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[奈良県でまた魔女狩り報道]メディアの効果 [マスコミ]

 最初に、流産という結果は非常に残念な出来事です。それについては、出産を楽しみにしていた家族やお母さんにとって気の毒なことでした。

 

 さて、去年の大淀町立病院の事件と今回の事件、根底にあるのは「行政の怠慢」です。いくら断ったとされる医療従事者や病院に原因を求めても、大きくは変わらないこと、それを心していただきたい。

 

 去年の大淀事件と同じ論調で病院たらい回し:妊婦衝突事故後に流産 救急搬送中 大阪 」と見出しをつけたM日新聞さん、今朝の「とくダネ!」のように「9病院”たらい回し”受け入れ拒否で妊婦流産」と報道しています。

 

 

 

 こういう風にセンセーショナリズムに走っても、「救急車で運ばれても、病院が信用できない」などと不安を煽られてしまいます。確かに1時間半病院がみつからずにこのような結果になることは住民にとっては不安です。

 

 しかし、産科医が断りたくて断るのではないのです。

 

 昨年10/22に「労働者としての医師の権利を無視してきたツケ」で取り上げたように

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過酷な労働条件を撤廃するため産婦人科医が1億円を要求 

「過酷な当直」、産科医5人が超勤手当1億円要求 奈良

 奈良県立奈良病院(奈良市)の産婦人科医5人が04、05年の超過勤務手当の未払い分として計約1億円の支払いと、医療設備の改善を求める申入書を県に提出したことがわかった。医師らは「報酬に見合わない過酷な勤務を強いられている」と訴えており、要求が拒否された場合は、提訴も検討する方針。

 県によると、同病院の年間分娩数は05年度で572件。産婦人科関連の救急患者は年間約1300人にのぼる。産婦人科医が当直をした場合、1回2万円の当直料が支払われるが、当直の時間帯に手術や分娩を担当することも多いという。

 申入書によると、当直について労働基準法は「ほとんど労働する必要がない状態」と規定しており、実態とかけ離れていると指摘。当直料ではなく、超過勤務手当として支給されるべきで、04、05年の当直日数(131~158日)から算出すると、計約1億700万円の不足分があるとした。現在9床の新生児集中治療室(NICU)の増床や、超音波検査のための機材の充実なども要求している。

 医師の一人は「1カ月の超過勤務は100時間超で、医師の体力は限界に近い。更新期限を過ぎた医療機器も少なくなく、これでは患者の命を救えない」と訴える。

 県は、産科医を1人増員するなどの改善策に乗り出すとともに、医療設備の改善を検討しているが、超過勤務手当の支払いは拒否した。担当者は「財政難のため、すべての要求に一度に応えるのは難しい」と説明する。
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200610210041.html
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 このような状況で「産科医が医療を続けられる」ような状況を、行政が改善してきたか一切検証されていません。なのに「たらい回し」と簡単に報道する態度は疑問です。

 

 自分は、1年前と奈良県の周産期医療が変わってないことを懸念していました。1年後のこの事件で露見したように、今回も大阪府まで転送という結果が示すように奈良県では、産科救急医療が改善していません。

 

 去年も、「たらい回しした病院がヒドい」というマスコミの報道にひきずられた、ブログが目立っていましたが、今回もここにみるように「その傾向」が明らかです。マスコミが恣意的に「病院がさも悪者」なように報道したせいです。

 

 いずれわかると思いますが、全ての病院がお産を引き受けられない状況ではなかったにせよ、ぎりぎり「過労死」寸前で仕事をさせられている限り、そして医療事故が生じるようなぎりぎりの人員で仕事をさせられている限り、産科医療は充実などしないことを断言します。ぽち 

 

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奈良県立医大、医師「断ったつもりなかった」 妊婦流産

朝日新聞 2007年08月29日

 奈良県橿原市の妊娠24週の女性(38)が、奈良・大阪両府県の病院に相次いで受け入れを拒まれ、救急搬送中に胎児を流産した問題で、最初に受け入れを求められた同市の奈良県立医大病院の産婦人科には空きベッドがあったことが29日、分かった。別の妊婦の診察中だった当直医が「後にしてほしい」と答えたのを、事務担当者が受け入れ拒否と受け止め、救急隊に回答したという。

 また、高槻署や中和広域消防組合(橿原市)などによると、女性は搬送中の交通事故の約3分前に破水。胎児は女児で、すでに死亡した状態だった。破水前までに9病院、最終的に搬送されるまで計11病院から受け入れを断られていた。

 県などによると、県立医大病院の産婦人科には、28日夜から29日朝にかけてベテランと若手の2人の当直医がいた。同組合から同病院産婦人科に受け入れ要請があったのは29日午前2時55分。直前に、同病院で診察を受けていた女性が陣痛のために来院し、当直医の1人が対応しており、もう1人は、別の患者の手術後の経過を診ていた。

 救急からの要請を受けた事務担当者は当直医に報告。担当者は「診察中なので後にしてほしい」と回答されたため、救急に対して「お産の患者が入り、オペになるかもしれない」と答えた。

 しかし、県の聞き取りに対し、当直医は「断ったつもりではなかった」と話したという。

 この時点で、産科のベッドは1床空いていた。約40分後に同病院に通っていた別の女性が破水して入院。さらに午前5時半には、近くのクリニックから依頼された大量出血の患者を別病棟で受け入れた。

 同病院には来年度、ハイリスクの妊婦や新生児を対象にした総合周産期母子医療センターが開設される予定。

 

 救急隊、病院に電話照会せず=「想定外」一般手順で搬送-妊婦流産・奈良

時事通信 2007/08/30-01:18

 奈良県橿原市の妊婦(38)を乗せた救急車が受け入れ病院を探すのに手間取り、妊婦が流産した問題で、妊婦に掛かり付け医がいなかったため、救急隊が一般の搬送手順で運んでいたことが29日、分かった。
 救急隊は妊婦の場合、掛かり付け医に連絡を取って搬送するが、今回は一般搬送の手順にのっとり、救急医療情報システムでいずれの病院も受け入れ不可と表示されたため、最初に問い合わせた県立病院を除き、県内の病院については電話での照会をしなかったという。
 同県健康安全局の米田雅博次長らは、県庁で記者会見し、「掛かり付け医のいない妊婦を一般の救急で運ぶことは想定していなかった」と釈明した。


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