所数が前年を大きく下回る事態に陥った。同課は「看護師不足が大きな要因」と分析している。

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 先輩の勤務している大きな市民病院のそばに新しい民間病院ができるらしく、やはり看護師の引抜があいついで、病院にとってダメージが大きいということでした。
 結局、ゼロから育てるのは難しいため、そういう手段をとるのでしょうけど・・・元々少ない医療従事者を取り合いしている構図はなんともなりませんかね。もちろん、職場復帰できるような仕組みも必要ですけど、根本的に「医療従事者」が世界的にみても少ないかはほとんど認識していませんよね>一般の人もまたマスコミも。
 「在宅で看取り」なんて耳障りがいいお言葉で…病院ではなく、自宅に患者さんを帰えして、看護師さんを派遣しようという制度には「行政」はまったく、準備不足ですね。ぽち 

山口義行の“コレが言いたい” より

第16回 日本の医療危機!深刻化する看護師不足

  なかのひと 

今、全国の病院で、看護師不足が深刻化している。看護師を確保できず、閉鎖に追い込まれる病院が増えれば、国民の健康が脅かされることになりかねない。今、看護師不足の解消に求められているものは何なのか。 

ますます深刻化する看護師不足

2006年10月、全国から5300人が集結し、医者・看護師を増やしてほしいと訴えた。「看護師が足りない」という病院が全国で増え、今、日本の医療現場は深刻な事態に陥っている。看護師は「4~5年経つと心から疲れ切ってしまう」「有給も取れない。週休も消化できない」。さらに、去年4月の診療報酬改定が、病院同士での看護師争奪戦を過熱させている。看護師の数を増やして、看護の質を高める狙いが予想外の動きを引き起こしたのである「コレが言いたい」の第16回は、日本の医療が直面しているこの問題に斬り込んでいきたいと思う。

入院基本料改定が拍車

昨年4月の診療報酬改定によって「入院患者7人に対して看護師1人」という 新基準が導入された。それは、一般病棟の場合、入院患者数と看護師数の割合が「7対1」という基準が満たされていれば、入院患者1人当たり1,555点(15,550円)が入院基本料として病院に支払われるが、この基準を満たしていないと入院基本料が減額されるという仕組みである。例えば「15対1」の場合、9,540円にしかならない。仮に「15対1」を満たせないとなると575円にしかならず、経営の悪化が余儀なくされる(図表1)。

(図表1)2006年4月に改定された入院基本料

区分 改定前(点) 改定後(点)
7対1   1,555
10対1 1,209 1,269
13対1 1,107 1,092
15対1 939 954
15超対1 842か783 (特別入院基本料)575

資料:厚生労働省

このように、看護師の数が多いほど病院が受け取る診療報酬が増加する仕組みが導入されたことで、看護師の囲い込みや争奪戦が起き、地方の中小病院から都会の大病院へ看護師が引抜かれるなどの現象が起きてきている。その結果、もともと経営が苦しかった地方の中小病院の収入がますます減少し、病院間格差がさらに拡大するという悪循環が始まっている。

もちろん、「7対1」入院基本料の新設によって看護師数が増えた病院では、「患者さんのケアにあたる時間が増えた」「新人の指導・サポートにあたる時間が増えた」「超過勤務が減少した」など新制度の導入を評価する声もある。しかし、他方では「看護師を募集したが足らなかった」「看護師を引き抜かれた」「病院の維持が困難になった」と窮状を訴える病院も少なくない。回答した病院もあった。

現在「7対1」を満たしている病院は13%程度しかない。そうした数少ない「恵まれた」病院でも、看護師たちは口々に現状の厳しさを語る。「新生児・未熟児センターで働いている看護師は、2交代なので12時間ぐらいの勤務なんですけど、さらに1日2~3時間の残業があります。休憩時間中も人によっては食事をしながら赤ちゃんを見なくてはいけない日もあります」「毎年100人くらい辞めて、100人くらい新しい看護師が入ってきます。早い人だと1~2ヶ月で辞めていく」。

潜在看護職員55万人

看護師の就業者数は、全体では過去5年で年平均3万人増え、病院勤務に限れば、年平均約1万人増えている(図表2)。その限りでは、看護師の供給は増加傾向にあると言えるが、他方需要の方はそれをはるかに上回る規模で拡大することが予測されている。「7対1」基準を満たそうとすると、図表3に示されているように、2007年4月には2006年10月と比べて、4万人の需要増2008年には7万人、2009年には8万人の需要増加が見込まれている。看護師不足が今後ますます深刻化することは容易に推測することが出来る。

(図表2)看護師・准看護師就業者数 最近の動向 日本図2 看護師・准看護師就業者数 最近の動向 日本

(図表3)病院における看護職員の需要予測図3 病院における看護職員の需要予測

ただし、看護師の資格を持っている人数が上記の需要と比較して圧倒的に不足しているのかというと実はそうではない。資格を持っているけれど、現在看護関係の仕事をしていない人、いわゆる「潜在看護職員」の数は約55万人にも上っている。この人々が看護師としての仕事に復帰してくれれば、供給不足も大いに緩和することになる。

しかし、現状ではそれが如何に困難であるかを現役の看護師たちは、次のように語っている。「一旦看護業務から離れた人達が復帰するのは医療レベルのブランクなどがあり、大変難しい」「もう一度、現場に入ってもどってこようと思うと、ブランクになっていた間の医療の進歩、看護の進歩がすごく、自分の目の前に立ちふさがる最大の壁になる。変化があまりにも大きすぎて、なかなか続かない。仮に復職してもなかなか続かない。復職した場合のつらさは、現場を離れていた期間の長さによっても違うでしょうが、なかなかスムーズには現場に溶け込んでいけないというのが実際ところです」。

もちろん、看護師の離職を防ぐことも、看護師不足への重要な対策となる。日本看護師協会によれば、病院に就職した新人看護師の1年目の離職率は9.3%。(図表4)その数は約4,500人に上る。それをどれだけ減らせるかが課題である。しかし、これもなかなか難しい。

(図表4)看護師の離職率図4 看護師の離職率)

かつて看護師は「9K」と言われた。きつい・汚い・危険の3Kに加えて「休暇が取れない」「規則が厳しい」「化粧がのらない」「薬に頼って生きている」「婚期が遅い」「給料が安い」の6K(※1992年新語・流行語大賞 銀賞)である。

 医療の現場を知る医師でもある桜井充参議院議員は言う。「労働条件が良くならないと、看護師は辞めていきます。給料も安すぎる。アメリカの看護師と比べると、半分以下だと思います。そういう点で言うと、もう少し給料を上げないと、看護師は増えないでしょう。辞める人たちがすごく多いのは、給料だけの問題ではなくて、自分たちが学校で勉強して、身に付けた技術以上のことを要求されていることもあります。医者の研修制度が始まりましたが、看護師にももう少しきちんとした研修制度が必要です。それから、正規の雇用となると、日勤から夜勤も全てこなさなければいけない。例えば、子育て中の人にしてみると、日勤だけやりたい、夜勤は子供がいるのでできない。しかし、皆同じ労働条件を求められてしまうので、勤務を続けるのが難しくなる。その辺りの労働条件も変えないと看護師は増えないでしょう」。

コレが言いたい!――医療小国を脱せよ!――

看護師不足問題を解決するためには、上記のように様々な改善策が講じられなければならない。そのためにも、多くの国民が認識する必要があるのは、「日本は医療小国なのだ」ということを正しく認識することである。それが、問題解決に向けた出発点である。

患者に対する医者・看護師数を見てみると、日本の医療レベルが実は先進国中で最低であることがわかる。図表4に明らかなように、100床あたりの医師数はアメリカが66.8人、ドイツでも37.6人であるのに対し、日本は13.7人でしかない。100床あたりの看護職員数ではアメリカでは233人、フランスでも91.1人であるのに対し、日本は54人である。

(図表5)患者に対する看護師数図5 患者に対する看護師数

医療費を比較してみても、日本は明らかに「医療小国」である。医療費の対GDP比は図表6に明らかなように、主要先進国中最低である。こんな状況で、規制によって看護師数を増やすように病院に強制しても、それが看護師の引き抜き合戦や病院間格差を引き起こしてしまうのも当然であろう。

(図表6)先進国のGDP比医療費図6 先進国のGDP比医療費

政府は財政問題を医療比支出の抑制で解決せんとして、近年日本の医療費の増加ぶりを懸命に宣伝している。しかし、上記のように日本はむしろ「医療小国」なのであって、むしろ医療分野への支出を増やし、それを呼び水にして医療産業をより成長させることこそが肝要なのである。それが、雇用や税収を増やすことにもなる。医療費のむやみな抑制は医療サ―ビスを低下させ、政府に対する国民の信頼を損なわせる。結果として、政府は国民に正当な負担を求めることができなくなり、財政赤字も拡大しかねない。適正な医療支出の規模を明示し、国民の合意を得ながら医療サ―ビスの向上を図っていくこと、それこそが政府に求められる責務である。看護師不足問題も、こうした解決方針のなかに明確に位置づけられながら、様々な施策が講じられていくべき問題である。

(2007/5/19 執筆)

上記は、2007年03月04日に放映された「こちら経済編集長」(BSジャパン)というTV番組の中の「編集長のコレが言いたい」というコーナーで、私自身が主張した見解を基礎にしている。しかし、その際の内容を訂正したり、それに新たな情報を付け加えたりした部分もあり、けっして番組での発言をそのまま文章化したものではないことを留意されたい。


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