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[立ち遅れる日本の医療]未承認薬の問題が解決しない理由 [薬事行政]

 世界の治療薬の売り上げトップ100のうち3割が日本では使えません、これは先進国の中でこんな国ありません。ほぼ中国と同じです。その理由のひとつには「未承認薬」の問題があります。これは、患者さんにとってもデメリットであり、かつ医師にとっても国際水準での治療が行えないなど問題があると考えております。  これについてはなかなか簡単に解消しない理由は行政、製薬企業、医師など様々な問題があるようです。

 これについて少し考えさせられる報道がありました。 

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【未承認薬、何が問題か 第3回】

治験が活性化しない「そもそも」の理由

未承認薬問題の根底にある「治験の空洞化」を食い止めるべく、厚生労働省は、6月29日に第1回「次期治験活性化計画策定に係る検討会」を開催した(写真)。2003~05年度に実施した「全国治験活性化3カ年計画」(以下、3カ年計画)に続く、新たな計画を立てるのが目的だ。

 検討会と並行して、治験の現状を調べるために、「医療機関における治験の実施体制」「治験を実施する人材」「治験の啓発活動」「治験の効率化に向けた書式・手続き・IT化」の4項目について調査を行う。これらの調査結果を踏まえて、今秋に中間まとめを公表、今年度末にも計画案を取りまとめる予定だ。

「医師が治験を理解していない」
 検討会の冒頭、事務局を務める厚労省医政局研究開発新興課は、日本の治験が「遅い、高い、質が悪い」ことの理由として、(1)被験者(患者)のインセンティブが低い、(2)実施研究者のインセンティブが低い、(3)治験の実施体制が弱い、(4)治験を着実に実施する医師・医療機関が不足している--を挙げた。

 中でも29日の会議では、上記(4)と関連して、「そもそも治験に携わる医師が、治験のことをよく理解していない」という問題点を指摘する意見が目立った。日大板橋病院治験管理室主任の榎本有希子氏は、治験コーディネーターの立場から「治験コーディネーターや事務スタッフのレベルは向上してきたが、医師が追い付いていない。治験に携わる医師に対する教育が、治験コーディネーターの業務のかなりの部分を占めている」と指摘した。実際、3カ年計画の追跡調査(2005年7~9月実施)によると、医師に対して治験に関する教育を実施している病院の割合は、国立大学病院では7割近くに上ったが、その他の病院では3割程度。治験に限らず、臨床研究についての理解が不十分で「きちんとしたプロトコールを作成して臨床研究ができる人が足りない」(国立病院機構本部医療部研究課長の伊藤澄信氏)のであれば、上記(2)の「実施研究者(医師)のインセンティブ」を持ち出す以前の問題だろう。

 (1)の「被験者(患者)のインセンティブ」については、もっと心もとない。国民皆保険が実現されている日本では、海外に比べて治療費用面でのインセンティブは働きにくい。それでも患者が治験に参加するのは、よりよい治療が受けられることを期待するからだ。その前提となるのが、治験の倫理性・科学性を審査する治験審査委員会(IRB)がしっかり機能していること。しかし、IRBにおける審査の妥当性や、IRBの委員の資質や教育について、これまで真正面から議論されてこなかった。

 医師、薬剤師、弁護士などで組織される民間の医薬品監視機関「薬害オンブズパースン会議」は、2006年3月9日に出した厚生労働大臣宛ての意見書で、現行IRBの問題点として、(a)各施設間の委員構成や審議能力に大きなばらつきがある、(b)治験担当医以外に当該治験の妥当性を判断できる専門家がいない、(c)質の悪い治験を是正ないし阻止できない、(d)外部委員に対する謝礼や処遇が難しい、(e)そもそも実施に価する治験かどうかの基本的判断を避けている--を挙げているが、うなずける点が多い。

 これら「そもそも」の問題を片付けないことには、治験の空洞化を解消することは難しい。そして、未承認薬の問題を抜本的に解決することもできないのだ。(日経メディカル7/5)

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/200607/500855.html

ドラッグラグ世界ランキング第7位 

  各国における新薬へのアクセスについてみるとき、上市までのスピードだけでなく、各国で利用可能な状況にあるかどうか(上市されているかどうか)ということも重要な視点である。表17 は2004 年世界売上上位製品(88 製品)のうち、2005 年4 月時点(IMSLifecycle 2005 July版データ収載時点)で上市されていない製品数がもっとも多かった10か国である。日本では28製品が未上市であり、66か国中ワースト7位となっている。世界売上げ上位ランクの医薬品の3割に日本国民がアクセスできていないということを意味している。

 

 実際のドラッグラグについては下記参照。

http://www.jpma.or.jp/opir/research/paper-31.pdf

 

【総合機構】国際共同治験への対応推進‐ドラッグラグ解消が課題

 医薬品医療機器総合機構(理事長宮島彰氏)は、審査・安全業務委員会を開き、審査・安全対策に関する2005年度の業務実績を報告した。宮島理事長は、独立行政法人となって3年目を迎えることから、「目に見える成果を出したい」と強調。特にドラッグ・ラグ解消が最優先課題との認識を示すと共に、総合機構でも厚生労働省とも連携し、国際共同治験の推進などに対応していく考えを述べた。

 宮島理事長は独立行政法人となって3年目を迎えたことを踏まえ、「今こそ目に見える成果が求められている」と指摘。治験相談や審査業務など様々な課題の解決へ、積極的に取り組む決意を表明した。懸案だった人材確保については、職員数が現在319人となり、内定者も20人程度いることから、「中期計画の予定数をほぼ確保できるメドが立った」と説明し、今後は質の向上を目指していくと語った。

 治験の空洞化について宮島理事長は、いわゆるドラッグ・ラグが大きな問題になっていることを指摘、「日本も国際共同治験に、最初から参画していくことが必要ではないか」とし、総合機構もこの問題に取り組む考えを強調した。具体的には審査、治験データの評価方法を見直し、日本が最初からグローバル治験に参画できるような態勢を目指すほか、アジアで国際共同治験が進んでいることを踏まえ、日本のデータ見直しも進める計画だ。 (日刊薬業2006/06/06)

http://www.yakuji.co.jp/entry519.html

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 自分が15年くらい前の治験の風景を思い出すと、なにやら部長が製薬会社のMRさんと、学術の人と話しこんだり、食事に出かけた‥かと思うと次の日からラベルがはっきりしない薬を投与し、結果についてMRさんがデータを集めに来ていたのを思い出します。その頃に比べると明らかに治験の環境が変化したのは思います。

 そして官僚の方でも、国際的に立ち遅れている薬事行政について見直そうという環境です。さて、医師の方は?もちろん、「お前のとこ(製薬会社)から話がそもそもないんだ!」といわれたりします。

 ちょっと待ってください。ちゃんと院内の治験管理委員会は定期的に開催されていますか?CROとかSMOのような仕組みは理解されていますか?

 もちろん、新GCPについてもご理解願います。製薬企業と医療機関の間に業者さんが入ったことで、日本の治験の質はぐんと高くなったという国際的な評価もあります。

 この新しい仕組みが理解されていないと、治験のネットワークに入ってもらえないという現状をご理解ください。

 

 ちなみに日本の治験のコストは世界的で一番高く、アメリカなどの3-4倍。韓国や香港などに比較するともっと高いのです。今後、日本で治験が進まない理由のひとつに「医師の無理解」が語られないようにするために、何か考える必要が来ているかと思いました。

 

 でも、そもそもドラッグラグは規制当局が「日本人だけのデータを寄越せ」「人種差がないのを証明しろだ‥」と作ってきたというのもひとつの真実だと思ってますが。

 

 もちろん、そういう当局もこの問題を放置することは問題と認識しているようで、検討を重ねてきているのは、下記をご確認ください。まだ使えない薬が多いですが‥日本の医療水準を国際レベルに近づけるには先生方のご協力とご理解が必要です。これからもよろしくお願いします。

未承認薬使用問題検討会議での検討結果を受けて国内で治験準備中又は実施中の医薬品に関する情報

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/07/s0715-2.html


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